50年超のキャリアを誇るジョイスが語る、自身のルーツ
コパカバーナから東京へ。
自身のルーツを歌う2014年のジョイス
今年も夏のブルーノート東京のステージに立つジョイスの新作は、彼女の初録音から50年を記念した名曲集『ハイス~私のルーツ~』。3月にリオの自宅を訪れて、50年前の思い出と新作について語ってもらった。
現在、ブラジルではジョイス・モレーノの名前で活動しているジョイスのニューアルバム『RAIZ』の意味はズバリ、ルーツ。1曲目は彼女が生まれ育ったリオのビーチエリア、コパカバーナを描いた往年の名曲「コパカバーナ」で始まる。
「50年前のリオは、今よりもずっと静かで落ち着いていて安全で、まさに楽園でした。私の家の近所には、ブラジル音楽を代表する作曲家のドリヴァル・カイミや詩人のカルロス・ドゥルモン・ヂ・アンドラーヂも住んでいて、とても魅力的なエリアでした。10代の頃の私は、友人たちと一緒にビーチに行ってギターを弾く、そんな日々を送っていました。とても素敵な思い出でした。現代のリオは昔とは大きく変わり、直さなければいけない問題もたくさんあります。それでも世界中を旅して帰ってくると、リオ以上に美しく魅力的な町はないと実感します。私は一度もリオ以外に住もうと思ったことはありません」
ジョイスは1968年、20歳でファースト・アルバムを発表してプロの音楽家となったが、その4年前、16歳のときに初録音を経験している。それからちょうど50年を迎える今年、『ハイス~私のルーツ~』を録音した。
「50年前の私はまだプロではありませんでしたが、初めてのレコーディングはとても大きな体験でした。『ハイス~私のルーツ~』は当時、16歳の私が聴いていたボサノヴァの楽曲を新たに録音したアルバムです。その中の2曲に、50年前の初録音に私を呼んでくれたプロデューサーのホベルト・メネスカルを迎えてギターを演奏してもらいました」
"私のルーツ" を歌ってはいても、そこはつねに前向きなジョイス。内容は決して懐古趣味ではなく、自ら演奏するギターのリズムとハーモニーを通じて昔の名曲に現代の感覚を反映している。たとえばかつての隣人でもあったドリヴァル・カイミ(今年で生誕100周年)の名曲メドレーは、ジョイスのオリジナル曲のようにすら響いてくる。
公私共に最愛のパートナーであるトゥチ・モレーノ(ドラムス)をはじめ、息の合ったミュージシャンたちとのバンドで行なう今回のライヴでは、ジョイスの手(声)によって新たな服を着たボサノヴァの名曲を満喫できることだろう。
interview & text = Jin Nakahara
cooperation = 駐日ブラジル大使館
- JOYCE(ジョイス)
- リオ・デジャネイロ生まれ。68年に初リーダー作『Joyce』を発表。名歌手エリス・レジーナに書いた「或る女」(79年)の大ヒットなど、ブラジルを代表するシンガー&ソングライター。
- 中原 仁(なかはら・じん)
- J-WAVEの人気長寿番組「SAUDE! SAUDADE...」の選曲/制作、ブラジル音楽を中心にCDやライヴ/イヴェントのプロデュース、コンピレーションCDの選曲を行なう他、ライター、DJ、MCとしても活動。
(上)
『ハイス 〜私のルーツ〜』
(オーマガトキ)※2014 6.11wed.発売
(下)
『ジョイスフル〜ジョイス・モレーノ・ベスト』
(オーマガトキ)※2014 7.9wed.発売