松本孝弘 公演直前スペシャルインタビュー
Tak Matsumoto "New Horizon"
それぞれの日常のサウンドトラックでありたい
B'zのギタリストの松本孝弘というよりもTak Matsumotoと説明する方がしっくり来るというジャズ・ファンも 増えているだろう。ラリー・カールトンとの共演アルバム『TAKE YOUR PICK』でグラミー賞を受賞。 そのラリーと回って以来、4年ぶりとなるツアーもまもなく始まる。新作『New Horizon』とツアーについて聞いていく。
Tak Matsumotoの最新アルバム『New Horizon』はタイトルどおり、新境地を切り拓いた作品となった。ジャズ、フュージョンなどのテイストも感じ取れるが、細かな分類は意味がなさそうだ。みずみずしくて気持ちいい音楽が展開されている。
「新たなグラウンドに踏み込んでいこうという気持ちはありました。ただし、ジャズ・プレイヤーを目指そうとは思ってはいなくて。僕はジャズは全然詳しくないんですが、最近、こういう音楽は奥が深くていいなあと思うようになってきて、よく聴いているんですよ。今自分がやりたいものを自然に創ったら、こうなったというか。ロックやポップスを創る時と違って、コード進行もひとひねりしたくなった。その上でギターを弾くのは新たなチャレンジでもあるので、楽しかったですね」
地平線に光が満ちていく光景までもが見えてきそうな「New Horizon」、エモーションが渦巻く演奏が圧巻の「Rain」から、ボサノヴァ風味も加わった「Take 5」、故・桑名正博の名曲「月のあかり」などのカバー曲まで、充実の12曲。豊潤でみずみずしいギター・サウンドも見事だ。
「全体的にギターはクリーン・トーン中心になりましたね。別に意識したわけではないんだけど、そういう音色を求める曲が多かったのかなと。でもギターの細かいところよりも純粋に音楽としていいなあと思ってくれたら。それぞれの人の日常のサウンドトラックであれたらうれしいですね」
ラリー・カールトンと一緒に作品を創り、ツアーを回った経験は大きかったと彼は語っている。
「面と向かって教わったことはそんなにないんですが、一緒にステージに立った時に感じることはたくさんあって、同じ曲、同じコードをやってるのに僕とは違うアプローチをしていく。どうしてこんな素敵なプレイが出来るんだろうって。プレイヤーとしても懐が深いし、人間としても温かくて、大きい。本当に貴重な時間でした」
ブルーノート東京でのライヴはそのラリーとともに回ったツアー以来、4年ぶりということで、こんな印象を持っている。
「こんなに近くにお客さんがいる会場でやったことがなかったので、不安もあったんですが、実際にやってみたら、今まで知らなかった楽しさを感じた。ラリーさんのファンがたくさん観に来られていて、最初は"Tak Matsumotoって誰だよ?"って感じだったんですが、演奏するうちに、"いいね、君"って受け入れてくれたのがわかったんですよ。ダイレクトに楽しんでくれているのが伝わってきたので、良かったなと思いました」
彼自身、ジャズクラブに観客として観に行くことも結構あるのだという。
「ブルーノート東京で初めて観たのは15年前のラリー・カールトンさんとスティーヴ・ルカサーさんのステージ。当時は知り合う前で、将来、ラリーさんと一緒に演るとは夢にも思わず(笑)。素晴らしいステージを観ることが出来て幸せでした。後日、お二人にうかがったんですが、電話で曲の打ち合わせをしただけで、あとは当日のリハだけだったという。さすがですね。今年の2月にLAでロベン・フォードさんのライヴを観に行ったんですが、素晴らしかった。こっちが落ち込むくらいうまい。観てて、がっくりきちゃう(笑)」
今回のメンバーはドラムがジョン・フェラーロ、ベースがラリー・カールトンの息子であるトラヴィス・カールトン、さらにギターが大賀好修、キーボードが小野塚晃というメンバー。
「ジョン・フェラーロさんは『TAKE YOUR PICK』のツアーも一緒に回ったんですが、素晴らしいドラマーだし、人間的にも温かい。トラヴィスはライヴを観て、その時からいいベーシストだなあ、いずれ一緒にと思っていたので、ラリーさんに聞きました。"息子さん、誘っていい?"って(笑)。僕のギターだけじゃなくて、それぞれのメンバーの演奏、メロディを目をつぶったりして、じっくり聴いていただけるステージにしたい。純粋に音を楽しんでいただけたらと思っています」
interview & text = Makoto Hasegawa
- 松本孝弘(まつもとたかひろ)
- 大阪府生まれ。B'z結成以前より多くのセッションやツアーへ参加。ソロではベースであるブルースやロックのインスト作品を発表する。ラリー・カールトンとの『TAKE YOUR PICK』でグラミー賞を受賞。
- 長谷川誠(はせがわまこと)
- 音楽ライター。札幌市出身。雑誌、書籍、webなどで執筆中。著書は『WITH THEE MICHELLE GUN ELEPHANT』(ぴあ)、『PRINCESS PRINCESS DIAMONDS』(シンコーミュージック)など。
「New Horizon」
(バーミリオンレコード)
"New Horizon"公演限定スペシャルメニュー
松本さんのお好みをブルーノート東京がアレンジしました。
ガレット"New Horizon" ¥1,782
松本さんの好きな"お好み焼き"をアレンジ。お酒や食に関してもこだわりが強い松本さんからリクエストをいただきました。ライヴ前も食を通じてその世界観を味わいたい。
カクテル "Island of peace" ¥1,485
[柚子のピールを漬けたウォッカ/柚子、唐辛子、胡椒のシロップ/レモン/ソーダ]
新作のナンバーがイメージのカクテル。松本さんが好きなソーダ割りは柚子のピールを漬け込んだウォッカベース。爽やかで刺激的な一杯。
2011 ピノグリ−ジョ アテムス
Glass ¥1,485/Decanter ¥3,445
Bottle ¥5,940
イタリア、フリウリ ヴェネツィア ジュリア
ピノ グリージョ
最近の松本さんのお気に入りはイタリアワイン、ピノグリージョ。ハーブの香りが特徴的。すっきりとした酸がバランスよく引き締めます。