【JAM vol.228】MELODY GARDOT
text = Kenichi Aono
自由かつ抑制の効いたアダルト・オリエンテッドな特別公演
メロディ・ガルドー&フィリップ・バーデン・パウエル
滋味豊かな歌声で世界を魅了するシンガー・ソングライターのメロディ・ガルドー。今回のブルーノート東京公演は、2022年のアルバム『オントレ・ウー・ドゥ』をともに作り上げたピアニストのフィリップ・バーデン・パウエルとのデュオによるステージだ。
同アルバムは「トニー・ベネットとビル・エヴァンスみたいに」と彼女がいうように(『Mikiki』2022年6月16日掲載インタビューより)、互いを信頼するふたりのアーティストにしか成しえない親密な空気を醸し出しながら、ふたつの才能が高い次元で共鳴する素晴らしい作品である。
メロディ・ガルドーはアメリカ・フィラデルフィア出身。16歳でアルバイトとしてピアノ・バーで演奏活動を開始するが19歳のとき自動車事故に遭い、1年間寝たきりとなってしまう。リハビリテーションの一環として医師に勧められた音楽セラピーを通して作曲を行うようになり、2005年にEP『SOME LESSONS: The Bedroom Sessions』を発表。この作品はタイトル通りベッドルームで自ら録音したものである。やがて地元フィラデルフィアを中心にライヴやフェスに出演するようになり、その魅力が人々に浸透しはじめた頃、ユニバーサルミュージックと契約。デビュー・アルバム『夜と朝の間で』(2006年にインディペンデントでリリースされ、2008年に〈Verve〉より再リリースされている)は米ビルボードのジャズ・チャートで2位、フランスでは1位を獲得し、メロディ・ガルドーの存在はワールドワイドに知られることとなった。続くセカンド・アルバム『マイ・オンリー・スリル』は世界で大ヒットを記録。2012年のセルフ・プロデュース作『アブセンス』で念願の全米ジャズ・チャート1位の栄冠に輝いた。
一方のフィリップ・バーデン・パウエルは20世紀ブラジル音楽を代表するギタリスト、作曲家のバーデン・パウエルを父に持つピアニスト、作曲家。パリを拠点とし、ソロ活動のほか、カルテット「LUDERE」、アルゼンチンのギタリスト、セシリア・サバラとのデュオなど実に幅広く活動している人物だ。もともとはクラシック・ピアノからスタートしている彼だが、ジャズ、ブラジリアン・フュージョンと作品のレンジも広い、現代のブラジル音楽シーンを牽引する存在である。
そんなふたりによる『オントレ・ウー・ドゥ』は大きく捉えればもちろんジャズだが、ブラジル音楽やシャンソンのムードも自然に感じられる作品。本公演でもその世界観を存分に表現してくれるだろう。自由かつ抑制の効いた、インティメイトでアダルト・オリエンテッドな1日限りの特別公演、足を運ばない理由がない。
RELEASE INFORMATION
メロディ・ガルドー&フィリップ・バーデン・パウエル『オントレ・ウー・ドゥ』
(ユニバーサル ミュージック)
LIVE INFORMATION
MELODY GARDOT & PHILIPPE POWELL
2024 5.30 thu.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/melody-gardot/
<MEMBER>
メロディ・ガルドー(ヴォーカル)
フィリップ・パウエル(ピアノ)