公演レビュー : JOE SAMPLE TRIO
ジョー・サンプルが「ブルーノート東京」に帰ってきます。
今回は、クルセイダーズではありません。自己のトリオで、アコースティック・ピアノをタップリ聴かせてくれます。
ピアノ、ベース、ドラムスの、いわゆるピアノ・トリオという編成は、日本のジャズ・ファンに最も人気のあるバンド形態だといわれています。が、サンプルのピアノ・トリオ作品は、その豊富なキャリアに対して少なすぎるほどです。
1969年、ヨーロッパ・ツアーの途中で吹き込まれた『ファンシー・ダンス』が、彼の最初のピアノ・トリオ作品でした。クルセイダーズ(当時はジャズ・クルセイダーズと名乗っていました)とは一味もふた味も違う、激しいアコースティック・ピアノの演奏を味わうことができます。同時期のサンプルは、ボビー・ハッチャーソン(この8月、当店に登場したヴィブラフォン奏者です)のバンドでも活動していました。硬派なサウンドを追及していたハッチャーソンからの影響もあるのでしょう、非常に力強いタッチで、前のめり気味なまでにバリバリと弾きまくるサンプルが『ファンシー・ダンス』には捉えられています。
続くピアノ・トリオ作品は、‘75年に吹き込まれた『ザ・スリー』です。当時のクルセイダーズは『スクラッチ』、『チェイン・リアクション』などの歴史的名盤を次々と生んでいた時期。サンプルはフェンダー・ローズ(エレクトリック・ピアノの一種)の名手として評価を確立していました。が、『ザ・スリー』では、レイ・ブラウン(ベース)、シェリー・マン(ドラムス)という大ベテランをバックに、「サテン・ドール」等のジャズ・スタンダードを演奏。アコースティック・ジャズ・ピアニストとしての持ち味を全開しています。
今回の来日公演がどうなるのかは正直言って予想がつきません(事前に予想がつくライヴなど意味がない!)。が、グルーヴの鍵を握る重要人物が、このトリオにはいます。ドラムスのジョニー(ジョン)・ヴィダコヴィッチです。彼のドラムスをクラブで聴けるというだけで、この公演に参加することを決めているファンも、きっと数多いと思います。ジョニーはそれほど、ドラム・フリーク垂涎の存在なのです。ニューオリンズで生まれた彼がこれまで共演してきたアーティストにはネヴィル・ブラザーズ、ジョニー・アダムス(その滑らかな歌声から“褐色のカナリア”と呼ばれました)、プロフェッサー・ロングヘア、ジェームズ・ブッカー、ドクター・ジョン、ジョージ・ポーターJr.(元ミーターズ)、ジョン・スコフィールド、モーズ・アリソンといった錚々たる顔ぶれが並びます。
ジョニー・ヴィダコヴィッチの躍動的なドラムスを得て、サンプルのピアノがどう舞い、踊り、飛翔するか。開演が待ちきれません!
(原田 2009/10/26)
● 11/1Sun.-11/05 Thu.
JOE SAMPLE TRIO