'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , MOSE ALLISON - - report : MOSE AL...
2012/05/26
公演初日リポート:MOSE ALLISON
ついにこの日がやってきました。モーズ・アリソンの初来日公演です。
モーズは1950年代にデビューした、ピアノの弾き語りアーティストです。レコード店では「ジャズ」に分類されているのではと思われますが、その内容は多彩でブルース、フォーク、ヒルビリー等の要素も感じられます。数多くのロック・アーティストからリスペクトされていることでも知られていて、「60年代の英国でブルースをプレイする者は、誰もがモーズの影響を受けていた」(元ローリング・ストーンズのミック・テイラー)、「モーズ嫌いのミュージシャンを私は知らない。彼は音楽の壁を軽々と突き破った」(ボニー・レイット)、「モーズはジャズとブルースのミッシング・リンクなんだ」(キンクスのレイ・デイヴィス)、「最初に聴いたときから、モーズには惚れっぱなしだ。声の暖かさ、スタイル、あの独創性・・・。彼の音楽は、私の心をとろけさせてくれる」(ジョージー・フェイム)、「モーズは60年代のロックンロールに強烈な影響を与えた。当時、ブルース系のバンドを組んでいた連中は皆、モーズに熱中していた」(アル・クーパー)といった発言が残されています。もちろん黒人ブルース・ミュージシャンからもモーズの音楽は好かれていて、巨匠サニー・ボーイ・ウィリアムソン\nは「モーズ、いいぞ。その調子で続けろ!」と彼を励ましたとのことです。
そのモーズが今、初来日公演のために日本にいます。
この11月に85歳を迎えるとのことですが、足取りは軽快です。編成は、彼が最も得意とするピアノ・トリオ。ベースのフィル・スパークスは’70年代から’80年代にかけてコロラド州で活動し、現在はシアトルを拠点としているベテランです。ドラムスのピート・マガディーニはジョージ・デューク、アル・ジャロウ、ダイアナ・ロス等のサポートも務めた名手で、教則DVDを出すなど、インストラクターとしても活躍しています。
冒頭の10分ほどピアノをフィーチャーしたパフォーマンスを続けた後、いよいよ待望のヴォーカル・ナンバーが始まります。曲目は前もって決めておらず、すべてモーズの気分次第。すべてのレパートリーには通し番号がついていて、モーズは曲名ではなく、その番号をメンバーに告げます。モーズの歌唱は、決して絶唱型ではありません。ホーギー・カーマイケル、チェット・ベイカーらに通じる、
「力まず、つぶやくように歌う」感じです。しかしその歌声が、どういうわけか濃厚なブルースにピッタリと合うのです。「かっこいいなあ、粋だなあ」と思いながら、ぼくは「HELLO THERE, UNIVERSE」や「YOUR MIND IS ON VACATION」、マディ・ウォーターズのカヴァー「ROLLING STONE」等に酔いしれました。
先に紹介した面々のほかに、ヴァン・モリソン、ピート・タウンゼント、エルヴィス・コステロ等からも敬愛されているモーズですが、“御本尊”のパフォーマンスは年輪と風格が違います。偉大なるモーズの生演奏を、ぜひ間近でどうぞ。
(原田 2012 5.25)
● 5.25fri.-5.27sun.
MOSE ALLISON