公演初日リポート:GROOVE THEORY featuring AMEL LARRIEUX & BRYCE WILSON
90年代R&Bシーンを駆け抜けたユニット、グルーヴ・セオリーがついに再起動しました。そして7日(木)まで、ここブルーノート東京に登場しています。
ブライス・ウィルソンとアメール・ラリューが約10年ぶりに再会したという話をぼくがウェブ上で知ったのは、今年の春のことです。「これは快挙だな。すごいアルバムを出してくれるんだろうな。来日公演もしてくれたら嬉しいな」と思ったのですが、その後、どういうわけか新しいニュースが入ってきません。一度たちあげた計画が流れてしまうことは、アーティストには日常茶飯事です。ましてや多忙なブライスとアメールであるだけに・・・と思っていたら何と、彼らは新作より先にライヴ・パフォーマンスを、ぼくたちファンに届けてくれました。ふたりは、グルーヴ・セオリーの“新章”をスタートさせる場所として、ブルーノート東京公演を選んだのです。しかも初来日です。
グルーヴ・セオリーの軌跡、現代の音楽シーンに与えてきた影響はぜひ、いま配布されている「JAM」に掲載されている林剛さんの記事をご覧いただければと思いますが、とにかく彼らのサウンドはセンスがよく、聴いていて気持ちがいいのです。複数のキーボードが漂うようなロング・トーンを出し、ベースが細かい音符でうねり、スネアとバスドラのコンビネーションを生かしたドラムスが的確なビートを刻みます。その上でアメールは、歌詞のひとことひとことを噛み締めるように紡いでゆきます。即興的なフェイク(もともとのメロディを変えること)も次々と飛び出し、あのデビュー・アルバム『グルーヴ・セオリー』(95年)に収録されていた「10 MINUTE HIGH」や「DIDJA KNOW」等のナンバーも、見事“2010年のライヴ表現”に生まれ変わっていました。
じっくり聴かせる曲あり、ノリノリの曲あり。キーボードとヴォーカルのデュオあり、場内大合唱の曲あり。アメールは、ほとんど1曲終わるごとにオーディエンスに語りかけます。「私のマイスペース、見てる?」、「“SWEET MISERY”は、とってもビタースウィートな恋の思い出を歌ったものなの」、「私は皆さんと一緒に歌うのが好きなの。どうか一緒に歌ってください」、「“GET UP”は朝の6時に作ったのよ」などとしゃべる姿は、R&B界の大スターとは思えないほどフレンドリーなものでした。お待ちかねの大ヒット曲「TELL ME」のサビ部分では、もちろんオーディエンスとアメールが一体となった大合唱。’98年以来、順調そのもののソロ・キャリアを積み重ねている彼女ですが、旧友ブライスのサポートを受けて歌う気分は格別なのではないでしょうか。
客席の中に入って熱唱するアメールと、ステージ下手側で淡々とラップトップ・コンピューターを操るブライス。動と静のコントラストといえばいいのでしょうか、アルバム『グルーヴ・セオリー』のジャケットそのままに、あくまでもアメールがフロントパースンとして活躍し、ブライスは背後で引き立て役に徹しています。個人的にもうちょっとブライスが前に出てきてもいいのにな、とも思いましたが、ステージはまだ始まったばかり。7日のセカンド・セットまで彼らは毎回異なった魅力的なパフォーマンスを披露してくれることでしょう。
(原田 2010/10/04)
● 10.3sun.-10.7thu.
GROOVE THEORY featuring AMEL LARRIEUX & BRYCE WILSON