チボ・マット ライヴレポート、8月の公演に期待が高まる!
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これが米ツアーで鍛えた底力。
フィジカルで実在感のある圧巻のバンド・グルーヴ。
15年ぶりのニューアルバム『ホテル・ヴァレンタイン』を発表、大きな話題を呼んでいるチボ・マット。ニューヨーク在住の本田ゆか(kbd)、ハトリミホ(vo)のふたりが作り出すキュートなエレクトロ・ポップは健在だ。
そんな彼女たちの久々の来日公演が行われた。じつは3月にもリリース・パーティーという形で短時間ながら、都内でライヴが行われている。その延長線上にあるものと勝手に思い込んでこの日のライヴに臨んだのだが、そんな予想はあっさり覆された。
リリース・パーティー時の演奏は臨時編成のバンドらしいリラックスしたセッション風のものだったが、今回は腰の座った堂々たるバンド・サウンドになっていたのである。アメリカ・ツアー時も同行したあらきゆうこ(ds)のほか、コーネリアスの小山田圭吾(g)、バッファロー・ドーターの大野由美子(b,vo)が曲によって加わる編成はリリース・パーティー時と同じだが、リリース・パーティー時にはいなかったデヴィン・ホフ(b)が加わることで、音に厚みが増し、同じリズム・シーケンスでも圧倒的にファンキーでダンサブルなグルーヴが打ち出されていたのだ。あらきとホフのコンビネーションは、しなやかさとパワーを兼ね備えた最強のリズム・セクションではないか。今回の公演こそがチボ・マットの本領発揮なのである。
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5.20 tue. at LIQUIDROOM
アルバムでは彼女たちの原点に戻る形で、サンプリング中心の密室的な音作りを展開していたが、ライヴでは細部に凝ったサウンド・メイクを施しながらも、はるかにフィジカルで実在感のあるサウンドを披露していた。さすがに過酷なアメリカ・ツアーをこなしてきたベテランらしく、ぐいぐいと観客を引っ張っていくパフォーマンスは圧巻だった。ハトリのヴォーカルは15年前と変わらずキュートで軽やかだが、観客の呼吸の掴み方に貫禄さえ伺えたのである。
アンコールはアントニオ・カルロス・ジョビンの「Aguas de Marco」を演奏、続いて話題の日本人女性ラップ・デュオCharisma.com(カリスマ・ドット・コム)が飛び入り共演。じつはチボのふたりはNYにいながらも日本の音楽シーンについてこまめにチェックしており、彼女たちが敬愛する女性アーティストを集めたコンピレーション「Women in Music selected by Cibo Matto」(6/4発売)にも、Charisma.comが収録されているほどのお気に入りなのだ。女性ラッパーふたりのけたたましいエネルギーで客席は大盛り上がり。レコードでの共演もありかも、と思わせてライヴは終了した。はたして夏に予定されるブルーノート東京公演はどうなるのか。ますます楽しみになってきた。
- 小野島大
- 音楽評論家。各雑誌、WEBメディア等に洋邦ポップ・ミュージック中心に執筆。著書に『ロックがわかる超名盤100』『NEWSWAVEと、その時代』(エイベックス)『音楽配信はどこへ向かう?』『フィッシュマンズ全書』等。
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15年ぶり最新アルバム
『HOTEL VALENTINE』
2001年を最後にライヴ活動を休止以来、15年ぶりとなる2月に発売されたアルバムの国内盤を3月3日にリリース。『HOTEL VALENTINE』という映像のない映画をつくることを閃き、"ホテルの廊下を忍び歩くゴーストとのラヴストーリー"というチボ・マット二人のイマジネーションで作った映画であり、その(映像の存在しない映画の)サウンド・トラックとして作られている。
CIBO MATTO
『HOTEL VALENTINE』
(commmons)