【特集Edition Records】Chapter2:The Bad Plus | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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【特集Edition Records】Chapter2:The Bad Plus

【特集Edition Records】Chapter2:The Bad Plus

Edition Recordsから『the bad plus』をリリース
奇才集団 ザ・バッド・プラスに宿ったマジック

 クリス・ポッター、グレッチェン・パーラト、マーク・ジュリアナ、ネイト・スミス、挾間美帆......昨年ブルーノート東京のステージを飾った多数のアーティストたちのリリースを次々と手がけ、音楽シーンに旋風を巻き起こしているUK発のジャズ・レーベルEdition Records(以下Edition)。特集Chapter 2では来日が待ち遠しいザ・バッド・プラスにフォーカスする。

text = Mitsutaka Nagira

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 2月のベン・ウェンデルに続いて、3月12日と13日にはザ・バッド・プラスが来日する。バッド・プラスは2019年に『Activate Infinity』でEditionに加わり、2022年に2作目の『the bad plus』をリリースした。バッド・プラスと言えば、2000年代初頭にジャズとロック、エレクトロニック・ミュージックの融合を模索したパイオニア的存在のコンテンポラリー・ジャズのグループとして知られている。ニルヴァーナやエイフェックス・ツインをレパートリーに加えた功績は今も色褪せない。ただし、いま聴くべきはそこではない。

The Bad Plus 'Motivations II' - Official Trailer

 2010年代からはオリジナル曲を中心にさまざまな試行錯誤を行ってきて、その過程でドラムのデイヴ・キングの存在感が増してきた。ハッピーアップルやデイヴ・キング・トラッキング・カンパニーなど彼主導のプロジェクトを聴くとわかるように、オルタナティヴなロックの感覚を誰よりも有し、それが演奏に濃厚に出ているのはデイヴだった。だからこそバッド・プラスのハイブリッドなチャレンジが可能になっていたわけだ。デイヴのその特異性がどんどん高まっていった結果、2010年代後半ごろからジュリアン・ラージの音楽に欠かせない存在として定着しているほか、マーガレット・グラスピーやクレイグ・テイボーンもデイヴのドラムを求めている。以前、カート・ローゼンウィンケルがバッド・プラスと共にツアーを行っていた際、「僕がこのコラボをやりたいと思った最大の理由はデイヴ・キングのドラムだ」と言い切った。それだけデイヴ・キングは2010年代半ばから脂がのりまくっている状態にある。

20240312_BadPlus_image001.jpg2013 11.3 THE BAD PLUS with KURT ROSENWINKEL (Photo by Great The Kabukicho)

 バッド・プラスは初期のメンバーだったピアノのイーサン・アイヴァーソンが脱退し、その後、サックス奏者のクリス・スピードとギターのベン・モンダーが加入したのだが、このメンバー変更がデイヴ・キングを軸に見るといい方向に働いている。ヒリヒリするような即興演奏を得意とするクリス・スピードは、自身のグループでデイヴを常に起用していて相性は抜群だ。

Broken Shadows "Dogon A.D." Featuring Tim Berne, Chris Speed, Reid Anderson and Dave King

 ただ、最注目はベン・モンダーだろう。マリア・シュナイダーの『Evanescence』や『Date Lord』、もしくはデヴィッド・ボウイ『★』でのダークで歪んだ音色の、プログレッシヴなサウンドで知られる奇才だ。この30年のNYジャズ・シーンに出てきたギタリストの中でも最も個性的で、最も謎に満ちた存在であり、同時にデイヴが持つロックのフィーリングに最もフィットすることが予想できるギタリストである。

20240312_BadPlus_image002.jpg2017 6.7 MARIA SCHNEIDER ORCHESTRA (Photo by Yuka Yamaji)

 この二人が参加した2022年の『the bad plus』はこれまでのバッド・プラスとは全く異なるサウンドだが、だからこそ最高な一枚だ。コンテンポラリーなジャズだけでなく、ロックやアヴァンギャルドからの影響も色濃い、NYのオルタナティヴなジャズがパワフルかつダークに融合したサウンドだ。そして、バッド・プラスの過去作品のなかでもここまでアグレッシヴにライヴの感触が収められたアルバムはないと思われるほどにスリリングな瞬間がたっぷり詰まっている。にもかかわらず、投げっぱなしになっていないのは、実質的なリーダーのリード・アンダーソンの手腕だろう。バッド・プラスにマジックが宿った一枚だ。

 そのアルバム・メンバーでバッド・プラスが来日公演を行う。バッド・プラス自体、来日は久しぶりだが、滅多に来日しないベン・モンダーやクリス・スピードが観られるのはかなり貴重だ。とくにベン・モンダーはマリア・シュナイダー・オーケストラでの来日以来だが、コンボで弾きまくる編成での来日はあまりにめずらしい。実は今回の来日はかなり希少な機会となる。これからもEdition所属アーティストは現代ジャズ好きなら見逃せないものになるはずだ。

BIMHUIS TV presents THE BAD PLUS


柳樂光隆(なぎら・みつたか)
1979年、島根県出雲市生まれ。音楽評論家。21世紀以降のジャズをまとめた世界初のジャズ本「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者。共著に鼎談集「100年のジャズを聴く」など。鎌倉FM「世界はジャズを求めてる」でラジオ・パーソナリティも務める。
★Edition Recordsのレーベル・オーナー Dave Stapletonのインタビューはnoteに掲載
https://note.com/elis_ragina/n/ndbb0f80918d8

LIVE INFORMATION

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THE BAD PLUS

2024 3.12 tue., 3.13 wed.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm

https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/the-bad-plus/

<MEMBER>
デヴィッド・キング(ドラムス)
リード・アンダーソン(ベース)
ベン・モンダー(ギター)
クリス・スピード(サックス)

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