【JAM vol.229】DIANE BIRCH | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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【JAM vol.229】DIANE BIRCH

【JAM vol.229】DIANE BIRCH

text= Kenichi Aono

10年ぶりのアルバムも素晴らしかったダイアン・バーチ
ブルーノート東京にいよいよ初登場

 この4月、ダイアン・バーチの久しぶりのアルバム『フライング・オン・エイブラハム』が発売された。どのくらい久しぶりかといえば、セカンド・アルバムである前作『スピーク・ア・リトル・ラウダー』が2013年なので実に10年ほどのブランクを経ての新作ということになる(EPとして『NOUS』が2016年にリリースされている)。オアシスやブラック・クロウズとの仕事で知られるイギリスのギタリスト、プロデューサーのポール・ステイシーのプロデュースによりロンドンで録音されたこのアルバムは、オルタナ・カントリー、ロック、ソウル、ジャズといった音楽的要素が含まれてはいるものの、優れたシンガー・ソングライター作品という表現がもっとも適切なのではないだろうか。

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 教会説教師の娘としてアメリカ・ミシガン州に生まれたダイアン・バーチは、父の仕事からジンバブエ、南アフリカ共和国、オーストラリアのシドニーで幼少期を過ごし、10歳のときにアメリカに戻ってオレゴン州ポートランドで暮らすようになる。ちなみにピアノは7歳から始めたという。デビュー・アルバム『バイブル・ベルト』(2009)はタイトルに違わずソウル、リズム&ブルース、ニューオーリンズのセカンド・ラインなどアメリカ中西部から南東部----この一帯は聖書に重きをおくキリスト教徒が多いことから「バイブル・ベルト」と称される----を想起させる音楽要素を取り入れた作品。芯がありつつ澄みわたるその歌声から、キャロル・キングやカーリー・サイモンらを引き合いに出されていたが、ダイアン自身は子どもの頃に彼女たちの音楽を聴いていたわけではなかったという。ともあれこのアルバムは大きな話題を呼んだ。

 セカンド・アルバム『スピーク・ア・リトル・ラウダー』でより幅広い音楽性を提示し、セルフ・プロデュースによるEP『NOUS』ではほとんどの曲のミックスも手がけて自らの好みの音を突き詰めていったダイアンだったが、先に記したように『フライング・オン・エイブラハム』リリースまでは10年の歳月を要している。もともと多作というわけではないが、ファンにとって新作は相当待ち遠しかったにちがいない。しかしこのアルバム、待った甲斐があったと心から思える出来栄えではなかっただろうか。AORやソフト・ロック、ソウルといったアメリカ西海岸的音楽を紹介するドイツのサイト「WEST COAST SOUL」に掲載されたダイアンのインタビュー(Flying On Abraham - Interview with Diane Birch)によれば、それまでやってしまっていた自己判断や自己分析を本作では手放して、自分が好きなものを追い求めるようにしたのだという。なるほど、その結果、真の自分に近づいてゆくとでもいおうか、ジャンルやカテゴリーよりもダイアン・バーチのシグネチャーを感じさせる内容につながったのだろう。

 そんな最新アルバムを提げてのブルーノート東京公演は、ダイアンの歌とピアノに加えてギターにポール・ステイシー、ベースにニック・ピニ、ドラムスにジェレミー・ステイシーが登場。先のインタビューによれば、アルバム全体のサウンドの核はジェレミーのドラムス、ポールのベース(ポールはギターのほかベースやホーン・アレンジなども担当)とダイアンのキーボードによるライヴ・テイクということで、今回の公演でも最新作のグルーヴをしっかり表現してくれそうである。早くからプリンス、スティーヴィー・ワンダーらから賞賛されてきたダイアン。本公演で彼女の「今」を目撃しよう。

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RELEASE INFORMATION


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『フライング・オン・エイブラハム』
(Pヴァイン)

LIVE INFORMATION

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DIANE BIRCH

2024 7.9 tue., 7.10 wed., 7.11 thu.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/diane-birch/

<MEMBER>
ダイアン・バーチ(ピアノ、ヴォーカル)
ポール・ステイシー(ギター)
ニック・ピニ(ベース)
ジェレミー・ステイシー(ドラムス)

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