【スペシャルインタビュー】Nao Yoshioka
様々な出会いを昇華して辿り着いた現在
Nao Yoshiokaが見据える新たなステージ
2012年のデビュー以来、アルバムをリリースするたびに進化を見せてきたNao Yoshiokaが、〈Tokyo Funk Sessions〉と題してブルーノート東京に戻ってくる。彼女が「聖地」と呼ぶこの場所に2022年1月18日、ファンク・ディーヴァが降臨する。
interview & text = Hiroyuki Suezaki
photography:Tetsuya Nakagawa
Nao Yoshiokaがファンクに突き進んでいる。その理由は、コロナ禍が世界の風景を一変させたことで、Naoが一時的にその歩みを止めざるをえなかったことと無関係ではない。
2018年に本格的にアメリカ・ニューヨークに拠点を移し、翌年には4thアルバム『Undeniable』をリリースと、世界を視野に入れた活動が順調に進んでいたNao Yoshiokaだったが、コロナ禍により計画は大きく変わった。日本に戻った彼女は、「日本にいる理由もわからないし、自分のやりたいこともわからないし、自分の居場所ってどこだろう?」と思い悩むようになる。そこで出会ったのが、現在彼女のライヴ・バンドのMD(ミュージック・ディレクター)を務めているピアノの宮川純だった。
「去年(2020年)の12月に純くんをリーダーにここブルーノート(東京)でやってみて、"見つけた!"って思ったんです。それがあったから2021年は、"アメリカのどこに呼ばれても恥ずかしくないライヴ・プロダクションを作るんだ"っていうモードに完全に入って、私はステージのパフォーマンス部分でダンスのレッスンを受けたりとか、自分がどうやったら完璧になれるか、どうやったら自分が求めているものを表現できるか、っていう準備の年になりましたね」
宮川純という、「私がやりたいって思ったことをやりたいと思ってくれている、そのピッタリ感がすごくてびっくりする」 "盟友"を見つけたことで、2021年10月~11月にかけて行われた全国ツアー〈Nao Yoshioka Japan Tour 2021 -Rising After the Fall-〉は、「やりたいことができた」ライヴが実現した。
「どこまでこのメンバーと最高のライヴ・プロダクションを作れるか、毎回のライヴがトライ&エラーみたいな感じで。ただ"ライヴがよかった、お客さんが楽しいって言ってくれた"ってことだけで終わらない、継続的な目標みたいなものを積み重ねていったのが2021年という感じで、現状の集大成を作りたいというのが〈Rising After the Fall〉ツアーでした」
そしてこのツアーの中で「あ、私、ファンク好きだ」と再確認したのだという。
「自分には"しっとりとした、セクシーなR&B"の部分もあるけど、荒々しい、聴いたら身体が動いてしまうようなグルーヴに対してもすごく愛着があって、自分自身の性質としてそういうものがあるんだろうなっていうのをツアーでさらに感じて。そういう面をフィーチャーするのが今回の〈Tokyo Funk Sessions〉になると思います」
その〈Tokyo Funk Sessions〉は具体的にどういう公演になるのか。バンドメンバーに目を向けると、ドラムのFUYUやギターの吉田サトシはキャリア初期の頃からの長い付き合いであり、MDの宮川純とも勝手知ったる仲だ。そしてNao Yoshiokaのステージでは今回初めて3管のホーン隊が加わる(これまでは2管)。テーマは「ブルーノート×ファンク×Nao Yoshioka」。ただ、ここで言うファンクとは音楽ジャンルに限ったものではなく、彼女の中にあるファンクネス――「荒々しい」スピリットを解放するということだ。
「ブルーノートって、楽しいアップテンポの曲もいいけど、引いた曲、静かな曲とかもすごくよくて。地声が聞こえるだろうなっていうあの近さは、ブルーノートの良さじゃないですか。この場所、この距離感だからこその表現っていうのは意識しますね。ホーン隊を2管じゃなくて3管にしたのは和音にしたかったんですよ。それでホーン隊とヴォーカルとドラムだけとか、そういう"引き"の音楽をやった時にどういうふうにホーン隊が生きて私のヴォーカルも生きるようなアレンジができるのか、とかいろいろ考えていてすごく楽しみです。過去の曲にホーン隊が入っているものもありますけど、それをただそのままやりますっていう感じには絶対ならないですね。"2022年のNao Yoshiokaのファンク"にしたいです」
ブルーノート東京は、「私にとって聖地」であり、「その時の私の実力を試されてる場所」でもある、Naoにとって特別なヴェニューだ。
「去年のブルーノートのライヴによって私の2021年の音楽人生がものすごく変わったんですよね。実はその前に3カ月ぐらい喉を壊してて、一切歌えない状態になってしまっていて。喉がここまでひどく壊れたことがなかったから、"ヴォーカリストとして私はこれからもやっていけるのか?"という気持ちになって......。なので去年のブルーノートは復帰ライヴみたいな感じだったので、めちゃくちゃ怖かったんです。でもステージに立ってみたら、あぁ、私はやっぱりこのために生まれてきたんだなって思えて。去年ブルーノートに立ってなかったら、私いまだに腐ってると思います(笑)」
そうして、ひたすら最高のライヴ・プロダクションを追求する「準備の年」となった2021年。〈Tokyo Funk Sessions〉で幕を開ける2022年は、「チャレンジの年」になるという。
「アメリカに行って、小さな都市を回って......っていう今までのやり方は難しくても、逆に今までは考えつかなかった方法を試すいい機会でもあるのかなって思うんですよ。やり方を変えてチャレンジしていかないといけないって思ってます。でも音楽で伝えたいことは決まってるし、やりたいこともある。ひとつは、私たちが作った今のライヴ・プロダクションで海外で一回ライヴしてみたいっていうのが強くあって、どこの国かはわからないけど、絶対やりたいって話してます。なのでチャレンジの年。でも柔軟に、"自由だけどチャレンジできる年"にしたいです」
LIVE INFORMATION
☆NAO YOSHIOKA
Tokyo Funk Sessions 2022
2022 1.18 tue.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/nao-yoshioka/
<MEMBER>
ナオ・ヨシオカ(ヴォーカル)
宮川純(ピアノ、ミュージック・ディレクター)
ザック・クロクサル(ベース)
FUYU(ドラムス)
吉田サトシ(ギター)
佐瀬悠輔(トランペット)
馬場智章(テナーサックス)
池本茂貴(トロンボーン)
末﨑裕之(すえざき・ひろゆき)- 編集者/音楽ライター。インタビューやライナーノーツ執筆多数。共著に『新R&B入門』(スペースシャワーブックス)。