"Beyond Jazz" Artists You Need to Know:2020(2)〜カッサ・オーバーオール | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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"Beyond Jazz" Artists You Need to Know:2020(2)〜カッサ・オーバーオール

"Beyond Jazz" Artists You Need to Know:2020(2)〜カッサ・オーバーオール
>>"BEYOND JAZZ" ARTISTS YOU NEED TO KNOW:2020(1)〜キャメロン・グレイヴス

ジャズのイメージを超えた
未知の領域に挑む才人ドラマー

 ラッパーでもありプロデューサーでもあるドラマー、カッサ・オーバーオールが自身の名義で初登場。ジャズにもヒップホップにも収まらないハイブリッドなビートは聴き逃せない。

Text = Mitsutaka Nagira

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 カッサ・オーバーオールは謎のドラマーだった。2017年にアート・リンゼイが13年ぶりにリリースしたアルバム『ケアフル・マダム』のリズムが現代ジャズを通過した同時代性のあるものだったのでクレジットを見てみたら、そこに記されていたのがカッサだった。そこでキャリアを遡ってみると、ヴィジェイ・アイヤーからピーター・エヴァンス、ジェリ・アレンなどなどという感じでフリー・ジャズからMベース系まで、尖った音楽性で知られるミュージシャンに起用されていることを知り、変拍子やポリリズムなど、複雑なリズムに対応できるジャズ・ドラマーだろうと僕は認識していた。

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Photo by Makoto Ebi

 と思っていたら、2018年にカッサはEP『Drake It Till You Make It』を発表する。そこではドレイクやスヌープドッグ、カニエ・ウエストを打ち込みと生演奏を組み合わせてカヴァーしていた。ループするドラム・ビートから始まり、それが途中で原曲にはないドラムの即興があって、ウワモノもそれに合わせて変化していくアレンジで、生演奏とプログラミングとエディットのどれをも優先していない新たなジャズ・ミュージシャン像を提示していた。2019年にはフル・アルバムの『Go Get Ice Cream And Listen to Jazz』をリリース。ロイ・ハーグローヴ、アート・リンゼイ、カーメン・ランディから、新鋭トランぺッターのセオ・クロッカーまでゲストに迎えつつ、EPで聴くことができた特異さに加え、インディ・ロックやエレクトロニック・ミュージックまでをも視野に入れたような幅広い音楽性が聴こえていた。ウォー・オン・ドラッグスやニック・ハキムなどを手掛けるダニエル・シュレットにエンジニアを任せたことによる音響面も素晴らしかったこともあり、高い評価を受けた。



 そして、2020年、カッサはUKの〈ブラウンズウッド〉と契約し『I THINK I'M GOOD』をリリースする。ジョエル・ロス、ヴィジェイ・アイヤー、アーロン・パークスらを起用し、よりジャズ濃度を上げつつ、それでいてプロダクションの精度も高まっている。これまでジャズ・ミュージシャン達がネオソウルからも影響を受けながら形にしてきた「ヒップホップのビートを生演奏に置き換える」過程からさらに進め、ビートメイクとドラムの混交を追求しつつ、近年、ジャマイア・ウィリアムスやアントニオ・サンチェス、ネイト・スミスらがドラム・ソロと言う形で提示したのと同じように、ドラミングそのものにより豊かなボキャブラリーを持たせて、ドラムでストーリーを語るような音楽にチャレンジしている。そこにラッパーでもある自身のラップやヴォイスを重ねたりして、ジャズ・ミュージシャンとビートメイカーとラッパーの新たな関係を模索しているのも面白い。このカッサの試みは、近年だとマカヤ・マクレイヴン『Universal Being』と並び、気鋭のドラマーによる注目作といえるだろう。もちろん2020年の話題作のひとつにもなるはずだ。

 そんなカッサが自身の名義で初来日する。僕は2019年2月にNY "ジャズギャラリー"で彼のライヴを観た。その時はアーロン・パークス、ラシャーン・カーターとのトリオでジャズ寄りではあったが、アーロンとカッサの2人がピアノとドラムにエフェクトをかけるだけでなく、ラップトップからビートやエレクトロニクスを鳴らし、さらにミキサー卓にいたラスタ・ファッションのエンジニアがライヴ・ダブ・ミックスをしていて、大胆なディレイやリヴァーブで音像を変化させまくっていた。決してヒップホップ的ではないライヴだったが、彼の音楽が単純なジャズ×ヒップホップ以上のハイブリッドさを持ったものだとわかった。東京ではどんなことをやるのかわからないが、ジャズ・ミュージシャンのイメージを超えた新鮮な驚きを与えてくれることは間違いないと思う。




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『I THINK I'M GOOD』
(Beat Records / Brownswood Recordings)
※2020 3.6発売

>>"BEYOND JAZZ" ARTISTS YOU NEED TO KNOW:2020(1)〜キャメロン・グレイヴス


柳樂 光隆(なぎら・みつたか)
1979年、島根県出雲生まれ。音楽評論家。『MILES:Reimagined』、21世紀以降のジャズをまとめた世界初のジャズ本「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者。共著に後藤雅洋、村井康司との鼎談集『100年のジャズを聴く』など。
https://note.mu/elis_ragina
https://twitter.com/Elis_ragiNa

KASSA OVERALL
カッサ・オーバーオール
2020 2.17 mon., 2.18 tue.

[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:15pm Start9:00pm

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公演詳細はこちら → https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/kassa-overall/

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