【JAM vol.227】AVISHAI COHEN TRIO
text = Kazunori Harada
ジャズ界を牽引するベース・ヒーロー
アヴィシャイが最強のトリオで再来日
昨年6月、カナダのモントリオール・ジャズ祭が制定した名誉ある「第28回マイルス・デイヴィス・アワード」を受賞。多彩な音楽性、ボーダレスな活動でジャズ界を牽引するベース・ヒーロー、アヴィシャイ・コーエンが今年もオール・イスラエル人によるトリオを率いて来日する。
1970年、イスラエルのカブリ生まれ。9歳からピアノを始め、14歳の時に米国ミズーリ州セントルイスへ移住。チック・コリア率いるユニット"リターン・トゥ・フォーエヴァー"(ベーシストはスタンリー・クラーク)やジャコ・パストリアスのプレイに感銘を受け、エレクトリック・ベースの演奏に熱中した。92年1月に再渡米。ニューヨークのニュースクール大学在学中にダニーロ・ぺレス(4月23日から"チルドレン・オブ・ザ・ライト"の一員としてブルーノート東京に出演)のトリオで頭角を現し、97年にはチック・コリアの新ユニット"オリジン"に抜擢された。98年にはチックのレーベル"Stretch"から初めてのリーダー・アルバム『アダマ』を発表。のちにデヴィッド・ボウイの傑作『★』に貢献するジェイソン・リンドナーらと制作された、いまこそ再評価したい一枚だ。今世紀に入ると自身のレーベル"Razdaz Recordz"を設立。以降、このレーベルやブルーノート、ソニー、ナイーヴ等からコンスタントに新作を発表するいっぽう、大編成ストリングスとの共演(日本では2017年と2018年に実現)、エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュ監督のフランス映画『セラヴィ!』(原題:Le Sens de la fête)のサウンドトラック、英国の人気ポップス・グループ"テイク・ザット"の一員であるゲイリー・バーロウのヒット・アルバム『ミュージック・プレイド・バイ・ヒューマンズ』(2020年)への参加でも話題を集めてきたアヴィシャイ。2023年も前述「マイルス賞」受賞のほか、小曽根真とのユニット"The Amity Duet"の始動、ラテン・コンガ奏者アブラハム・ロドリゲスJr.とのコラボレーション作品『IROKO』の発表など、ますます精力的な活躍で喜ばせてくれた。
その鬼才ベーシストによる、"2024年度、日本における第一声"が、今回の公演である。過去、自身のトリオにシャイ・マエストロ、マーク・ジュリアナ、ニタイ・ハーシュコヴィッツ、エルチン・シリノフ、ノーム・ダヴィド、サム・バーシュ(ケンドリック・ラマー『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』やアンダーソン・パーク『マリブ』にも参加)など数々の才人を擁した慧眼の持ち主であるアヴィシャイだけに、現トリオの構成員であるガイ・モスコヴィッチ(ピアノ、96年生まれ)とロニ・カスピ(ドラムス、2000年生まれ)も、音色、フレージング、共演者が繰り出すプレイに対する反応の鋭さ、演奏中に放つ"華"、いずれも強力そのもの。自らのエレクトロ系プロジェクト"RONIPONI"ではポップに振り切った音作りを推進するロニが繰り広げる清新なジャズ・ドラミング、クラシック+アフリカ系アメリカ人音楽+イスラエル音楽の融合に心を砕くガイのピアノ・タッチと、骨太な音色で変幻自在なベース・ラインを紡ぐアヴィシャイによる"音の会話"には、いくら期待しても期待しすぎることはないと断言したい。しかもアヴィシャイは、ピチカート(指弾き)はもちろん、アルコ(弓弾き)からも驚嘆ものの美しさを放つのだ。
レパートリーはトリオの最新傑作『シフティング・サンズ』からのものが中心になると思われるが、当然ながら今回はそこに、ライヴ・パフォーマンスならではの興奮、そして「2024年のアトモスフィア」が加わる。つまり、途方もない音楽体験がオーディエンスを待ち構えているわけだ。また、この来日公演は、ブルーノート東京のほか、高崎芸術劇場 スタジオシアターでも開催される(4月20日"アヴィシャイ・バースデイ・セレブレーション・ショー 2024")。クラブとシアターの双方で、鬼才たちによる至芸を味わいつくそうではないか。
LIVE INFORMATION
AVISHAI COHEN TRIO
2024 4.13 sat., 4.14 sun., 4.15 mon., 4.16 tue.
4.13 sat., 4.14 sun.
[1st]Open3:30pm Start4:30pm [2nd]Open6:30pm Start7:30pm
4.15 mon., 4.16 tue.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/avishai-cohen/
<MEMBER>
アヴィシャイ・コーエン(ベース、ヴォーカル)
ガイ・モスコヴィッチ(ピアノ)
ロニ・カスピ(ドラムス)
4.20 sat.
【 群馬 】 高崎芸術劇場 / スタジオシアター
https://www.takasaki-foundation.or.jp/