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公演初日リポート:PHILIP BAILEY of EARTH, WIND & FIRE
“アース、ウィンド&ファイアー”のフロントマン、フィリップ・ベイリーが目の前で聴ける!
これは大ニュースです。ぼくも彼の音楽は好きで何度かライヴに行ったことがありますが、いずれもアリーナやスタジアム・クラスの巨大会場でした。もちろんそれでも楽しくなりましたし、お祭り気分は味わえましたが、あの歌声が持つ微妙なニュアンスまで聴きとるのは難しかったことを思い出します。
その点、この公演はもう、ヴォーカル好きにはたまらないものです。フィリップの呼吸、息遣いまでがリアルに伝わるのです。いわゆるファルセットの名手として知られるフィリップですが、力強い地声もまた、絶品です。大抵のシンガーは地声とファルセットの間に、どこか“断層”が感じられるものですが、フィリップの場合、地声からファルセットへの移行があまりにも滑らかなことに、改めて驚かされます。“天与の歌声”というフレーズは、まさしくこういうひとにこそ与えられるべきでしょう。
今回のステージにはアクロバティックなダンスも、目を奪うようなきらびやかな衣装も、ホーン・セクションもありません。1曲1曲をじっくりと歌いこむフィリップと、それを堅実にサポートする凄腕ミュージシャンがいるだけです。「FANTASY(宇宙のファンタジー)」、「LET'S GROOVE」などアースが残した定番も、原曲の熱狂を損なわない程度に新しくアレンジされ、より味わいを増したヴァージョンとして披露されました。もちろん「CHINESE WALL」、「EASY LOVER」など、ソロで放ったヒット・ナンバーもたっぷり聴かせてくれました。いうまでもなくクラブはダンスフロア状態です。
また、プログラム前半では、ナット・キング・コールやジョージ・ベンソンが歌った「NATURE BOY」、ハービー・ハンコックが作曲した「TELL ME A BEDTIME STORY」などジャズ系のナンバーを堪能させてくれました。パーカッションを叩きながら歌う姿は、以前よりさらに貫禄と風格に溢れています。さらにコクを増した現在のフィリップ・ベイリーの世界を、ぜひ至近距離でどうぞ!
(原田 2010 11.10)
● 11.10wed.-11.14sun.
PHILIP BAILEY of EARTH, WIND & FIRE
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