【来日記念特集】SFJAZZ COLLECTIVE〈CHAPTER 3〉 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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【来日記念特集】SFJAZZ COLLECTIVE〈CHAPTER 3〉

【来日記念特集】SFJAZZ COLLECTIVE〈CHAPTER 3〉
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クリス・ポッターが語る
"SFジャズ・コレクティヴの現在"

 2004年、サンフランシスコに設立されたオールスター・アンサンブル「SFジャズ・コレクティヴ」が10月に来日し、すみだトリフォニーホールブルーノート東京に出演する。2021年、ミュージカル・ディレクターに就任したクリス・ポッターを中心に、デヴィッド・サンチェス(サックス)、マイク・ロドリゲス(トランペット)、ウォーレン・ウルフ(ヴィブラフォン)、エドワード・サイモン(ピアノ)、マット・ブリューワー(ベース)、ケンドリック・スコット(ドラムス)という、まさに現在最も優れたミュージシャンの集団だ。この集団をまとめる大役を担っているクリス・ポッター氏にメールで質問に答えてもらった。

interview & text = Koji Murai
interpretation = Kazumi Someya
live photo = Makoto Ebi

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 ――ポッターさんは2021年にSFジャズ・コレクティヴのミュージカル・ディレクターに就任されました。このグループの設立趣旨と具体的な活動について教えてください。

「SFジャズ・コレクティヴはサンフランシスコに所在するSFジャズ・センター(非営利のアート・センターでありパフォーマンスのための空間。あらゆる類の優れたジャズ・ミュージックを提供する)によって設立されました。コレクティヴはオールスターバンド的なものとして結成され、オリジナル曲と偉大なるコンポーザーたちの作品をアレンジしたもの、その両方をリハーサルし演奏すること、そして毎年1回のサンフランシスコでのレジデンシー(滞在)が契約に盛り込まれています」

Chris Potter Picks His Favorite SFJAZZ Collective Recordings

 ――ミュージカル・ディレクターとして、どのようなことをやりたいと思いましたか?

 「音楽監督という立ち位置にどう臨むべきか、当初は確信が持てませんでした。というのも、そもそもがコレクティヴ即ち集合体で、その強力な音楽的ヴォイスの幅広さこそが、このグループの核心となる強みだからです。組織内での役割という意味で自分がどう力になれるか、そしてバンドのメンバー間や、バンドとSFジャズという組織の間の意思の疎通にどう役立てるか、時間をかけて紐解いていきました。音楽監督として私が目指すものがあるとするなら、過程において各人の才能がフルに生かされるように、可能な限り最高レベルの演奏ができるように、意思決定しスムーズに音楽に取り組むことです」

Mike Rodriguez picks his favorite SFJAZZ Collective recordings

 ――今回の来日メンバーは素晴らしいミュージシャンが勢ぞろいしてとても楽しみです。メンバーの選定は、ミュージカル・ディレクターのポッターさんがなさったのでしょうか?

「これもやはり、コレクティヴの性質ということになりますが、バンドのメンバーはアンサンブル全員により選出されます。バンド・メンバーの多くは私が参加する以前からの所属ですし、一方でケンドリック・スコットやマイク・ロドリゲスは比較的新顔です。我々としては、秀でたミュージシャンであるのみならず、コレクティヴというあり方にうまく溶け込むであろう人たちをグループのために選出するよう心掛けています。音楽的にも人間的にも、このグループの面々との仕事は喜びそのものだと言わざるを得ません」

David Sánchez picks his favorite SFJAZZ Collective recordings

 ――私が特に楽しみなのは、ポッターさんとデヴィッド・サンチェスという、個性の異なる二人の素晴らしいサックス奏者が一緒に演奏することです。デヴィッド・サンチェスさんについてコメントをいただけますか?

 「デヴィッドと初めて会ったのは90年代の初めですからずいぶん前で、お互いにキャリアのごく初期のことでした。私は彼の演奏やアプローチが大好きだったので、このコレクティヴと仕事をするにあたっての個人的なハイライトのひとつが、デヴィッドと組んでサックスの音を分かち合えることなんです。実に力のあるミュージシャンであり、素敵な人です」

Edward Simon picks his favorite SFJAZZ Collective recordings

 ――SFジャズ・コレクティヴの歴代メンバーは、人数と楽器編成が毎回ほぼ同じですね。これは決まりがあってそうしているのですか? 3ホーンにヴァイブ、ピアノ、ベース、ドラムスという現在の楽器編成は、アンサンブルとソロのバランスがとてもいいと思います。

 「このアンサンブルのラインナップが良いというのは、その通りだと思います。過去には微妙に変化したこともありますが、つねに現状と比較的似た、ホーン数本とリズム隊、それをヴィブラフォンで拡張するという編成ですね。この編成で可能なテクスチャーはいくらでもあり、そのことがコンポーザーとしてもアレンジャーとしても非常に刺激になります。一方、このくらいの小編成であればバンドの一人ひとりの強力なヴォイスが聴き取れますし」

