【JAM vol.230】Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2024
text= Kazunori Harada
国内屈指の音楽フェスティヴァルのひとつ、
「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN」が待望の復活。
会場を東京・有明アリーナに移し、
同フェス初となる2デイズ公演を開催する。
「Blue Note JAZZ FESTIVAL」は2011年にブルーノート・ニューヨークの主催で始まった、ジャズとその周辺の音楽にスポットを当てた一大"サウンド・ミュージアム"。その日本版である「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN」は2015年と2016年に横浜赤レンガ野外特設ステージで行われ、第1回にはパット・メセニー、ジェフ・ベック、ロバート・グラスパー、スナーキー・パピー、ハイエイタス・カイヨーテ、インコグニート等、第2回にはアース・ウインド&ファイアー、ジョージ・ベンソン、MISIA × 黒田卓也、マーカス・ミラー、アンドラ・デイ、ゴーゴー・ペンギン等が登場した。
来たる9月21日と22日に行われる「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2024」にも、前2回に匹敵する、あるいはそれ以上にポピュラリティと音楽性を兼ね備えた凄腕たちが集結する。初日のヘッドライナーは、キング・オブ・MC の異名をとるラッパー/リリシストのナズ。2020年から22年にかけてリリースされた、ステレオ感に富んだ音響も圧巻の『キングス・ディジーズ』3部作(その第1弾で生涯初のグラミー賞を受賞)で限りない才気と輝きの広がりを示した、文字通りのリアル・ジャイアントだ。昨年8月ニューヨーク「ヤンキー・スタジアム」で開催されたヒップホップ誕生50周年セレブレーション「Hip Hop 50 Live」に登場し、ローリン・ヒルと共演したことも記憶に新しいところだが、歴史的なファースト・アルバム『イルマティック』リリース30周年という記念すべき節目に、現在のナズを、日本にいながらにしてライヴで楽しめるのは、まさしく至高の喜びといっていい。"こんにちは"というフレーズも飛び出す「ジャパニーズ・ソウル・バー」(2023年作品『マジック3』に収録)は聴かせてくれるだろうか?
ナズが産声をあげる遥か前から第一線に立つリヴィング・レジェンドであるジョージ・クリントンも、半世紀もの歴史を持つパーラメント・ファンカデリック(私は"Pファンク軍団"と呼んできた)を率いて元気な姿を見せてくれるはずだ。この団体にはかつてブーツィ・コリンズ、バーニー・ウォーレル、エディ・ヘイゼルらが去来し、ジャズやフュージョンのファンにはデニス・チェンバース、ブラックバード・マクナイト、メイシオ・パーカーらが在籍したことを通じて親しまれているのではと思うが、今なお総帥クリントンは新たな才能に目を配り、活動の場を与え続けている。もう、あらゆるファンク・ピープルが彼の子供みたいなもの、今回も大会場をUNCUT FUNK(混じりけなしのファンク)で満たすに違いない。
しかもこの日は、日本を代表する人気者たちも圧巻のステージを届けてくれる。堂本剛によるクリエイティブプロジェクトである.ENDRECHERI.(エンドリケリー)は、Pファンクに感銘を受けて活動をスタートし、2018年の『HYBRID FUNK』から2023年の『Super funk market』まで5点のアルバムを発表。ほか音楽番組『ENDRECHERI MIX AND YOU』や、音楽フェス「ENDRECHERI MIX AND YOU FES FUNK&FUNK」等を通じて、わが国の幅広い層にファンクの魅力を伝えている。
MISIA & 黒田卓也 BANDは、8年ぶりの再登場。女性ソロ・アーティストとして日本初の5大ドームツアーを達成、デビューから現在までの観客動員数が累計300万人以上に及ぶMISIAと、モントリオール(カナダ)、ニューポート(アメリカ)、モントルー(スイス)など幾多のジャズ祭に登場するとともに、イベントのプロデュースやレーベルの設立などでも音楽界に刺激を与えているトランペッター・黒田のコンビネーションは、一層の成熟をもって、オーディエンスを魅惑の音世界へといざなってくれるはずだ。情感豊かな歌声と、深々としたトランペットやホーン・セクション(黒田は管楽器アレンジも天下一品だ)の響きが絡むとき、我々はまた新たなSOUL JAZZの扉を開けることになる。
ポジティヴな世界観と圧倒的な歌唱/演奏でコーチェラ、グラストンベリー、ボナルー等のフェスを沸かせ、「アメリカで最も素晴らしいライヴ・バンド」、「音楽界の希望の光」との称賛を受けてきた要注目のグループ、タンク・アンド・ザ・バンガスも、つめかけたオーディエンスの心を掴みきってしまうことだろう。the Stranger.com で「次代のローリン・ヒル」と形容された歌手/詩人、タリオナ "タンク" ボールを中心に2011年頃からルイジアナ州ニューオーリンズを拠点に本格的な活動を開始。ファンク、ソウル、ヒップホップ、ジャズ、ロック、スポークン・ワード等を融合させたサウンドで人気を集め、2019年にはロバート・グラスパーやアレックス・アイズレーを迎えたメジャー・デビュー作『グリーン・バルーン』を発表。ジェイコブ・コリアー、レイラ・ハサウェイ、クエストラヴ、ウェイン・ブレイディらを迎えた目下の最新アルバム『レッド・バルーン』ともども、グラミー賞にノミネートされた。ノラ・ジョーンズやトレイ・アナスタシオ(フィッシュ)もファンを公言するタンク・アンド・ザ・バンガス、徹底的に"フェス映え"する彼女らの最新ステージを心ゆくまで愉しみたい。
