1962年、ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。82年、ウィントン・マルサリスの後任としてアート・ブレイキー＆ジャズ・メッセンジャーズ（以下JM）に参加して注目を浴び、86年に入ると同僚のサックス奏者ドナルド・ハリソン（チーフ・アジュアーの叔父）と共に独立して、双頭バンドを結成。コンビ解消後は長くアコースティック・ジャズ系バンドを率いて活動していたが、2001年あたりから始まった"テレンス・ブランチャード・グループ"を経て、ここ十年ほどは「ジャズに馴染みのない若い世代をインスパイアしたい」、「クリエイティヴで面白く、かつダンサブルなものを作りたい」との思いのもと、エレクトリック楽器を効果的に導入した"E-コレクティブ"での活動に力を入れている。

　これまでテレンス関連のプロジェクトから巣立った/関与したメンバーを挙げると、エドワード・サイモン、リオーネル・ルエケ、アーロン・パークス、ロバート・グラスパー、デリック・ホッジ、エリック・ハーランド、ウォルター・スミス３世、ジョシュア・クランブリー、ファビアン・アルマザンなど、現代ジャズ界の相当な紳士録ができあがるほどだが、今回のラインナップも充実そのもの。2018年リリースのアルバム『Live』でも圧倒的なプレイを聴かせたチャールズ・アルトゥラ、デイヴィッド・ジンヤード・ジュニア、オスカー・シートンに、現代で最も多忙なジャズ系鍵盤奏者のひとりといっていいであろうテイラー・アイグスティが加わるのだから、嬉しいハプニング続出の演奏が楽しめるに違いない。チック・コリア最晩年のバンド"ヴィジル"に在籍したアルトゥラと、エリック・ハーランド"ヴォイジャー"やケンドリック・スコット"オラクル"の構成員であるアイグスティがどのように呼応しあうのか。"テレンス・ブランチャード・グループ"時代からエフェクターの使用にも妙味を発揮しているテレンスが、どんな未知のフレーズをオーディエンスにふりまくのか。聴きどころだらけの内容になることは約束されたも同然だ。

『マルコムＸ』や『ブラック・クランズマン』（スパイク・リー監督）や『キャデラック・レコード 音楽でアメリカを変えた人々の物語』など映画音楽界での活躍、"メトロポリタン・オペラ史上、初のアフリカ系アメリカ人作曲家"として書きおろした記念碑的な『Fire Shut Up in My Bones』（日本でもライヴビューイングされた）での快挙、非営利ジャズ教育機関「SFジャズ」のエグゼクティヴ・アーティスティック・ディレクターとしての活躍など、きわめて充実した活動を続けるテレンス。『Absence』ではJMの先輩にあたる（59～64年在籍）サックス奏者ウェイン・ショーターの、しかもJM脱退後に書かれた楽曲（マイルス・デイヴィスやウェザー・リポート名義のアルバムに収められたもの等）を注意深く再解釈し、そこに自身や関連メンバーのオリジナル曲を加えて、実にドラマティックにアルバムを構成していた。『Absence』から3年を経た今、さらに進化、発展しているであろうE-コレクティブとタートル・アイランド・カルテットのコラボレーションが日本で味わえる意義は大きい。

RELEASE INFORMATION

『Absence』
（ユニバーサル ミュージック）

LIVE INFORMATION

TERENCE BLANCHARD featuring the E-COLLECTIVE
with the Turtle Island Quartet

2024 9.4 wed.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm　[2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/terence-blanchard/

＜MEMBER＞

★E-コレクティブ：
テレンス・ブランチャード（トランペット、シンセサイザー）
チャールズ・アルトゥラ（ギター）
テイラー・アイグスティ（ピアノ、キーボード、シンセサイザー）
デイヴィッド・ジンヤード・ジュニア（ベース）
オスカー・シートン（ドラムス）

★タートル・アイランド・カルテット：
デヴィッド・バラクリシュナン（ヴァイオリン）
ガブリエル・テラッチアーノ（ヴァイオリン）
ベンジャミン・フォン・グーツァイト（ヴィオラ）
マルコム・パーソン（チェロ）

＜TOUR INFORMATION＞
9.2 mon., 9.3 tue. 【東京 丸の内】 コットンクラブ
https://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/terence-blanchard/