ブラックミュージック最前線に立つ男、モーリス "モベッタ" ブラウンのグルーヴ
※モーリス "モベッタ" ブラウン公演は、日本政府が3月23日に新型コロナウイルス感染症対策本部の会合において「米国からの入国者と帰国者に対し、指定場所での2週間の待機と国内公共交通機関の利用自粛を要請する」方針を決定したことに伴い、アーティスト側と協議のうえ、公演を延期することとなりました。本公演を楽しみにされていました皆さまには、深くお詫び申し上げます。
ジャズとヒップホップ、ふたつのシーンの
最前線で躍動するトランペッター
アンダーソン・パークやチャンス・ザ・ラッパーにも重用されるモーリス"モベッタ"ブラウン。ジャズ、ヒップホップ、ブルースをダイナミックに横断し、ブラック・ミュージックを加速させる男のグルーヴをぜひ体感して欲しい。
text = Shiho Watanabe
ジャズとヒップホップのグルーヴを限りなく近づけるミュージシャンは少なくない。ロバート・グラスパーやテラス・マーティン、クリス・デイヴら、例を挙げるまでもないだろう。そして、その両フィールドにおいて常に最先端にいるのが、このモーリス"モベッタ"ブラウンだ。
トランペットを操り、作曲やプロデュースもこなすモーリスは1981年、ブルースのメッカであるシカゴ近郊に生まれる。幼少期からトランペットに親しみ、高校生のうちからラムゼイ・ルイスと共演するという機会にも恵まれ、ジャズの聖地でもあるニューオーリンズに活動の場所を移し、2004年には初のリード・アルバム『HIP TO BOP』(これ以上に彼の音楽的ルーツをうまく表すタイトルがあるだろうか!)をリリース。しかし、ハリケーン・カトリーナの被害を受けた後に、モーリスはニューヨークのブルックリンへと拠点を移す。
ミュージシャンとしてさらに意欲的に活動することとなったモーリスは、アレサ・フランクリンやワイクリフ・ジョン、デ・ラ・ソウル、ザ・ルーツといったソウル~ヒップホップ・アーティストらの作品に多く参加するように。また、2010年からはテデスキ・トラックス・バンドのメンバーとしても活躍し、彼らの1stアルバム『レヴェレイター』にも参加。そして、2012年には同作がグラミー賞において最優秀ブルース・アルバム賞を獲得し、モーリスはグラミー・アーティストとしてもその名が知れ渡るところとなった。加えて、ロイ・ハーグローヴ率いるRHファクターにも参加し、ますますそのフィールドを広げていくこととなる。2014年には、タリブ・クウェリ、プロディジー、ジーン・グレイといったニューヨークを拠点とする実力派ラッパーたちを招いたアルバム『Maurice vs Mobetta』を完成させ、話題を呼んだ。自身のリーダー作として最新作となる『THE MOOD』(2017年)では、さらにジャンルの垣根を取り払うサウンドを提示。洗練されたグルーヴを聴かせるかと思えば、いきなりボトムの厚いヒップホップ・ビートを展開するなど、よりダイナミックにモベッタ・ワールドを構築している。
最近ではアンダーソン・パークやチャンス・ザ・ラッパーらともステージを共にしているモーリス。今回の来日公演においては、ディアンジェロやレイラ・ハサウェイ、ラファエル・サディークらとも共演しているギタリストのイザイア・シャーキー、これまでにエリカ・バドゥやクリスチャン・スコット、デリック・ホッジらのツアー・メンバーも務めたドラマーのマイク・ミッチェルらを伴ってのステージを披露する予定だ。どこまでも自由に、そしてグルーヴィーに広がる最先端モベッタ・サウンドを体感する絶好の機会である。
渡辺志保(わたなべ・しほ)- 音楽ライター。主にヒップホップ関連の文筆や歌詞対訳に携わる。共著に『ライムスター宇多丸の「ラップ史」入門」(NHK出版)など。block.fm「INSIDE OUT」などをはじめ、ラジオMCとしても活動。
MAURICE "MOBETTA" BROWN
モーリス "モベッタ" ブラウン
2020 3.26 thu., 3.27 fri., 3.28 sat.
3.26 thu., 3.27 fri.
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:15pm Start9:00pm
3.28 sat.
[1st]Open4:00pm Start5:00pm [2nd]Open7:00pm Start8:00pm
公演詳細はこちら → https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/maurice-brown/