メンバーも凄腕が揃う、渡辺貞夫、公演直前インタビュー | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

News & Features

メンバーも凄腕が揃う、渡辺貞夫、公演直前インタビュー

メンバーも凄腕が揃う、渡辺貞夫、公演直前インタビュー

もっとも影響を受けた一人、チャーリーに捧ぐ。
チャレンジのしがいがあります

 "世界の、渡辺貞夫"の今度のブルーノート東京公演は、チャーリー・マリアーノと交遊を持ったヨーロッパ在住の熟達プレイヤーを迎える。そんな今回の出し物は、ずばり<Tribute toチャーリー・マリアーノ>。相変わらず多忙にしてトピックが山積みの貞夫さんに、7月のパフォーマンスの要点を問う。

READ MORE

 この6月中旬に<名誉県民>として、栃木県から表彰。そして、下旬には米国に飛び、イエロージャケッツのラッセル・フェランテ(ピアノ)らとのカルテットでNYやボストンで公演。また、それに先立ち、DCジャズ・フェスティヴァル(DC Jazz Festival, JUNE 24-29/Washington, DC)からジャズや教育に貢献した人物に贈られる"ライフタイム・アチーヴメント・アワード"(故ハンク・ジョーンズ、ロン・カーターなど、過去11人の米国人が受賞している)を授かり、首都ワシントンDCの日本大使館で祝賀ライヴが持たれることにもなっている。そして、帰国後は欧州勢とともに、ブルーノート東京に出演する。

ーー毎年恒例の初夏の公演ですが、今年は<Tribute toチャーリー・マリアーノ>と題されてますね。

「プレイヤーとして、僕がもっとも影響を受けているのがチャーリーなんです。二人とも(チャーリー・)パーカーに一番感化されているんですが、年長の彼にはほんと憧れましたね。1960年代に2度ほど、彼は僕の(東京の)家にしばらく滞在したこともあるんですよ。一緒に日本をツアーし、ステージに立った関係でもあるわけです。僕は彼の人間性とか、彼のミュージカル・センスとか、そういうのも大好き。1960年代後半に一緒に仕事をした頃、チャーリーはインド音楽に傾倒してもいました。1970年代のいつごろかドイツに引っ越すのですが、ボヘミアンな彼は晩年も1年のうち半年はインドに行っていたみたいです。友達もたくさんいて、そちらで生活していた。そんな彼は日本にいたときも、日本の音楽に影響を受けた曲を書いていましたね。そういうのを聞くと、日本に対する深い愛情も理解できます」

ーー彼について、他にも何か面白いエピソードがあったりしますでしょうか。

「僕は、彼から麻雀と花札を教わりました(笑)。(かつて彼が結婚していた)秋吉敏子さんから教わったんじゃないかなあ、彼はちゃんと知っていた。チャーリーはそういうゲームが大好きなんです。そういえば、好奇心おう盛な彼の作曲の感性というのは、僕も欲しいなと思うところでありましたね。チャーリーの曲を聞いては、いいなあ僕もそういうふうに曲を書けたらと、思っていました」

ーーチャーリー・マリアーノは2009年に85歳でお亡くなりになりましたが、2005年には彼を招いてオーチャードホールでコンサートを行い、ライヴ・アルバムにもなっています。

「ええ、ボブ・ディーゲン(ピアノ)とディーター・イルク(ベース)は、そのときの奏者です。今回のミュージシャンを考えていて、まず思い浮かんだのがボブでした。彼は素晴らしいピアニストなんですが、実は僕がバークリー音楽院に行っていた時代に何度もライヴで共演した仲間でもあるんですよ」

member
(写真上)渡辺貞夫とチャーリー・マリアーノ/(下段左から)ボブ・ディーゲン(ピアノ)、ディーター・イルク(ベース)、モーテン・ルンド(ドラムス)

ーーチャーリー・マリアーノとも、ボブ・ディーゲンは長い付き合いを持っているんですよね。

「そうですね。僕よりは10歳ぐらいは若いんですけどね。僕がバークリーに行ったのは29歳で、そのとき彼はティーンエイジャーだったと思うから。ボブは派手なプレイヤーではないですが、とってもリリカル。ベースのディーターは前回チャーリーの紹介で同じステージに立ち、ミュージシャンシップが高いと感じました。音もいいし、チャーリーともレコードを何枚も作っている好プレイヤーです」

ーードラマーのモーテン・ルンドはデンマーク人のようですね。

「彼とは、今回初めてになります。ボブとディーターが推薦してくれたドラマーです。これを機に、またヨーロッパ・ツアーも出来るといいんですけどね。いつもはNYの元気のいい若い連中と共演することで刺激を受けたいと思っていますが、ボブとディーターは大ヴェテランですので、僕の望む事をすぐに察し、同じ思いを奏でてくれると期待しています」

ーー貞夫さんのジャズをじっくりと聞きたいという聞き手には、今回の3人は歓迎される奏者ではないかと思います。

「そうですね。彼らは素晴らしいプレイヤーです。僕のルーツはビ・バップでありブルースなんですが、今回はブルースから少し離れたビ・バップになるんじゃないかとも思います。そのあたり、僕もチャレンジのしがいがあるんじゃないかな。そして、そうしたなかで、僕の"歌"をしっかりと歌えたらいいなと思っています」

ーー当然、今回はチャーリー・マリアーノの曲もいろいろ取り上げるわけですね。

「そうですね。チャーリーの曲をクローズアップさせようかと思っています。僕のアルバムでもチャーリーの曲を取り上げていますし、今でもライヴで演奏している彼の曲もありますし。また、僕がチャーリーに捧げた曲もある。なんとディーターは、チャーリーが書いた(未発表の)曲を持っているそうなんです。僕の知らないチャーリーの曲があるのだったら、それもトライしてみたいなと楽しみにしています」

佐藤英輔
音楽評論家。5月に見た、ディー・ディー・ブリッジウォーターのライヴには悶絶。ジャズとかR&Bとか区分不能の、米国黒人音楽としての掛け替えのない凄さと冴えが溢れまくり。ライヴ・ブログは、http://43142.diarynote.jp

RECOMMENDATION