1976年、PHJBが魅せた伝説のライヴ | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

News & Features

1976年、PHJBが魅せた伝説のライヴ

1976年、PHJBが魅せた伝説のライヴ

「音の塊が襲いかかる」
他に類を見ない迫力に圧倒された日

 ジャズの聖地=ニューオリンズを代表するジャズ・バンド=プリザヴェーション・ホール・ジャズ・バンド(以下PHJB)が、今回ブルーノート東京へ、実に久方ぶりの来日を果たす。彼らの1976年の伝説のコンサートに衝撃を受け、今なおその当夜の熱気を昨日の出来事のように記憶している筆者にとっては、実に感慨深いものがある。

READ MORE

 当時早稲田大学のサークル、ニューオルリンズ・ジャズ・クラブに所属していた私達は、1940年代のニューオリンズ・ジャズ・リヴァィヴァルの立役者となったバンク・ジョンソンやジョージ・ルイス等のレコードを中心に、それを言わば教科書として日夜聞き漁ると同時に、そのレコードの溝に刻まれた音を採譜し、演奏していた。学業は二の次でバンド演奏に明け暮れていた大学3年の時に「アメリカ建国200年記念、ニューオリンズ・ジャズ・フェステイヴァル」と題されたコンサートが企画され、かつてのジョージ・ルイス・バンドのトランペッター=キッド・トーマス率いるPHJBの来日が決定したのである。我々にとっては生のニューオリンズ・ジャズを聴ける初めての機会とあって、サークルの多くの友人達と芝の郵便貯金ホールに駆け付けた事はいうまでもなかった。

jkt
(上)当日のコンサート・チケット。東京公演はこの5月10日の芝郵便貯金会館と新宿厚生年金会館での2回。大阪、名古屋にも回った。S席で2800円。(下段左)この時のライヴを収録した貴重なDELTA盤。「KID THOMAS in JAPAN, 1976 Third Visit with Paul Barnes」(Delta-1009)というタイトルになっている。(下段右) 最新作「That's It」の前作にあたるカーネギーホールでのライヴ盤。こちらはほぼ全編ニューオリンズ・ジャズ・スタンダード収録。

キッドにとってはこれがジョージとの初来日以来の3度目の来日となったが、メンバーには、これまたジョージとの共演も多い名手=エマニュエル・セイルスやポール・バーンズといった古豪が勢揃い。満席の聴衆を前に1曲目の確か「パナマ」が始まった瞬間の感動は生涯忘れられない。レコードで慣れ親しんだあの黒い音の塊が襲いかかってきたのである。特に4管編成によるパワフルで力強いアンサンブルによって生み出される圧倒的な迫力は、他に全く類を見ないものであった。

あれから38年。ニューオリンズはカトリーナの悲劇を体験し、PHJBもバンド・メンバーやスタイルは変えたものの、あのニューオリンズという街が生んだ独特の空気を間違いなく運んできてくれるであろう。今からとても楽しみである。

text = Hiroshi Aono

RECOMMENDATION