【スペシャル・インタビュー】大江千里 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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【スペシャル・インタビュー】大江千里

【スペシャル・インタビュー】大江千里

森山良子との出会い、成熟期を迎えた自身のトリオ
ますます多彩に進化する"Senri Jazz"の世界

Interview & Text = Kazunori Harada
Photo = Tsuneo Koga

 デビュー40周年を記念する数々のアニヴァーサリー・プロジェクトを完走した大江千里が来たる2025年、1年ぶりにブルーノート東京のステージに帰ってくる!

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 1月14日と15日は活動のマザーシップであるマット・クロージー、ロス・ペダーソンとのトリオで登場。そして16日は、1960年代から活動を続けるヴォーカリストの森山良子と共に、大江がプロデュースを手がけたオリジナル・ジャズ・アルバム『Life is Beautiful』(12月18日リリース)の世界をライヴで繰り広げる。どんなステージで楽しませてくれるのか、まずはトリオによる2デイズについて話をきいた。

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「今、このトリオは『第一成熟期』に突入していると思っています。強力なスケジュールの中で演奏活動やレコーディングを続けて、9月にはニューヨークのバードランドにも出演しました。場内は満員で、最後はスタンディング・オベーションが巻き起こりました。そして来年、ブルーノート東京に戻ってきて3デイズ公演を行なうことが決まり、バンドの意気はさらにあがっています。最高のセットリストを持って東京に帰って、お客さんとキャッチボールをしているような楽しいステージにしていきたいですね」

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 ベーシストのマット・クロージーはダーシー・ジェイムズ・アーギューのラージ・アンサンブル"シークレット・ソサエティ"やデイヴィッド・ワイス率いる"ポイント・オブ・ディパーチャー"などにも在籍経験のある中堅。ドラマーのロス・ペダーソンはメリッサ・アルダナとの共演やスナーキー・パピーのツアー参加でも知られる気鋭だ。このふたりに、大江千里は全幅の信頼を寄せている。

「センリ・オーエがリーダーでありつつ、ロス・ペダーソン、マット・クロージーの誰が欠けても、このサウンドはあり得ません。ピアノ・トリオだからピアノが少し前に出てはいるけれど、演奏上では全くひるむことなく、見せ場をお客さんと共有していく。そういうステージを僕たち3人は時間をかけてつくりあげてきました。マットは2019年のアルバム『Hmmm』からトリオに参加しています。ベーシストとして本当に脂が乗りきっていると思いますね。ロスに関しては、マンハッタン・トランスファーのジャニス・シーゲルやニューヨーク・ヴォイセズのローレン・キンハンが推薦してくれました。「ものすごくいいビートの持ち主だ」という話をきいて、一緒に演奏してみたら、素晴らしかった。彼は本当に真摯なドラマーです。3人でアイデアを持ち寄って、実行して、今はそれぞれのメンバーがブルーノート東京の公演を照準にしてトレーニングを続けているところです」

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2023 12.26 tue. 大江千里トリオ@Blue Note Tokyo
Live Photo by Takuo Sato

 そして1月16日には、ついに"森山良子 with 大江千里トリオ"によるステージが開催される。ニューヨークで録音されたコラボレーション作品『Life is Beautiful』のレパートリーが、東京にいながらにして味わえる貴重な機会だ。森山良子によるオリジナル・ジャズ・アルバム-----このアイデアは、どのようにして生まれたのだろう。

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「いちばん大きな理由は、僕自身が森山さんの "ジャズを歌いたい" という気持ちをかぎつけたことです。彼女は本当に小さい頃から、お父さん(トランペット奏者、歌手の森山久氏)を見て育ってきた。本当はジャズを歌いたかったんじゃないのかなと思っていたら、実際そうだったんです。そこで僕から〈ジャズを歌うことがあったら、ぜひ楽曲を提供させてください〉とプロポーズしたところ、秋元康さんプロデュースのラジオ番組でご一緒した時に〈お願いします〉という返事をいただき、1年以上かけて作品づくりに取り掛かりました。アルバムのテーマは "人生の集大成" です。〈年齢を重ねることは素敵な宝物なんだ〉ということを伝えられるような作品にしたいと思いました。最初に書いたのは "LOST AND FOUND"、その次は "TONIGHT'S SPECIAL" で、ここではあえて高めのソプラノのキーで歌っていただきました。このレコーディングのために森山さんは何度もニューヨークにジャズ留学をして、ローレン・キンハンのレッスンを受けています。〈ニューヨークに来て、こんなに素敵な人たちと一緒に時間を過ごすことができて、ジャズを歌うことができて、本当にありがとう〉と森山さんに言われたときには感無量でした」

「ブルーノート東京で演奏するときは、いつも特別な気持ちになる」とも語る。

「僕は"ブルーノート信者"なんです。オーディエンスとして、シンガーソングライターの伊勢正三さんと一緒にマイケル・フランクスを見に行ったことを昨日のことのように思い出します。そのとき同じテーブルについていた方が、〈今度は大江千里としてブルーノートに戻ってきてください〉とおっしゃったんです。その後、最初のジャズ・アルバム『boys mature slow』(2012年)を出した時にブルーノートに出演の打診をして、OKの返事がきたときからジャズ・ミュージシャンとしての僕が実質的に始まりました。そうしたこともあって、ここでの演奏には僕の原点の気持ちが盛り込まれています。ブルーノートはどの席もファースト・クラスです。客席とステージが一体になれるような、最高の3日間、6ステージにしますので、ぜひお越しください」

 ますます多彩に、ますます進化する"Senri Jazz"の最新型をライヴで味わいたい。

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LIVE INFORMATION

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大江千里トリオ
2025 1.14 tue., 1.15 wed.
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/senri-oe/

<MEMBER>
大江千里(ピアノ)
マット・クロージー(ベース)
ロス・ペダーソン(ドラムス)


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森山良子 with 大江千里トリオ
2025 1.16 thu.
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/ryoko-moriyama/

<MEMBER>
森山良子(ヴォーカル)
大江千里(ピアノ)
マット・クロージー(ベース)
ロス・ペダーソン(ドラムス)


原田 和典(はらだ・かずのり)
音楽ジャーナリスト。元「ジャズ批評」編集長、米ジャズ誌「ダウンビート」国際批評家投票メンバー。最新刊『モダン・ジャズ』(ミュージック・マガジン)発売中。

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