1939年12月25日、ミズーリ州マーシャル生まれ。同世代のピアニストにはジョー・サンプル(39年生まれ)、ハービー・ハンコック(40年生まれ)、チック・コリア(41年生まれ)らがいる。4歳からピアノを始め、8歳の頃に初めてプロとして演奏。10代前半からはアレンジ(編曲)も行うようになった。ミシガン大学在学中に自身のトリオを結成し、1962年度「ノートルダム大学生ジャズ・フェスティヴァル」に出場。見事グランプリを獲得し、同フェスティヴァルの審査員であったクインシー・ジョーンズ監修のもと、ファースト・アルバム『ボールド・コンセプションズ』を制作した。ビル・エヴァンスの演奏で知られる「ナーディス」なども取り上げてはいるが、全体的にアルバムの内容は“大胆な概念”という表題通り、非常に冒険的なものだ。64年には伝説的アルト・サックス/フルート/バス・クラリネット奏者であるエリック・ドルフィーと共演。65年には前衛音楽を象徴するレーベル“ESPディスク”に、テープ・コラージュとの協奏曲というべき『エクスプロージョン』を録音している。
65年頃から68年にかけては、最高峰のジャズ・ヴォーカリストのひとりであるサラ・ヴォーンの伴奏ピアニストを担当。69年に入るとクインシーのアルバム『ウォーキング・イン・スペース』でキーボードを演奏し、収録曲「アイ・ネヴァー・トールド・ユー」のアレンジも手掛けた。その才能が同作のプロデューサーであるクリード・テイラーの目にとまり、70年にスタートした独立レーベル“CTI”(および傍系の“KUDU”)の主要キーボード奏者/アレンジャーの座につく。当時の代表作には「ノーチラス」を含む『ボブ・ジェームス・ワン』、「ウェストチェスター・レディ」を含む『ボブ・ジェームス・スリー』など4枚のリーダー作や、グローヴァー・ワシントンJr.のベストセラー作品『ミスター・マジック』がある。77年には自身のレーベル“タッパン・ジー”を設立、78年には人気テレビドラマ『タクシー』のオープニング・テーマ「アンジェラ」を含む『タッチダウン』がリリースされた。79年にはアコースティック・ギター奏者アール・クルーとの共作『ワン・オン・ワン』を発表、この作品で自身初のグラミーを獲得した(最優秀ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞)。86年“ワーナー・ブラザーズ”に移籍し、アルト・サックス奏者デイヴィッド・サンボーンとの共作『ダブル・ヴィジョン』を発表。再度グラミー賞に輝いた。
90年代以降のボブを語るうえで欠かすことのできないユニット“フォープレイ”は、彼が90年に発表したアルバム『グランド・ピアノ・キャニオン』にリー・リトナー、ハーヴィー・メイソン、ネイザン・イーストが参加したことが契機となって発足した。フォープレイ名義ではこれまで13枚のオリジナル・アルバムを発表、25周年記念アルバム『シルヴァー』(2015年)にはリトナー、ラリー・カールトン、チャック・ローブと歴代ギタリスト3名が参加した。溢れるほどの親しみやすさ、心地よいグルーヴ感、室内楽的な格調高さを兼ね備えるフォープレイの諸作は多くのファンの心をつかみ、ボブはキーボードよりもアコースティック・ピアノを多用して新境地を開いた。そして現在の彼は、親と子以上に年齢の離れた気鋭ミュージシャンを迎えたトリオやカルテットで、より自身のジャズのルーツに迫るべく、アコースティック・ピアノの魅力を引き出すべく、精力的な活動を続けている。
1994年の初登場から30年ものあいだ、さまざまなプロジェクトを率いて毎年のようにブルーノート東京にやってきては満員のオーディエンスを沸かせてきたボブ・ジェームス。数多くの楽曲がヒップホップにサンプリングされていることを通じて彼を知ったであろうファンも、CTI時代からその音作りに親しんできたであろうファンもいるのだろう、客層の幅広さも大きな特徴だ。「私はブルーノート・ガイなんだ」とみずから語るボブが日本のファンにおくるカウントダウン&ニューイヤー公演は、居合わせた誰の心にも大きな感銘を与えるに違いない。
text = Kazunori Harada
