チャカ・カーン、公演直前スペシャルインタビュー | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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チャカ・カーン、公演直前スペシャルインタビュー

チャカ・カーン、公演直前スペシャルインタビュー

チャカ・カーン~私は自分が大好きなこと、
歌うことをステージでしているからハッピー

今週から(2014年9月3日、9日、10日)いよいよブルーノート東京のステージに、1992年以来なんと22年ぶりに「クイーン・オブ・ソウル」チャカ・カーンが戻ってくる。そのチャカを来日直前、「キュラソー・ノース・シー・ジャズ・フェスティヴァル」のためにカリブ海に浮かぶスペイン領キュラソー島に滞在中、電話でキャッチし、ブルーノートでのライヴについて意気込みを聞いた。

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ジャズ。

リゾート・ホテルに滞在していたチャカに電話をいれインタヴューの旨を伝えると、「わお、すっかり忘れていたわ。ごめんなさい、ちょっと待って」と言って友人と話をしていた別の電話を切って、こちらと話をしてくれた。
まずは22年ぶりのブルーノート登場について。

「あら、そんなになるの。日本にはたくさん行ってるから。でも、(ブルーノートは)ジャズ・クラブでしょう。ブルーノートのスピリット(魂)はよくわかっているつもり。だから、(そこで)私が大好きなジャズをたくさん歌う機会を与えてもらえて嬉しい。私がもっとも愛している音楽、ジャズをやることになるわ。ブルーノートではジャズとコンテポラリー(R&B的なもの)になるでしょうね。だから、セットリストはこれまでのライヴハウスのものとも大きなフェスティヴァルのものとも違うものになるはずよ。でも、私は私が歌いたいものを歌うということには変わりないわね。(笑) 私はジャズを歌えるととてもハッピーなのよ。意外とそういう機会があまりないのよ」

ではチャカにとってジャズとは?

「ジャズは私にとって基本、ファンダメンタルズなのよ。父がビバップのジャズ・ミュージシャンで、母もサラ(・ヴォーン)、エラ(・フィッツジェラルド)、ビリー(・ホリデイ)が大好きで子供の頃から家ではそんな音楽ばかり接していた。特に私はマイルス・デイヴィス、チャーリー・パーカーといったトランペットやサックスなどのホーン奏者と親から聴かされたジャズ・シンガーで育った。それから大きくなって、いろいろなタイプの音楽に興味を持つようになった。最初に買ったアルバムはレッド・ゼッペリンのファースト・アルバムよ。(笑)(全米で1969年1月リリース) 私はまだハイスクールだったけど、いわば、音楽に関してはけっこうマルチ・ジャンルだった。あのころは髪の毛をブロンドに染めて黒いリップを塗ってパンク・ロックみたいなこともやっていて、周りの友人が『君はロックが好きなんだろう』って勧めてくれたのよ。1960年代終わりの頃だった。2枚目に買ったアルバムはユセフ・ラティーフ(ジャズのサックス、フルート奏者)のアルバムだった。私はただ『グッド・ミュージック』が好きなだけ」

メンテナンス。

さらにチャカは続ける。意外なことに幼少期にチャカはカソリックだったために、教会でゴスペルを歌ってこなかった。

「ゴスペルを聴き始めたのは30年くらい前かしら。以来よく聞くようになった。だから、私の中には今ではもちろんゴスペルの要素もあるでしょうね。私の体内にはあらゆるタイプの音楽が少しずつ入っているわ」
 
デビュー当時からのあの迫力はゴスペルで鍛えた喉だろうと思ったが、意外や意外なのだ。ではあの声の強さの秘訣、低いところから高いところまでよく出るその声。それはどのようにメンテナンスをしているのだろうか。

「今は私は自分のフィジカル(体)のことを真剣に考えている。声がよくなったのは、ドラッグを何年も前に止めたことが一番大きいと思うわ。タバコ? すごく軽いのを吸うけど、昔ほどは吸わない。それに、今は、毎日続けて歌うことをしないようにしている。以前ほど無理をしないの。つまり、ちゃんと喉を休ませないといけないということをよく理解している。なにしろ、喉は筋肉だから」

新作。

現在チャカはレコーディング企画もいくつか進んでいるようだ。噂がでていたロバート・グラスパーとの共演などについてこう語る。

「ああ、そうそう、ブルーノートのアーティストたちとやる話があるわ。まだレコーディングまで進んでない。一方、10月から私のアルバムを作ろうとしている。私自身がプロデューサーだけど、いろんな曲でそれを書いた人が実質的に一緒にプロデュースしてくれるはず。タイトルは『アイコン』、スペルは、Ikhanよ。(笑) クリスマス・ソングをアンソニー・ハミルトンとのデュエットで2週間ほど前に録音した。アルバム自体の正確な発売日はまだ決まっていないけれど。それからイギリスのレーベルでの話なんだけど、ジョニ・ミッチェルの曲ばかりを歌う『ジョニ・ミッチェル・トリビュート』の企画が進んでいる。ジョニ・ミッチェルとは古い友達なのよ。あまりみんなには知られてないかもしれないけれど、彼女は私にとってみればファンキーで、ジャジーなのよ。(笑) そして彼女は本当に、この地球上でもっともすばらしい詩人だと思う。」

チャカが歌うジョニ・ミッチェルの歌集。これはこれは楽しみだ。

ハッピー。

このところのチャカ・カーンのパフォーマンスは、かつての一時期と比べて、ステージでいつもハッピーに見える。

「もちろん、私は大好きなことをやっているんだから、とてもハッピーなのよ。自分の好きなことをして生活ができる人ってどれくらいいる? 多くはないでしょう。でも、私はラッキーなことに大好きな歌を歌って生活ができる。だからステージで歌っているととてもハッピーになれるのよ」

最後に東京ジャズに登場するラインアップを彼女に伝えたら、高中も、ベイビーフェイスも、クリスチャン・マクブライドも、ハービー・ハンコックらにも会うのがすごく楽しみだと興奮気味に話した。ちょうど、また別の電話がなり、「次のインタヴューを受けないと」と言って電話を切った。電話の向こうのチャカはものすごく元気でハッピーそうに聞こえた。ボディー(体調)もソウル(魂)も絶好調で来日を果たしそうだ。

interview & text = Masaharu Yoshioka(8.30 2014)



吉岡正晴(よしおか・まさはる)

音楽評論家、DJ。ソウル・ミュージックの過去現在未来をわかりやすく紹介する「ソウル・サーチン・ブログ」(毎日更新)、イヴェントなどを運営。著書に『ソウル・サーチン~R&Bの心を求めて』、翻訳書に『マーヴィン・ゲイ物語』など。


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