菊地雅章 - - report :MASABUMI...
2012/06/25
公演初日リポート:
菊地雅章トリオ
鬼才・菊地雅章が久々にニューヨークから戻り、圧倒的なライヴを繰り広げています。
1950年代後半からジャズ・シーンで活躍し、原信夫とシャープス&フラッツ、渡辺貞夫グループ等に在籍。盟友・日野皓正との双頭クインテットは‘60年代後半以来、何度もメンバーを変えて続いています。ソニー・ロリンズ、エルヴィン・ジョーンズ、ギル・エヴァンス、マイルス・デイヴィスらとも共演し、‘81年のアルバム『ススト』は、今なお“時代の先を行った傑作”として賞賛されています。‘90年代にゲイリー・ピーコック、ポール・モチアンと組んだ“テザード・ムーン”でも数々の名盤をリリースしてきました。ザ・バッド・プラスのイーサン・アイヴァーソン等、彼をリスペクトするミュージシャンも引きをきりません。
ここ数年は体調が芳しくなかったともききますが、今回の公演は、ぼくが以前に生で聴いたとき(2004年)よりも若々しいのではないか、と思えるほど、足取りもプレイも軽やかでした。充電期間を経て、その音世界はいっそう深く、広がりを増したようです。
パーソネルはトーマス・モーガン(ベース)、トッド・ニューフェルド(ナイロン弦のアコースティック・ギター)との3人編成。トーマスは菊地がECMレーベルから出した新作『サンライズ』にも入っており、ほかにもジョン・アバークロンビーやデヴィッド・ビニー等のグループで活動しています。彼はとにかく、反応が鋭い。ピアノとの呼応を聴いていると、いかに良い耳の持ち主であるか、いかに頭に浮かんだことを音に素早く移す才能に恵まれているかがわかります。トッドはリー・コニッツ、タイシャン・ソーリー、ジェラルド・クリーヴァーとの共演でも知られる精鋭。この日は、いわゆるクラシック・ギターをマイク収音(ピックアップは使用しない)で聴かせてくれました。弦をこする音、楽器の胴体にからだが触れる響きまでもが音楽の一部として機能しています。
演目はすべてインプロヴィゼーション(即興演奏)だったとのことです。ぼくが聴いたステージは、約90分の中で、6つの断章が披露されました。ピアノが主導権をとるナンバーがあれば、ベースから始まるナンバーもあり、ギターが雰囲気を設定するナンバーもあります。しかし、どれもが“音の会話”であることに変わりはありません。
公演は本日もあります。耳をすまし、身を乗り出して、3人の奏でる世界に没入してみてはいかがでしょうか。
(原田 2012 6.24)
● 2012 6.24sun.-6.25mon.
MASABUMI KIKUCHI TRIO
菊地雅章トリオ