【JAM vol.216】穐吉敏子
text = Kenichi Aono
世界に出ていった邦人ジャズ・ミュージシャンの草分け
穐吉敏子の貴重なソロ公演
日本人としてアメリカ、そして世界のジャズ・シーンに確かな足跡を残してきたジャズ・ピアニスト、作編曲家の穐吉敏子。戦後ほどなくしてダンスホールや進駐軍のクラブなどで演奏を開始した穐吉は、1951年に自身のグループ「コージー・カルテット」を結成。このカルテットには渡辺貞夫も在籍していた。
1953 年、ノーマン・グランツ率いる「ジャズ・アット・ザ・フィルハーモニー」の一員として来日していたオスカー・ピーターソンが、偶然目撃した穐吉の演奏に感銘を受けグランツに紹介。この出会いがファースト・アルバム『Toshiko's Piano』 (1954) に結実する。アルバムのリリースをきっかけに、ジャズの本場アメリカでの演奏に対する意欲が高まった穐吉はバークリー音楽院を志し、1956年に奨学生として単身渡米。1973年にはロサンゼルスで現在の夫であるサックス、フルート奏者のルー・タバキンと「トシコ=タバキン・ビッグバンド」を結成し、『孤軍』(1974) をはじめ、モダン・ジャズの名盤と謳われる数々の作品を発表した。
1982年、ニューヨークに移った穐吉は自身の名を冠したジャズ・オーケストラを結成。このオーケストラの活動は世界的に高い評価を得てきたが、2003年に解散し、現在はニューヨークを拠点に自身の原点であるピアニストとして精力的に活動を続けている。
今でこそ邦人ジャズ・ミュージシャンがアメリカで活動することは珍しくはないが、その先駆者とでもいうべき人物が穐吉敏子。グラミー賞ノミネートは実に11回、日本人として初の「国際ジャズ名声の殿堂」入り (1999年)も果たしたこのリヴィング・レジェンドがブルーノート東京に登場する。なんとソロ公演である。穐吉のピアノを間近で体験できるまたとない機会であるのはいうまでもないが、実子であるMonday満ちるが本公演にゲスト出演することが決定。母娘の共演も大きな楽しみとなった。単身渡ったアメリカで日本人としてのアイデンテイティをもってジャズと対峙してきた穐吉敏子。長きにわたる活動を凝縮させたうえで、真っ向からピアノに向き合うその演奏に耳を傾けたい。
LIVE INFORMATION
穐吉敏子 ソロ
Guest:Monday満ちる
2022 11.14 mon.
[1st]Open3:30pm Start4:30pm [2nd]Open7:00pm Start8:00pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/toshiko-akiyoshi/
<MEMBER>
穐吉敏子(ピアノ)
Guest:Monday満ちる(ヴォーカル)