BlueNote TOKYO

'11 Bloggin' BNT by 原田和典 , HANK JONES - - report : HANK JO...

原田和典の公演初日レポート : HANK JONES "THE GREAT JAZZ TRIO"


ハンク・ジョーンズのライヴに行くのはいつも楽しい。

きょうはいったいどんな曲を演奏してくれるのだろう。大好きなあの曲はプレイしてくれるだろうか、ソロ・ピアノは聴けるかなあ。
そう考えるだけでクラブへ向かう足取りがどんどん軽くなっていきます。

ハンクはとにかくレパートリーが幅広い。彼の脳内にはいったい何千曲がつまっているのでしょうか。ぼくもいろんな曲をハンクのプレイを通じて知りました。「ウィンドフラワー」(サラ・キャシー作)、「フェイヴァーズ」(クラウス・オガーマン作)、「オー・ルック・アット・ミー・ナウ」(ジョー・ブシュキン作)などなど・・・・・。ハンクはいつも、飛び切り素敵なメロディを届けてくれます。

この日も大スタンダード・ナンバー、渋めのナンバー、自作をとりまぜたプログラムでファンを沸かせました。個人的に嬉しかったのは、なんといっても「シックス・アンド・フォー」を聴かせてくれたことです。サックス奏者でアレンジャーのオリヴァー・ネルソンが書いた曲で、ネルソン本人の演奏はエリック・ドルフィーとの共演盤『ストレイト・アヘッド!』で聴くことができますが、決して多くのミュージシャンに取り上げられているわけではありません。
が、これをハンクは、あくまでもサラリと、優美に演奏します。実にいいのです。粋なのです。オリヴァー・ネルソンの作曲といえば「ストールン・モーメンツ」ばかり有名ですが、こういう隠れた逸品を引っ張り出すハンクは、さすが偉大なる名シェフといえましょう。

スロー・テンポで演じられた「ディア・オールド・ストックホルム」(イントロが殊に絶品)も聴きものだったし、無伴奏ソロの「アローン・トゥゲザー」も実に美しい。名匠ハンクのジャズ愛あふれるステージを満喫させていただきました。

芸術家に年齢の話を持ち出すのは野暮かもしれませんが、ぼくはいまだにハンクが90歳を超えているということが信じられません。きっと、とにかくピアノを弾くことが大好きで、それに没頭していたらあっという間に人生90年になってしまった、のでしょうね。

ジャズ界きってのジェントルマンは、無類のタフガイでもあるのです。
(原田 2009/2/18)






<< プロフィール・原田和典 >>
1970年生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年ソロ活動を開始。
著書に『原田和典のJAZZ徒然草 地の巻』(プリズム)
『新・コルトレーンを聴け!』(ゴマ文庫)、
『世界最高のジャズ』(光文社新書)、
『清志郎を聴こうぜ!』(主婦と生活社)等。
共著に『猫ジャケ』(ミュージックマガジン)、
監修に『ジャズ・サックス・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック・エンターテイメント)。好物は温泉、散歩、猫。



HANK JONES - - 米国・国民芸術勲...

2009/01/30

Hank.jpg
ハンク・ジョーンズ HANK JONES





● 祝!メダル受賞:おめでとうございます・ハンクさん:National Medal of Arts

ハンク・ジョーンズがうれしそうにぶら下げているアメリカ国民芸術勲章文化勲章(National Medal of Arts)は、アメリカ政府より授与される最高の芸術賞で、わが国では紫綬褒章に相当します。ハンク・ジョーンズの受賞は、ジャズ関連ミュージシャンとしてはエラ・フィッツジェラルド(’87年)、ディジー・ガレスピー(’89年)、ビリー・テイラー(’92年)、キャブ・キャロウェイ(’93年)、デイヴ・ブルーベック(’94年)、ライオネル・ハンプトン(’96年)、ベティ・カーター(’97年)、ベニー・カーター(2000年)、ウィントン・マルサリス(2005年)、プリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンド(2006年)、レス・ポール(2007年)に次ぐものです。
この写真は昨年11月10日、ホワイトハウスで撮影されました。ハンク・ジョーンズは執務室で行われた授与式に出席し、大統領夫妻からメダルを贈られたのでした。

hankmedal.jpg




● あの、"ハーレム1958" にも

おそらく最も大規模かつ広く知られているジャズ写真が、これでしょう。「エスクァイア」誌の依頼を受けたアート・ケーン(当時「セヴンティーン・マガジン」の美術監修を務めていました)が1958年8月にハーレムで撮影し、同誌の’59年1月号に掲載されました。セロニアス・モンク、カウント・ベイシー、ディジー・ガレスピー等、ジャズの歴史を彩った巨匠57名が勢ぞろいしています。現在も活躍しているのは以下の面々;ベニー・ゴルソン、ホレス・シルヴァー、ソニー・ロリンズ、エディ・ロック、マリアン・マクパートランド、そしてハンク・ジョーンズ。
’94年制作の映像作品『A Great Day in Harlem』には、このフォト・セッションにまつわる数々のエピソードが紹介されています。

→ Harlem 1958



● "ハッピーバースデイ、Mr. President"

1962年5月19日、マディソン・スクエア・ガーデンで行なわれたジョン・F・ケネディ大統領の誕生パーティからの映像です。当時、大統領とのロマンスが噂されていたマリリン・モンローが歌う「ハッピー・バースデイ」は非常に高名ですが、彼女の悩ましげな歌声のバックでピアノを弾いているのがハンク・ジョーンズであったことは意外と知られていないのではないでしょうか(始まって47秒あたりに、チラッとハンクの姿が写っているような気が・・・・)。この約3ヶ月後にマリリンは謎の死を遂げ、翌63年11月には大統領が凶弾に倒れました。
同時期、ハンクが残したリーダー作には『ヒアズ・ラヴ』(63年)、『ジス・イズ・ラグタイム・ナウ』(64年)があります。

→ Happy birthday Mr. President by マリリン・モンロー


● Hank Jones performs solo at Carnegie Hall, 6 April, 1994 as part of the Verve 50th anniversary celebrations. ...
名門ジャズ・レーベル、ヴァーヴの創設50周年コンサート(於:カーネギー・ホール)からの映像。ハンクは“ジャズ・ピアノの神様”ことアート・テイタム(1909〜56)に捧げて、スタンダード・ナンバー「ウィロー・ウィープ・フォー・ミー」をソロ・ピアノで演奏しました。当コンサートには他にもハービー・ハンコック、ジョン・マクラフリン、アントニオ・カルロス・ジョビン、パット・メセニーといった超豪華メンバーが登場、そのスケールの大きさは今も語り草になっています。




<<前のページへ 12