1939年12月25日、ミズーリ州マーシャル生まれ。同世代のピアニストにはジョー・サンプル(39年生まれ)、ハービー・ハンコック(40年生まれ)、チック・コリア(41年生まれ)らがいる。4歳からピアノを始め、8歳の頃に初めてプロとして演奏。10代前半からはアレンジ(編曲)も行うようになった。ミシガン大学在学中に自身のトリオを結成し、1962年度「ノートルダム大学生ジャズ・フェスティヴァル」に出場。見事グランプリを獲得し、同フェスティヴァルの審査員であったクインシー・ジョーンズ監修のもと、ファースト・アルバム『ボールド・コンセプションズ』を制作した。ビル・エヴァンスの演奏で知られる「ナーディス」なども取り上げてはいるが、全体的にアルバムの内容は“大胆な概念”という表題通り、非常に冒険的なものだ。
64年には伝説的アルト・サックス/フルート/バス・クラリネット奏者であるエリック・ドルフィーと共演。65年には前衛音楽を象徴するレーベル“ESPディスク”に、テープ・コラージュとの協奏曲というべき『エクスプロージョン』を録音している。
65年頃から68年にかけては、最高峰のジャズ・ヴォーカリストのひとりであるサラ・ヴォーンの伴奏ピアニストを担当。69年に入るとクインシーのアルバム『ウォーキング・イン・スペース』でキーボードを演奏し、収録曲「アイ・ネヴァー・トールド・ユー」のアレンジも手掛けた。その才能が同作のプロデューサーであるクリード・テイラーの目にとまり、70年にスタートした独立レーベル“CTI”(および傍系の“KUDU”)の主要キーボード奏者/アレンジャーの座につく。当時の代表作には「ノーチラス」を含む『ボブ・ジェームス・ワン』、「ウェストチェスター・レディ」を含む『ボブ・ジェームス・スリー』など4枚のリーダー作や、グローヴァー・ワシントンJr.のベストセラー作品『ミスター・マジック』がある。77年には自身のレーベル“タッパン・ジー”を設立、78年には人気テレビドラマ『タクシー』のオープニング・テーマ「アンジェラ」を含む『タッチダウン』がリリースされた。79年にはアコースティック・ギター奏者アール・クルーとの共作『ワン・オン・ワン』を発表、この作品で自身初のグラミーを獲得した(最優秀ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞)。86年“ワーナー・ブラザーズ”に移籍し、アルト・サックス奏者デイヴィッド・サンボーンとの共作『ダブル・ヴィジョン』を発表。再度グラミー賞に輝いた。
90年代以降のボブを語るうえで欠かすことのできないユニット“フォープレイ”は、彼が90年に発表したアルバム『グランド・ピアノ・キャニオン』にリー・リトナー、ハーヴィー・メイソン、ネイザン・イーストが参加したことが契機となって発足した。フォープレイ名義ではこれまで13枚のオリジナル・アルバムを発表、25周年記念アルバム『シルヴァー』(2015年)にはリトナー、ラリー・カールトン、チャック・ローブと歴代ギタリスト3名が参加した。溢れるほどの親しみやすさ、心地よいグルーヴ感、室内楽的な格調高さを兼ね備えるフォープレイの諸作は多くのファンの心をつかみ、ボブはキーボードよりもアコースティック・ピアノを多用して新境地を開いた。そして現在の彼は、親と子以上に年齢の離れた気鋭ミュージシャンを迎えたトリオやカルテットで、より自身のジャズのルーツに迫るべく、アコースティック・ピアノの魅力を引き出すべく、精力的な活動を続けている。
1994年の初登場から30年ものあいだ、さまざまなプロジェクトを率いて毎年のようにブルーノート東京にやってきては満員のオーディエンスを沸かせてきたボブ・ジェームス。数多くの楽曲がヒップホップにサンプリングされていることを通じて彼を知ったであろうファンも、CTI時代からその音作りに親しんできたであろうファンもいるのだろう、客層の幅広さも大きな特徴だ。「私はブルーノート・ガイなんだ」とみずから語るボブが日本のファンにおくるカウントダウン&ニューイヤー公演は、居合わせた誰の心にも大きな感銘を与えるに違いない。
text = Kazunori Harada