名人の唯一無二のトーンを支えるニュー・ギター 、デヴィッド・T・ウォーカー
名人の唯一無二のトーンを支えるニュー・ギター
約20年ぶりとなったバンド・オブ・プレジャーのリユニオンに
携えて来たのは、フェイヴァリット・カラーだというブルーのギター。
製作者との運命的なエピソードなど実に興味深い話が語られた。
マーヴィン・ゲイ、ジャクソン5、ダイアナ・ロスなどなど、幾多のヒット作のバックで伝説を作って来たデヴィッド・T・ウォーカーだが、その機材はいたってシンプル。エフェクターは一切なし。ギターとアンプだけで、あの独特なトーンを紡ぎ出す。「結局はここから出るんだよ」と、両手を上げながら出たその言葉からは、超一流のギター弾き職人ならではの説得力にあふれていた。
そのデヴィッドの現在のギターは、カリフォルニアの製作家マイケル・ピータースの手によるベビー・バード(Baby Byrd)。それまではカラザース製のシグネイチャー・モデルを使用していたが、なんと、そのギターを製作したのもマイケルであった。
「最初は知らなかった。あるとき私のギター・テクニシャンが教えてくれてね。さらにマイケルへコンタクトをとって、私を引き合わせてくれたんだ」
マイケルがデヴィッドのためにギター製作へ取りかかったのが2014年。カラザース・ギターは、かつてデヴィッドが1965年から約25年間も愛用していたギブソン製バードランドを基に作られたが、このマイケルのギターは、さらにバードランドとカラザースの両方がベースになっている。ボディはフル・アコースティックとしては小柄な14インチで、トップ板はスプルース、サイドとバックはメイプル、P.U.はギブソン製バーストバッカーがマウントされている。なお、詳しいスペックはデヴィッドのフェイスブックの2015年12月23日のコメントにアップされている(https://www.facebook.com/MrDavidTWalker/)。
「私にとっての良いギター? 触れたときのフィーリングに尽きる。音楽もフィーリングだろう? それと同じさ」
今回のバンド・オブ・プレジャー公演でも、まさに最高のフィーリングを伴ったギター・プレイで魅了しまくっていた。
photography = Takashi Yashima
interview & text = Koji Ishizawa
interpretation = Mutsumi Mae
cooperation = Rittor Music
- David T. Walker(デヴィッド・T・ウォーカー)
- 1941年、米オクラホマ州生まれ。15歳の時にゴスペルに影響を受けギターを始める。ソロ活動のかたわら、マーヴィン・ゲイ、クインシー・ジョーンズ、ハービー・ハンコック、スティーヴィー・ワンダー等、多くのアーティストのサポートを務める。
- 石沢功治(いしざわ・こうじ)
- 音楽アナリスト&ライター。音楽雑誌での取材&寄稿、アルバムのライナーノーツの執筆、また、著書に『NEW YORKジャズギター・スタイルブック』、『ジャズ・ギターの巨匠に学ぶ』など。