公演初日リポート:PAQUITO D'RIVERA QUINTET
パキート・デリヴェラを、ようやく近距離で体験することができました。生で聴きたくてたまらなかったステージです。
ぼくは以前に一度、スペインの大きな野外劇場でパキートを見ています。フェルナンド・トゥルエバ監督のラテン・ジャズ映画『カジェ54』の公開記念コンサートで、パキートのバンドに加え、ピアニストのベボ・ヴァルデス(先ごろ「ブルーノート東京」に出演したチューチョ・ヴァルデスの父)やベース奏者のカチャオ(昨年、惜しくも亡くなりました)も出演していましたが、なにしろ向こうのお客さんは熱狂的に盛り上がるのはいいとしても、演奏中にしゃべっていることも多いのです。しかもぼくの席は後方だったので、静か目な曲だと音楽よりも話し声のほうが大きめに聞こえてきたりして、残念ながら「パキートの音楽に浸る」というシチュエーションではありませんでした。
いつか近距離で彼の音楽をガッチリ味わってみたいものだと思ってから7〜8年が経ったでしょうか。今、その機会がやっと訪れました。『Funk Tango』が2008年のグラミー賞に輝き、ますますノっている状態での来日です。1991年以来の相棒である俊英ディエゴ・ウルコラ(トランペット&ヴァルヴ・トロンボーン。アルゼンチン出身)とのコンビネーションにもさらに磨きがかかり、アルト・サックスとクラリネットで“パキート節”を存分に響かせてくれます。
オープニングは「FIDDLE DREAMS」。バイアォン風のリズムに乗せて演奏がスタートし、やがて速いサンバに。その後スロー・テンポのパートになり、再びサンバ→バイアォン風になるというドラマティックなナンバーです。冒険的なテーマ・メロディは、ちょっと気を抜くとすぐに出だしを間違えてしまいそうです。そんな難易度Aの楽曲を、パキートのバンドはいとも易々とこなします。と思ったら次の曲「LA YUMBA-CARAVAN」では、プエルト・リコ出身のヴァルヴ・トロンボーン奏者ファン・ティソールが書いた「CARAVAN」を、アルゼンチン・タンゴ風な味付けで料理します。音楽はすべてひとつで、輪のようにつながっているんだとやさしく諭されたような気分です。
「ANDALUCIA」は、キューバの作曲家エルネスト・レクオーナの同名組曲をジャズの素材としてアレンジしたものといっていいでしょう。オープニングとエンディングには、やはりレクオーナの書いた「SIBONEY」がクラリネットで演奏されました。そして「THE BREEZE AND I(そよ風と私)」という別タイトルで知られる「ANDALUZA」(「ANDALUCIA」の第二楽章)のパートでは、ディエゴのトランペット・プレイが爆発! このブロウを聴いたひとは皆、なぜ彼がニューヨークのジャズ・シーンで引く手あまたの存在なのか、瞬時に理解できたのではないでしょうか。今回の公演ではパキートのプレイはもちろんのこと、ディエゴの吹きっぷりにもぜひ注目していただきたいものです。
(原田 2009/11/7)
● 11/6fri.-11/9mon.
PAQUITO D'RIVERA