【特別企画】ヤン富田フリークインタビュー

Interview & text = Mai Nakata
Photography = Great The Kabukicho
ラブレター from カリフォルニア
ヤン富田ライブ見聞録
日本初のプロ・スティールパン奏者であり、日本初のヒップホップ・アルバムのプロデューサー。また日本初のアシッドハウスの創作者。前衛からポップ・ミュージックまで独自の世界を拡張し続けるヤン富田が、2025年4月17日、ブルーノート東京で7回目の公演を行う。ジャンルを超える音楽的特異性はもちろんだが、公演を重ねるにつれ、ミュージシャンを含む海外からの問い合わせ、実際に海外から公演に足を運ぶ人が増えているという点も非常に珍しいことだ。特に昨年の公演のために来日した2人の若者は、ヤン富田にとっても印象深いものだったという。そこで我々は、カリフォルニアボーイズへのインタビューを敢行。ヤン富田の魅力を存分に語ってもらった。
ーー 簡単な自己紹介をお願いします。
「私は(眼鏡をかけている方)ケイゲン・リーと申します。友人はクインティンという名前で、私たちはアメリカ・カリフォルニア州北部に住んでいます。そこはヒッピーのコミュニティで、サーフィンをしている人たちが多いエリアです。クインティンとは高校時代からの友人で、彼はサンプルベースの音楽やヒップホップが好きです。ヤンさんの音楽スタイルは、私たちが高校時代に最初に一緒に関わったものの一つで、だからこそ彼も一緒にショーに来てくれて本当に嬉しかったです。」
ーー 公演の感想を聞かせてください。特に驚いた点はありますか?
「会場はとても豪華でした!食べ物や飲み物、雰囲気すべてが素晴らしい体験を作り上げていました。私がヤンさんの音楽で好きな点は、物語性があり、音楽の中に会話やストーリーが織り交ぜられていることです。コンサートでもその点はしっかりと反映されていましたが、私と友人は日本語が理解できなかったので、その時はお互いに意味ありげな視線を交わし、共有している状況を楽しんでいました。帰国後、ヤンさんのブログでMC部分にスージー・キムさんによる英語字幕がついたムービーが公開され、ジョークの意味を理解することができたことも、とても嬉しかったです。全体的に、コンサートは単なる音楽以上のものでした。本当に楽しかったです。ヤンさんの作品について私たちが楽しむところをまさに体現していましたが、ショーの前後でお芝居に登場する機長(永井さん)と会えたことなど、同時に多くの驚きもありました。ヤンさんと写真を撮ることができたのも夢のようでしたし、他の人々が私たちの存在に興味を持ってくれて写真を一緒に撮ったりもしました!「ヤン富田マニア!」と言って私たちとセルフィーを撮った方がいて、その後Xでその写真を見かけました。会場を出た後はみんな興奮していて、ブルーノートから宿泊先のホテルに歩いている途中も、DOOPEESの帽子を被った他のファンと出会いました。」
ーー ヤン富田を知ったきっかけ、具体的な音源などがあればぜひ教えてください。
「ヤンさんの作品を最初に知ったのは、実は『FOREVER YANN: MUSIC MEME 3』でした。5~6年前にYouTubeでアルゴリズム的に提案された曲を聞いていた際に出会いました。それ以前からBuffalo DaughterやCornelius、Boredomsなどのバンドのファンだったので、その流れでHavana Exoticaなど他のアーティストも知り、最終的にDOOPEESやヤンさんの作品を見つけたんです。出会えて本当に良かったです!その数ヶ月後に、ヤンさんがCorneliusの曲のリミックスを手掛けていたことを知り、そのことが私の興味を確実に深めました。」
ーー ブルーノート東京でのコンサート情報は、ヤン富田のブログを見て知ったのでしょうか?日本への渡航の決め手になったトピックがあれば教えてください。
「確かヤンさんのXで、2月頃にその情報を見たと思います。まさに一生に一度のチャンスだと思って、絶対に行きたいと感じました。最初は一人で1週間の旅行を計画していましたが、クインティンが「一緒に来たい」と言ってくれて、結局2週間の旅行になり、東京と京都、静岡に行くことにしました。飛行機のチケットを購入する前にショーのチケットを購入していたので、実際旅行全体が、このショーに参加する必要性から逆算して計画されたようなものでした。」
ーー 日本滞在中は、ヤン富田のコンサート以外にどんなことを楽しみましたか?
