モンティ・アレキサンダー、生粋のジャズマンにしてレゲエマン
ジャマイカ出身のピアノ・レジェンドが見出した
"ラスタ"と"モンク"に共通する美
約6年ぶりに出演するモンティ・アレキサンダー。ボブ・マーリー生誕75周年と、セロニアス・モンクにフォーカスした新譜が公演のテーマだという。ジャズとラスタの両軸を持つ男にしか出せない音色に期待が高まる。
text = Koya Suzuki
半世紀以上にわたり、そのキャリアとディスコグラフィを精力的に積み上げてきたピアニスト、モンティ・アレキサンダー。ミルト・ジャクソンのサイドマンとして、ハーブ・エリスやレイ・ブラウンとの、あるいはジョン・クレイトンやジェフ・ハミルトンとのトリオでの活動などと並行して、彼は故郷ジャマイカのレゲエとジャズとの間にあるフロンティアの探究を大切なライフワークとしてきた。
現代ジャマイカ音楽の源流であるスカは"ジャマイカン・ジャズ"なのだから、レゲエとジャズはそもそも近しい血縁関係にあるのだが、アレキサンダーはカリプソ、メント、ロックステディ、ナイヤビンギ・ミュージック、ダンスホール・スタイルまで含めた、レゲエ・カテゴリーの全域を自己のルーツと結びついた音楽的探究と新たな創造の対象としている点で、生粋のジャズマンであるばかりか生粋のレゲエマンでもある。
直近の20年だけ見ても、今度の公演のひとつの柱であるキング・オブ・レゲエ、ボブ・マーリーへのオマージュ(カヴァー・パフォーマンス)として'99年の『Stir It Up』と2006年の『Concrete Jungle』の2作を発表しているし、2000 年に『Monty Meets Sly and Robbie』、翌年2001年に『Goin' Yard』、盟友のギタリスト、アーネスト・ラングリンとの2004年作『Rocksteady』、そして2011年の『Harlem-Kingston Express』と2014年のその続編などにおいて、まさに彼にしか成し得ない含蓄に富むジャズマンらしい方法でレゲエ愛を表現し、さらに随所でボブ・マーリーを引用しながら、多くの曲で米国産スタンダード・ナンバーとジャマイカン・フィーリングとの親和性を鮮やかに示している。
今公演に銘打たれたもう一方の柱は、彼のジャズ・フィールドにおけるアイドルであるセロニアス・モンクをレゲエ・フォーマットに引き込んで再定義しようという野心的な新作『Wareika Hill RastaMonk Vibrations』だが、セロニアス・モンクとボブ・マーリーがひとつのショウのテーマに並ぶのもまさに彼らしい。かの《Blue Note Records》からリリースされた唯一のルーツ・レゲエ作品であるトロンボニスト、リコ・ロドリゲスのまごうことなき名盤『Man from Wareika』を愛聴されている方も多いだろうが、そこにも掲げられていた〈Wareika〉は、かの国でも異端扱いされたラスタファリアンたちが身を寄せたコミューンで知られるキングストン東郊外の丘陵地帯の地名で、ラスタの聖なる精神を表象するワードのひとつである。アレキサンダーがその新作の副題でボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのアルバム『Rastaman Vibration』をもじっていることも示唆するように、今回の公演ではマーリー生誕75周年を祝いながら、ラスタとモンクに通じる"異端の美"を、自らの天命の仕事のなかで麗しく昇華させて見せてくれることだろう。
『Wareika Hill Rastamonk Vibrations』 |
『Concrete Jungle / The Music of Bob Marley』 |
鈴木孝弥(すずき・こうや)- 音楽ライター、翻訳家。カヴァー専門サイト《eyeshadow. jp》にて古今東西のカヴァー曲をめぐるコラム〈Cover Triathlon(カヴァー・トライアスロン)〉新連載。
MONTY ALEXANDER
"Wareika Hill" & "A Celebration of Bob Marley's 75th Anniversary"
モンティ・アレキサンダー
"Wareika Hill" & "A Celebration of Bob Marley's 75th Anniversary"
2020 2.6 thu., 2.7 fri., 2.8 sat.
2.6 thu., 2.7 fri.
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:15pm Start9:00pm
2.8 sat.
[1st]Open4:00pm Start5:00pm [2nd]Open7:00pm Start8:00pm
公演詳細はこちら → https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/monty-alexander/