【JAM vol.236】BEN WENDEL

text = Kazunori Harada
現代ジャズ・シーンを牽引する才人サックス奏者が
選りすぐりのメンバーと共に圧巻の3デイズを披露
サックス奏者、インプロヴァイザー、作曲家、オーケストレイター、プロデューサー、そのすべての分野で才能をほとばしらせてやまない存在がベン・ウェンデルだ。デイデラス、スヌープ・ドッグ、プリンス、ティグラン・ハマシアン、ルイス・コール、アントニオ・サンチェス、リンダ・メイ・ハン・オー、ジェラルド・クレイトンなど共演者を挙げていくだけでも、いかに彼の周りでさまざまな音楽が面白く躍動しているかが実感できる。
カナダのバンクーバー出身、現在は米国ニューヨークに拠点をおいている。2001年にネイト・ウッドらと"ニーボディ"を結成して頭角を現し、アダム・ルドルフ(ユセフ・ラティーフの薫陶を受けた打楽器奏者)率いるゴー・オーガニック・オーケストラにも参加。ニーボディは05年に同名のデビュー・アルバムを、デイヴ・ダグラス(ホレス・シルヴァーやジョン・ゾーンと共演したトランペット奏者)主宰のレーベル"グリーンリーフ"から発表しており、このあたりから日本でも少しずつニーボディやウェンデルの名が話題になってきたと筆者は記憶している。09年に初リーダー・アルバム『Simple Song』を出し、15年に 入ると「THE SEASONS PROJECT」と題するデュオ動画シリーズを毎月配信。ストリーミング・プロジェクトにも関わらず、同年度のニューヨーク・タイムズ紙「最優秀アルバム部門」に選出されるなど異例の評価を得た。18年リリースの『The Seasons』は、そこで演奏されていた楽曲を、新たに5人編成のバンドでレコーディングした作品だ。以降も『High Heart』、『All One』など趣向に富んだリリースを続け、昨年秋はライヴ盤『Understory: Live at the Village Vanguard』を発表。今回の来日は、この最新作を携えてのものとなる。
同行メンバーはテイラー・アイグスティ(ピアノ)、ハリシュ・ラガヴァン(ベース)、ジャスティン・フォークナー(ドラムス)。『Understory』とはまた異なる、しかし屈指であることに変わりはない顔ぶれだ。とくにウェンデルとは約20年間にわたって共演を続け、互いのバンドへの参加のほか、ケンドリック・スコットのユニット"オラクル"でも顔を合わせたことのあるアイグスティの参加はカルテットの聴きどころを極限まで引き上げる、と断言したい。最新アルバム『Plot Armor』がグラミー賞「最優秀コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム」を得たばかりという、絶好の時期での来日でもある。ラガヴァンは前回のウェンデル公演にも同行し、ほか、アンブローズ・アキンムシーレ、ジョエル・ロスらのバンドでも圧巻のプレイを繰り広げてきた奏者。フォークナーは18歳の時から約15年間にわたってブランフォード・マルサリス・カルテットのレギュラー・ドラマーを務める若き名手で、ブルーノート東京には、おそらく2010年のブランフォード公演以来の登場となるはずだ。ウェンデルやアイグスティとは既にギター奏者オイヴィン・ニューパンのアルバム『Big City』で顔を合わせており、今回も絶妙なコンビネーションを形成しつつ、ソリストを徹頭徹尾、鼓舞することであろう。
カリスマ・サックス奏者が選りすぐりのメンバーと共に提示する現在進行形ジャズの世界。昨年の公演以上のセンセーションを巻き起こす3デイズとなりそうだ。
LIVE INFORMATION
BEN WENDEL
2025 6.14 sat., 6.15 sun., 6.16 mon.
6.14 sat., 6.15 sun.
[1st]Open3:30pm Start4:30pm [2nd]Open6:30pm Start7:30pm
6.16 mon.
[1st]Open5:00pm Start6:00pm [2nd]Open7:45pm Start8:30pm
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/ben-wendel/
<MEMBER>
ベン・ウェンデル(サックス)
テイラー・アイグスティ(ピアノ)
ハリシュ・ラガヴァン(ベース)
ジャスティン・フォークナー(ドラムス)