「私たち二人にとって今までで最も遠い場所への旅行で、コンサート以外にも多くの面白い経験や初めての体験がありました。東京と京都の様々な興味深い博物館を訪れ、素晴らしい景色を見ましたが、寄生虫博物館だけ閉館日で行けなかったことが少し悔やまれます。京都ではハイキングをしたのですが、2人とも途中でスマホの充電が切れてしまいました。暗くなり周りから猿の声が聞こえるなど、まったく初めての体験で少し怖かったのですが、無事に下山できました。富士山にも登りたかったのですが、雪のため断念し富士山周辺の町を散策しました。日本では親切な人々に出会い、食べ物は驚くほど美味しかったです。僕たちがカリフォルニアから来たと知ると、必ず大谷翔平の話になりましたが、クインティンが「パドレスのファンだ」と言うと大抵そこで話は終わりました(笑)」
ーー ヤン富田は、あなたがコレクションブック『A.S.L. SPACE AGENCY』を含め、多数の作品を持参していたことにも大変驚いていました。それらはどのようにして入手したのでしょうか?
「私は物理的なメディアを集めるのが好きで、ヤンさんの作品はその制作に大変なこだわりが感じられ、アートワークも含めてその体験を一層引き立てています。『Music For Living Sound』には本当に圧倒されました。付属のCD-ROMにはまだアクセスできていませんが、その全てを見るために、古いバージョンのApple製品をノートパソコンで動かすよう努力しています。ヤンさんの作品はたまにアメリカのオンラインで販売されているのを見かけるのですが、価格があまりにも高くなければ購入しています。日本では『Music For Astro Age』をレコード店で見つけることができて良かったです。私のコレクションはまだ増えている途中ですが、いくつかの重要な作品はまだ手に入れられていません! 引き続き探し続けていて、もっと日本で見つけたかったなと思います。」
ーー 国際的な視点でヤン富田がどのような存在であるか、彼の日本以外での存在感についてどう思いますか?
「少なくとも私の地元のレコードショップでは、ヤンさんのディスコグラフィーは取り扱われていません。ですから、ヤンさんが作った(または関わった)音楽を少しずつ発見していく過程は、私がヤンさんの作品を体験する上で重要な部分でした。海外のSpotifyには『DOOPEE TIME』しかないので、ヤンさんがどれだけ多くの音楽を作り出してきたのかを発見する過程はとても楽しく、その発見の面白さは大きかったです。日本以外のオンラインにはヤンさんの作品を称賛するスペースがいくつもあり、私はたまにそれらのスペースに参加することもありますが、普段はヤンさんの音楽を一人で、またはクインティンなどの友達と楽しんでいます。そして、今でも毎週DOOPEESの帽子をかぶり、ヤンさんの音楽をほぼ毎日聴いています!このような機会をいただいて、本当にありがとう!! またいつか、あの日あの場所で会えますように。」
sabukaru.onlineではヤン富田さんへのインタビュー記事も公開中!
LIVE INFORMATION
YANN TOMITA
A.S.L. SHOWCASE 2025
2025 4.17 thu.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/yann-tomita/
<MEMBER>
ヤン富田
M.C. BOO
大野由美子
小川千果
小山田圭吾
金尾修治
COMPUMA
椎名謙介
スージー・キム
鈴木晴雄
高木完
DUB MASTER X
田村玄一
千葉隆史
永井秀二
ロボ宙
DOPE ON DOPE AND THE DOOPEES
ASTRO AGE STEEL ORCH.