【スペシャル対談】櫻井哲夫×中村梅雀 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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【スペシャル対談】櫻井哲夫×中村梅雀

【スペシャル対談】櫻井哲夫×中村梅雀

ジャコ・パストリアスが引き合わせた
異色の顔合わせによるセッション

 カシオペアやジンサク、ソロ活動を通じて、日本を代表するベーシストの地位を確立した櫻井哲夫が、敬愛するジャコ・パストリアスに捧げるセッション。今回は、数々のテレビドラマの主演で人気の中村梅雀をスペシャル・ゲストに迎える。ここでは公演に向けて、ご両人のジャコ愛やライブへの意気込みについてお話をうかがった。

interview & text = Akira Sakamoto
photo = Mayumi Koshiishi

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櫻井哲夫(以下、櫻井): ジャコ・パストリアス・トリビュート・セッションは13年続けている企画で、『IT'S A JACO TIME!』(2013年)というアルバムも出しましたが、今回はブルーノート東京さんでの公演ということで、スペシャル・ゲストを入れたら、という提案をいただいたんですよね。それで、ヴォーカリストというのも考えたんですが、ここはベーシストが良いなという話になって(笑)。で、日本のベーシストの間でジャコのマニアはたくさんいると思いますが、スペシャル感のある人というなら梅雀さんじゃないかと(笑)。

中村梅雀(以下、梅雀): 実は、今回のお話をいただくのと前後して、僕が主演したドラマ『今野敏サスペンス 機捜235』のためにサウンドトラックを3曲書いてCDも作ったんですが、その1曲で櫻井さんに僕とのベース・バトルをお願いしたんですよ。すごく良いタイミングでした。

櫻井: ベース・バトル、メチャメチャ楽しかったです(笑)!ご快諾いただけて嬉しいです。

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梅雀: 「ジャコに捧げる」と謳っているライブに、ジャコが実際に使っていたブラック・ベースを持って参加させていただくのは、ものすごいプレッシャーですけれどね(笑)。

櫻井: 同じジャコの大ファンですから。しかも梅雀さんは役者として活躍するいっぽうで、これだけジャコが好きでベースを弾いているわけで、ゲストにはうってつけだと思います。ブラック・ベースの音は僕も気になりますし。先ほど持たせていただきましたが、楽器って生き物みたいなところがあるじゃないですか、で、このベースにもジワッとくるものがありましたね。ジャコが弾いていたエネルギーというか。

梅雀: 超常現象も起きましたからね(笑)。このベースを買った後、恐くて弾けないと思って、しばらくの間はライブで使わなかったんですよ。そうしたら、風呂場のライトがピカピカピカ激しく点滅するんです。2階の部屋でジャコとは縁もゆかりもないベースを弾いていたら、風呂から出て来た妻が「今、違うベースを弾いてたでしょ? もう、大変だったんだから!」って(笑)。それが、ライブで使おうと決心したら収まったんですよね。

櫻井: そのまま放置していたら、エラいことになっていたかも(笑)。気が付いて良かったですね・・・ちなみに、梅雀さんが初めてジャコを観たのはいつでしたか?

梅雀: 東京宝塚劇場でジャコが初来日した時の公演です。もともとウェザー・リポートのファンで、来日公演も1971年から観ていて、アルバムも出るたびに買っていました。ジャコを知ったのは、アルバム『ブラック・マーケット』の「キャノン・ボール」を聴いて「えっ、なんだこの音は!」と思ったのが最初で、次にソロ・アルバムを聴いてブッ飛びました。それで、初来日の公演を観て圧倒されて、しばらくしてから自分のジャズ・ベースをフレットレスに改造しました(笑)。もともと長唄の三味線をやっていたおかげで、フレットレスでもそれほど苦労はせずに済みましたね。

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櫻井: 三味線はネックも長いから、ベースにも応用しやすかったでしょうね。僕もウェザー・リポートは初期の頃から好きでしたが、ジャコを知ったきっかけは、ミシェル・コロンビエのセルフ・タイトル作品やフローラ・プリムの『エブリデイ・エブリナイト』だったと思います。自分が知っている奏法とは全く違うテクニックを駆使する人だなあという印象で、その後『ブラック・マーケット』、ソロ・アルバムと聴いてノックアウトされました。ライブを観たのは1976年か77年の厚生年金か中野サンプラザが最初で、とにかくびっくりしましたね。

梅雀: そうした体験が巡り巡って今のトリビュートにつながったわけですが、櫻井さんが最初にカバーしたジャコの曲は「パンク・ジャズ」なんですよね。

櫻井: ああ、そうでしたね。カシオペアやジンサクをやめて、次のアルバムをどうしようかと考えた時に、1曲だけカバーをやろうと。それで、気合を入れて「パンク・ジャズ」を選んだんです。

梅雀: そこであの難しい曲に行くっていうのがすごいですね。僕も一時はライブで必ず1、2曲はブラック・ベースを使ってジャコのカバーをやっていましたが、いくら楽器を揃えてもジャコにはなれないということで、カバーもやらなくなって、ブラック・ベースも使わなくなっていたんです。ところが、あのベースがなぜかジャコ絡みの仕事を呼んでくるという(笑)。

櫻井:(笑)今回もよろしくお願いしますーージャコは晩年に音楽以外のことでいろいろな逸話を残しましたが、僕は精神的に安定していて音楽に集中していた頃のジャコが好きなので、今後もそこに注目していきたいと思っています。

梅雀: こちらこそ、よろしくお願いします。ジャコが好きでしかも世界的なベーシストのライブに呼んでいただいて、いろいろ考えたらプレッシャーで動けなくなっちゃうので(笑)、とにかく楽しんで、ジャコへの思いを学生時代のようにお話できたらなあと思っています。

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坂本 信(さかもと・あきら)
札幌市出身。レコード会社や音楽出版社、楽器メーカーのための翻訳、数百人のアーティストのインタヴュー、通訳を務める。ベーシストとしても活動し、高崎晃や伊東たけし、マイク・オーランドなどと共演。

LIVE INFORMATION

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☆櫻井哲夫
JACO PASTORIUS TRIBUTE SESSION
with special guest 中村梅雀


2021 9.20 mon., 9.21 tue.
9.20 mon.
[1st]Open4:00pm Start4:45pm [2nd]Open6:30pm Start7:30pm
9.21 tue.
[1st]Open4:00pm Start5:00pm [2nd]Open6:45pm Start7:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/tetsuo-sakurai/
※9.21 tue. 2ndショウのみインターネット配信(有料)実施予定
※アーカイブ配信視聴期間:9.24 fri. 11:59pmまで
※アーカイブ配信の内容はライヴ配信と異なる場合がございます。予めご了承ください。

<MEMBER>
櫻井哲夫(ベース)
本多俊之(サックス)
新澤健一郎(キーボード)
井上銘(ギター)
RYUGA(ドラムス)
ヤヒロトモヒロ(パーカッション)

Special Guest:
中村梅雀(ベース)

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