カイル・イーストウッドが語る映画とジャズへの想いを込めたステージ
父親譲りの才能をジャズで開花させたベーシストが
ついに"映画音楽集"を携え来日する
これまでとは違い、全編映画音楽のみで構成された最新作を携え2年ぶりに来日するカイル・イーストウッドにインタビュー。父クリント・イーストウッドだけでなく巨匠による名作の楽曲が演奏された"映画音楽集"の全容とは?
photography = Jerome Bonnet Modds
interview & text = Yasuo Murao
interpretation = Kazumi Someya
パリを拠点に活動するジャズ・ベーシスト、カイル・イーストウッド。新作『シネマティック』は、映画音楽の名曲の数々を独自のアレンジで披露したもの。アメリカを代表する俳優/映画監督のクリント・イーストウッドを父に持ち、子供の頃から映画の世界に親しんだカイルにとって、本作は長年やりたかった企画だったという。
「映画音楽を代表する作曲家の作品のなかから、クインテットに適した曲を選んだ。それを自分たち独自のサウンドにするのは、とてもやり甲斐のある挑戦だったよ」
原曲のジャジーなムードを活かした「タクシードライバー」。フランスのジャズ・シンガー、カミーユ・ヴェルトゥを招いた「風のささやき」など映画音楽の名曲が並ぶなか、「美しくキャッチーなメロディを書く名匠」とカイルが絶賛するヘンリー・マンシーニの曲が2曲選ばれていて、それぞれ遊び心たっぷりのアレンジを聴かせてくれる。
「『ピンク・パンサー』は主旋律を4分の7拍子に変えてみたんだ。このリズムであのキャッチーなメロディーを演奏するのは実に楽しかったよ。『シャレード』ではラテン系のグルーヴをやりたいと思って、4分の3拍子のサンバ系のグルーヴで演奏したんだ」
収録曲のうち、いちばん新しい曲はアデルが歌った〈007シリーズ〉の主題歌「スカイフォール」。バンドの熱いセッションが展開されるこの曲は本作のハイライトのひとつだ。
「『スカイフォール』は私達がオリジナルから最も大きく変化させた曲だ。バンドが自由に羽根を伸ばせる曲をアルバムに入れたいと思ってね。アデルの曲をマイナー・ブルースに転じて、速いテンポで突っ走ったんだ」
また、父クリントが主演や監督を務めた作品の曲を演奏しているのも本作の聴きどころ。サントラ・ファンに愛されてきた隠れた名曲「アイガー・サンクション」を選んでいるあたりにもカイルの選曲センスが光っている。
「父が手掛けた映画の音楽のなかで特に気に入っている曲で、ずっとカヴァーしてみたいと思っていたんだ。アレンジを考えているうち、自然にクラシック音楽のテイストを持った美しいジャズ・ワルツになった。バンドの演奏も素晴らしくて、このアルバムのなかでも特別な輝きを放っている」
そして、クリントが作曲を手掛けたアカデミー賞受賞作「許されざる者」は、「父が音楽と映画をとても誇りに思っていることを知っているので、ぜひやりたかった曲」だとか。また、カイルが作曲に関わった「グラン・トリノ」は、ヒュー・コルトマンが歌うヴォーカル・ヴァージョンを収録するつもりだったが、インスト・ヴァージョンの出来があまりにも良いので2ヴァージョン収録することになったという。カイルはこの曲を作った時の想い出をこんな風に語ってくれた。
「メロディの冒頭の部分は父がピアノで書いて映画に使いたいと言ってきたんだ。それを私とマイケル・スティーヴンスがひとつの曲に膨らませた。そして、ジェイミー・カラムに映画の脚本を読んでもらったうえで歌詞をつけてもらい、父の家の居間でジェイミーがピアノを弾きながら歌うのを録音して、それを映画に使ったんだ。すべてが魔法のようにうまくいった曲だったよ」
映画音楽を独自の解釈でプレイすること。それはカイルにとって自分のルーツを見つめ直すことであり、父親との絆を確かめることでもあるのかもしれない。
「カヴァーする際に難しかったのは、よく知られている曲に新たな何かを加えて独自の作品にすること。その一方で、名作映画の優れた音楽を選曲して演奏するのはとても刺激的だった。これは映画と映画音楽の偉大なるコンポーザー達に贈る、私からのオマージュなんだ」
父親から受け継いだ映画とジャズへの愛情。それをアルバムに詰め込んだ『シネマティック』は、ジャズ・ファンだけでなく、映画ファンにとっても最高の贈り物になるだろう。
『シネマティック』
(キングインターナショナル)
村尾泰郎(むらお・やすお)- 音楽/映画ライター。1968 年生まれ。音楽雑誌の編集者を経てフリーに。音楽や映画に関する記事を中心に、雑誌、アルバムのライナーノーツ、映画のパンフレットなどに寄稿している。
『グラン・トリノ』 |
『タクシードライバー』 |
Michel Legrand |
ヘンリー・マンシーニ楽団 |
作曲にも関わった「グラン・トリノ」は、メロディの冒頭の部分は父クリントがピアノで書いたというエピソードも。ジャジーなムードが活かされた「タクシードライバー」、そしてミシェル・ルグラン作「華麗なる賭け」の「風のささやき」など名作がラインナップ。ヘンリー・マンシーニの曲は2曲選ばれ、「美しくキャッチーなメロディを書く匠であり、優れたジャズ作曲家」とカイルは評価している。
VALENTINE MENU
バレンタイン・デザート
- バレンタイン・デザート
オレンジとショコラのサヴァラン¥1,936(税サ込)
バレンタイン・カクテル
スパイスがアクセントとなったイチゴのスパークリングカクテル ¥2,299(税サ込)
スペシャル・プラン
[ミュージックチャージ + セット・トリオ + バレンタイン・カクテル]1名様 ¥12,800(税サ込) ※バレンタイン・スペシャル・プランとバレンタイン・デザートのご予約は、ブルーノート東京オフィシャルサイトもしくはお電話(03-5485-0088)で承ります。
※バレンタイン・スペシャル・プランのご予約のみ、前日20時までとさせていただきます。
※本メニューは数に限りがございます。
KYLE EASTWOOD "CINEMATIC"
カイル・イーストウッド "CINEMATIC"
2020 2.12 wed., 2.13 thu., 2.14 fri.
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:15pm Start9:00pm
※2.12 wed. 1stショウは貸切となります。
公演詳細はこちら → https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/kyle-eastwood/