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原田和典の公演初日レポート : HANK JONES "THE GREAT JAZZ TRIO"
ハンク・ジョーンズのライヴに行くのはいつも楽しい。
きょうはいったいどんな曲を演奏してくれるのだろう。大好きなあの曲はプレイしてくれるだろうか、ソロ・ピアノは聴けるかなあ。
そう考えるだけでクラブへ向かう足取りがどんどん軽くなっていきます。
ハンクはとにかくレパートリーが幅広い。彼の脳内にはいったい何千曲がつまっているのでしょうか。ぼくもいろんな曲をハンクのプレイを通じて知りました。「ウィンドフラワー」(サラ・キャシー作)、「フェイヴァーズ」(クラウス・オガーマン作)、「オー・ルック・アット・ミー・ナウ」(ジョー・ブシュキン作)などなど・・・・・。ハンクはいつも、飛び切り素敵なメロディを届けてくれます。
この日も大スタンダード・ナンバー、渋めのナンバー、自作をとりまぜたプログラムでファンを沸かせました。個人的に嬉しかったのは、なんといっても「シックス・アンド・フォー」を聴かせてくれたことです。サックス奏者でアレンジャーのオリヴァー・ネルソンが書いた曲で、ネルソン本人の演奏はエリック・ドルフィーとの共演盤『ストレイト・アヘッド!』で聴くことができますが、決して多くのミュージシャンに取り上げられているわけではありません。
が、これをハンクは、あくまでもサラリと、優美に演奏します。実にいいのです。粋なのです。オリヴァー・ネルソンの作曲といえば「ストールン・モーメンツ」ばかり有名ですが、こういう隠れた逸品を引っ張り出すハンクは、さすが偉大なる名シェフといえましょう。
スロー・テンポで演じられた「ディア・オールド・ストックホルム」(イントロが殊に絶品)も聴きものだったし、無伴奏ソロの「アローン・トゥゲザー」も実に美しい。名匠ハンクのジャズ愛あふれるステージを満喫させていただきました。
芸術家に年齢の話を持ち出すのは野暮かもしれませんが、ぼくはいまだにハンクが90歳を超えているということが信じられません。きっと、とにかくピアノを弾くことが大好きで、それに没頭していたらあっという間に人生90年になってしまった、のでしょうね。
ジャズ界きってのジェントルマンは、無類のタフガイでもあるのです。
(原田 2009/2/18)
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1970年生まれ。ジャズ誌編集長を経て、2005年ソロ活動を開始。
著書に『原田和典のJAZZ徒然草 地の巻』(プリズム)
『新・コルトレーンを聴け!』(ゴマ文庫)、
『世界最高のジャズ』(光文社新書)、
『清志郎を聴こうぜ!』(主婦と生活社)等。
共著に『猫ジャケ』(ミュージックマガジン)、
監修に『ジャズ・サックス・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック・エンターテイメント)。好物は温泉、散歩、猫。