【JAM vol.222】JOYCE MORENO "NATUREZA"
text= Kenichi Aono
45年間お蔵入りだった伝説のアルバムの楽曲を
間近で楽しめる喜び
昨年秋、45年のときを経てリリースされた『NATUREZA』が大きな話題となったジョイス・モレーノ。今回のブルーノート東京公演はこのアルバムの発売記念ライヴだ。『NATUREZA』は、アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトの仕事でも知られるアレンジャー、コンダクターのクラウス・オガーマンのプロデュース、編曲、指揮で1977年にニューヨークで録音されたアルバム。ジョイスの代表曲のひとつ「Feminina」の11分におよぶ初演ヴァージョンを含む本作は、ジョー・ファレル、マイケル・ブレッカー、マイク・マイニエリ、マウリシオ・マエストロ、トゥチ・モレーノ、ナナ・ヴァスコンセロスという米伯の一流ミュージシャンの優れた演奏、オガーマンらしいスウィートなストリングス、そしてジョイスのみずみずしい歌声、スキャットとギターが融合した絶品の内容なのだが、長らくお蔵入りとなっていたものだ。
『NATUREZA』収録曲のうち2曲は1990年代の終わりと2000年代はじめにそれぞれコンピレーションに収められることがあったため、そのタイミングで1977年に行われたNATUREZAセッションの存在が明らかになったが、この録音がアルバムとして発表されることはなく伝説と化していた。それをロンドンの名レーベル〈Far Out Recordings〉が2022年にリリースしたのだ。ちなみに、リリースに際し「Feminina」と「Descompassadamente」の2曲は伝説的エンジニアのアル・シュミットがミックスを手がけている。
Claus Ogerman and Joyce at Columbia Studios, NYC, 1977. All photos by Raymond Ross ©Raymond Ross Archives/CTSIMAGES.
さて、今回のブルーノート東京公演は、ジョイスの歌とギターのほか、ベース、ドラム、ピアノという編成だが、『NATUREZA』の録音にも参加したトゥチ・モレーノ(彼はジョイスの夫でもある)がドラムを務めるのは嬉しいところ。先のようにアルバムは多数のミュージシャンやストリングスが加わり、リッチでスウィートなオガーマンの音世界のなかでジョイスの歌やギターが存在していたわけだが、本公演ではよりソリッドな演奏とともにジョイスのヴォーカル、ギターを堪能できるまたとない機会。間近で楽しもう。
RELEASE INFORMATION
ジョイス・モレーノ 『ナトゥレーザ』
(Far Out Recordings)
LIVE INFORMATION
ジョイス・モレーノ "ナトゥレーザ"
2023 7.31 mon., 8.1 tue., 8.2 wed.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/joyce/
<MEMBER>
ジョイス・モレーノ(ヴォーカル、ギター)
トゥチ・モレーノ(ドラムス)
ロドルフォ・ストロエテール
エリオ・アルヴェス(ピアノ)