【JAM vol.220】CHRISTIAN McBRIDE'S NEW JAWN
text = Kenichi Aono
世界的ベーシスト、クリスチャン・マクブライドが
自身のバンドで登場。小曽根真とのスーパー・トリオ公演も
リリースされたばかりのクリスチャン・マクブライド・ニュー・ジョーンの新作『プライム』はもうお聴きになられただろうか。混沌とした音の渦の底から聴こえてくるマクブライドのベースのリフも印象的なクール・チューン「Head Bedlam」で幕を開けるこの作品は、アルバム・タイトルに違わず円熟とも初期衝動とも異なる、自信に満ちた堂々たる演奏が詰まったものだ。
過去にグラミー賞を8度受賞している、名実ともに世界トップクラスのベーシスト、クリスチャン・マクブライドをリーダーとするこのグループが結成されたのは、2015年のNYヴィレッジ・ヴァンガードでの公演がきっかけ。ピアノ・トリオやピアノとヴィブラフォンを配した自身のバンド "インサイド・ストレート"、あるいはビッグバンドというイメージだったマクブライドが「今までと違うことがやりたい」とスタートしたこのニュー・ジョーンは、現在マクブライドがもっとも力を注いでいるバンドなのだ。
メンバーはマクブライドのベースに、彼とは旧知の間柄だというドラマーのナシート・ウェイツ、そしてマクブライドのグループやビッグバンドに客演経験もあるサックスのマーカス・ストリックランド、若手トップ・トランペット奏者のジョシュ・エヴァンス。この布陣を見てもわかる通り、ニュー・ジョーンにはピアノやギターは不在。ということは当然ながら金管、木管のソロにおいて、ピアノやギターでの和音やオブリガートによるバッキングがないわけだが、マクブライドの表情豊かなベースが各楽器のソロを見事に際立たせ、またジャズ特有の緊張感を楽曲に与えている。「バッキングは自分だけで十分」とでもいうような、センスや技術に裏づけられたマクブライドの懐の深さが感じられる編成ではないだろうか。5月24日、25日に行われるクリスチャン・マクブライド・ニュー・ジョーンのブルーノート東京公演では、この"コードレス・アンサンブル"の妙にじっくりと耳を傾けていただければと思う。
また、この公演に先立つ5月19日、20日にはワールドワイドに活躍するピアニストの小曽根真、オールマイティ・ドラムの先駆けとしてニューヨークを代表するドラマーのジェフ "テイン" ワッツ、そしてマクブライドからなるスーパー・トリオのステージが11年ぶりに実現。こちらでは卓越した演奏が生み出す「音の対話」を存分に楽しめるにちがいない。自身のグループ、そしてスーパー・トリオと、クリスチャン・マクブライドの異なる側面を間近で体験することができる今回のブルーノート東京公演。あぶらの乗ったプレイをぜひ味わっていただきたい。
LIVE INFORMATION
小曽根真 スーパー・トリオ
featuring クリスチャン・マクブライド & ジェフ"テイン"ワッツ
2023 5.19 fri., 5.20 sat.
5.19 fri.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
5.20 sat.
[1st]Open3:30pm Start4:30pm [2nd]Open6:30pm Start7:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/makoto-ozone/
<MEMBER>
小曽根真(ピアノ)
クリスチャン・マクブライド(ベース)
ジェフ"テイン"ワッツ(ドラムス)
クリスチャン・マクブライド・ニュー・ジョーン
2023 5.24 wed., 5.25 thu.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/christian-mcbride/
<MEMBER>
クリスチャン・マクブライド(ベース)
ジョシュ・エヴァンス(トランペット)
マーカス・ストリックランド(サックス、バスクラリネット)
ナシート・ウェイツ(ドラムス)