Warren Wolf Picks His Favorite SFJAZZ Recordings

 ――ところで、就任された2021年はパンデミックの真っ只中でした。活動が思うようにできない辛さもあったと思いますが、いかがでしたか。

 「あれは大いなる困難でした。当時の世の中は一様にそうでしたが、先の展開は誰にも見えていませんでしたから。インターネットでヴァーチャル共演を試みることも考えて話し合いましたが、どこか無理やりな感じがあって音楽的に満足のいくものにはなりませんでした。ジャズ・ミュージックの場合、共演するミュージシャン同士の社交的な繋がりがとにかく重要なので、ふたたび対面で会えるまで待つのが最善と判断しました。今にして思えば、間違いなく待った甲斐はありましたよ!」

Matt Brewer picks his favorite SFJAZZ Collective recordings

Kendrick Scott picks his favorite SFJAZZ Collective recordings

 ――2020~21年は、パンデミックが始まり、政治的要因もあって社会が分断され、また、人種的な不平等や差別についての問題も大きくなった年でした。SFジャズ・コレクティヴが2022年に発表したアルバム『New Works Reflecting the Moment』は、まさにそれらについてのステートメントを音楽によって述べた作品だと思います。この作品についてのコメントをお願いします。

 「仰る通り、パンデミックは社会のあらゆる分断を劇化させましたから、そういった問題は我々皆の念頭にありました。あのアルバムは我々にとって、どこを見ても目に入る苦しみ、不平等、そして政治的争いを巡る感情や思考に一種の音楽的ヴォイスを与える機会になりました。ああいう音楽を共作・共演することでカタルシスを覚え、アルバムを出して世の中に我々なりの表現を残せたことを嬉しく思います」

――それに続いて2023年に発表されたアルバム『New Works & Classics Reimagined』では、メンバーのオリジナルの他に、ビリー・ホリデイの「God Bless the Child」、アース・ウィンド&ファイアの「That's the Way of the World」、ダニ―・ハサウェイの「Someday We'll All Be Free」が演奏されています。前作で採り上げたマーヴィン・ゲイの「What's Goin' on」もそうですが、この世界で生きている人間に向けてのメッセージを内包した曲が選ばれていますね。今までのSFジャズ・コレクティヴでは、メンバーのオリジナル以外には、レジェンダリーなジャズ・ミュージシャンをその年ごとに選んで、その人の曲を演奏する、ということが恒例でしたが。どういう基準でカバー曲を決めているのでしょうか?

「長年にわたって、毎年ひとりのコンポーザーを選んでコレクティヴがその音楽にアレンジを施してきましたが、ここ2年間はもっとずっと自由に、気持ちのままにアレンジしたり作曲したりできています。あなたが挙げた4曲のうち3曲がジャズのソングブックというよりもR&B作品であることが興味深いです。私の感覚では、それらのジャンルは同じ音楽世界の一角をなしていて、前出のR&Bの名曲は我々にとって子供のころに聴いた曲として記憶されており、それよりさらに30年から40年遡りがちなジャズのスタンダードではないのです。私としては、感情的に強い結びつきを覚え、自分なりに独創的かつ個人的なアプローチができると思える曲を選ぶようにしています」

 ――今回のライヴでは、『New Works & Classics Reimagined』『New Works Reflecting the Moment』からの曲を主に演奏する予定でしょうか? 新曲、あるいはアルバムに入っていないカヴァー曲も演奏しますか?

 「主に新しい曲に焦点を絞ったプログラムになると思います。コレクティヴの20周年を祝う組曲を作曲中で、コレクティヴの歴史に何らかの形でかかわりのある曲のアレンジも書いています。その他のアルバムからの素材も用いるかもしれません。お楽しみに!」

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2022 11.24 thu. CHRIS POTTER meets BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA

――10月15日には、すみだトリフォニーホールでエリック・ミヤシロが率いる「ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ」とのダブルビル・コンサートが予定されていますね。昨年11月に共演されていましたが、たいへん素晴らしい演奏でとても興奮しました。彼らと一緒に演奏した感想を教えてください。

「ありがとう。彼らとの共演を大いに楽しみました!私にとっては、日本のシーンの素晴らしいミュージシャンたちと知り合い、一緒に仕事をする稀な機会になりました。皆さん、優れたミュージシャンであり、優しくて、心の広い人たちでした」

――ありがとうございました。10月の公演を楽しみにしています!


[前編はこちら]
〈CHAPTER 1〉 : SFジャズ・コレクティヴのホーム"SFジャズ"とは

LIVE INFORMATION

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SFJAZZ COLLECTIVE & BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO
2023 10.15 sun. すみだトリフォニーホール
https://www.bluenote.co.jp/jp/lp/in-concert/sfjazzcollective-bntasjo/

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SFJAZZ COLLECTIVE
2023 10.16 mon., 10.17 tue. ブルーノート東京
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/sfjazz-collective/

<Member>
クリス・ポッター(ミュージック・ディレクター、サックス)
デヴィッド・サンチェス(サックス)
マイク・ロドリゲス(トランペット)
ウォーレン・ウルフ(ヴィブラフォン)
エドワード・サイモン(ピアノ)
マット・ブリューワー(ベース)
ケンドリック・スコット(ドラムス)




村井康司(むらい・こうじ)
音楽評論家。1958年生まれ。著書『あなたの聴き方を変えるジャズ史』『JAZZ 100の扉』『現代ジャズのレッスン』『ページをめくるとジャズが聞こえる』他。尚美学園大学講師『ジャズ史』

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