翌22日のヘッドライナーは、全世界で1億枚以上の CD/レコード売り上げを誇るスーパー・グループ、シカゴ(1969年にレコード・デビュー)が務める。ブラッド・スウェット&ティアーズ、チェイス、アイズ・オブ・マーチ、ライトハウス等、「ロック・ウィズ・ホーン・セクション」形式の辣腕バンドは彼ら以外にも少なからずいたものの、この中で解散とも再結成とも無縁のまま今に至っているのはシカゴだけではないか。しかもロバート・ラム、リー・ロックネイン、ジェイムズ・パンコウといったオリジナル・メンバーを含むラインナップで精力的な活動を続けているのだから、そのタフネスは筋金入りだ。「パワフルな管楽器の合奏を生かしたソリッドなナンバー」と「甘くとろけるようなスローバラード」を、これほどのハイレベルで両立させている楽団を私は他に知らない。「素直になれなくて」、「サタデイ・イン・ザ・パーク」、「長い夜」など数々のメガ・ヒットを持つ彼らが、今回はどんな名曲を届けてくれるのか、それを考えるだけで心が躍る。
40年以上もの間、ベーシスト/プロデューサーとして精力的な活動を続けるマーカス・ミラーは、8年ぶりの「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN」登場となる。いまでは取り組まないエレクトリック・ベーシストのほうが少ないであろう"スラップ奏法"を大いに広めたひとりであり、創造的なベース・ラインはソリストをいやがおうにも煽り立てる。私はセネガル、マリ、ブラジル等の音楽にも思いを馳せた2015年作品『アフロディジア』、および2018年作品『レイド・ブラック』の持つ「コク」に圧倒され、ますます彼に惹かれるようになった。若き日にウェルドン・アーヴィン、グローヴァー・ワシントンJr.、マイルス・デイヴィスら幾多の先輩ミュージシャンにフックアップされてきたマーカスが今、気鋭ミュージシャンたちと共に繰り広げる音作りは、聴く者を冒険の旅へといざなってくれること必至である。
「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN」第1回目でオーディエンスを沸かせたスナーキー・パピーも、実に嬉しいことに再登場を果たす。2015年当時はまだ「話題の新鋭グループ」的な印象が残っていたと記憶するが、いまや5度のグラミー賞に輝き(最初の受賞は2013年度)、米国の雑誌「ダウンビート」や「ジャズタイムズ」の批評家投票や読者投票でも首位常連の、現代ジャズ界の牽引役である。エクレクティック(折衷的)を地で行く、さまざまな要素をミックスしたサウンドの面白さ。コンボ(小編成のバンド)が持つ即興のスリルと、ラージ・アンサンブルならではの厚く精緻なハーモニーの共存。目下の最新アルバム『エンパイア・セントラル』で、彼らはまたベストを更新した、との声も高い。ベーシスト/音楽監督であるマイケル・リーグのディレクションのもと、どんな刺激的な音楽的瞬間が客席に届けられるのか、これはライヴ現場に赴いて体験するしかないだろう。
各バンドのメンバー等については、追ってアナウンスされる予定。とにもかくにも、これほどの顔ぶれが集まることは、音楽ファンにとっては「嬉しい事件」以外の何ものでもない。9月21日と22日の二日間は、雑事を追いやって、極上の演唱に浸りきりたい。
LIVE INFORMATION
Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2024
2024 9.21 sat., 9.22 sun.
https://bluenotejazzfestival.jp/
TICKETS発売中
全席指定
A席 : ¥15,000 (tax in)
S席 : ¥23,000 (tax in)
SS席 : ¥40,000 (tax in)
※アリーナ指定席、SS限定グッズ、専用入場口、専用トイレ、専用飲食販売、物販優先レーン
※SS限定グッズは公演当日会場でお渡しいたします。
VIP席 : ¥70,000 (tax in)
※アリーナセンターブロック指定席、VIP限定グッズ、専用ラウンジ、専用クローク、専用入場口、専用トイレ、専用飲食販売、物販優先レーン
※VIP 限定グッズは公演当日会場でお渡しいたします。
チケットに関して:クリエイティブマン 03-3499-6669
主催:Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN実行委員会
企画制作・運営:クリエイティブマン、ウドー音楽事務所、ブルーノート・ジャパン
- 約1か月間にわたって、ニューヨークの音楽ファンを魅了する"夏の風物詩"
Blue Note JAZZ FESTIVAL in NY - 今年のニューヨーク「Blue Note JAZZ FESTIVAL」は6月1日から7月4日にかけて、ブルーノート・ニューヨーク、ソニー・ホール、タウン・ホール、サマーステージ(セントラル・パーク)、ブルックリン・ボウルの5か所で開催。ウィントン・マルサリス、ユセフ・デイズ、アンドラ・デイ、ミシェル・カミロ、サン・ラー・アーケストラとヨ・ラ・テンゴの共演など、さまざまなプログラムで彩られている。また、8月30日と9月1日にはカリフォルニア州ナパで、ロバート・グラスパーをアーティスト・イン・レジデンスに迎えた「Blue Note JAZZ FESTIVAL presents The Black Radio Experience」公演が開催される予定だ。