'12 Bloggin' BNT by 原田和典 , ROY HARGROVE - - report : ROY HAR...
2012/03/23
公演初日リポート:
ROY HARGROVE QUINTET
ベスト・ドレッサーとしても知られるトランペッター、ロイ・ハーグローヴが今年も姿をみせてくれました。帽子、ベスト、ネクタイ、メガネ、全部見事にコーディネートされています。五日間で計10公演、どのライヴに足を運んでも満足を与えてくれることでしょう。
ぼくがロイのグループを聴く楽しみのひとつに、“選曲の妙”があります。今ではあまり演奏されなくなってしまった、隠れた名曲を引っ張り出してきて、心憎いほどのアレンジで聴かせてくれるのです。しかもロイは1950年代や60年代に生まれたレア・ナンバーだけではなく、その後に作曲されたナンバーにも新たな息吹を注ぎます。
ぼくが聴いた初日のファースト・セットでは、ジェームズ・ウィリアムス作「ALTER EGO」と、アート・テイラーのバンド“テイラーズ・ウェイラーズ”のテーマ・ソングであった「MR. A.T.」が嬉しい驚きでした。ウィリアムスは1980年代、ウィントン・マルサリスと一緒にアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに在籍していたピアニスト、テイラーは40年代から90年代半ばまで現役活動を続け、マイルス・デイヴィス、ソニー・ロリンズ、セロニアス・モンク等、数多くの巨匠と共演したドラマーです。ふたりとも既にこの世のひとではなく、こうした楽曲が今、演奏されるチャンスは殆どありません。しかしハーグローヴはしっかりと、知られざる名曲を現在のファンに届けてくれました。
伝説的アルト・サックス奏者、チャーリー・パーカーの演奏で有名な「ザ・ソング・イズ・ユー」のコード(和音)に基づく「THIS SONG WAS」も、火の出るような熱演でした。ここまでビ・バップ・スタイルの演奏をこなせるミュージシャンは、ひょっとしたらロイ以下の世代には殆どいないかもしれません。ロイはデビューが早かったので、いわゆるビ・バップ世代(ディジー・ガレスピー、ミルト・ジャクソン、J.J.ジョンソン、アート・ブレイキー、レイ・ブラウン等)の晩年にギリギリ間に合っています。とても怖い先輩であったであろう彼らに鍛えられたことは、ロイにとってかけがえのない財産になったはずです。
今は亡き巨匠たちから渡された“ジャズのバトン”を、ロイは確実に受け取っています。今の彼は、ジャズの魅力を積極的に次の世代に伝えていると思います。ロイ・ハーグローヴ・クインテットが若手ミュージシャンの登竜門になる日も近いのではないでしょうか
(原田 2012 3.22)
● 3.22thu.-3.26mon.
ROY HARGROVE QUINTET
☆ 参考:セットリストはこちら