グラミー賞受賞バンド、スナーキー・パピーの魅力に迫る!
最強のミクスチャー・フュージョン・バンド、
スナーキー・パピーが新作『We Like It Here』と共に再来日
昨年5月に本邦初上陸したスナーキー・パピーが、来る10月15日、16日に待望の再来日公演を行う。テキサス出身のマイケル・リーグ(ベース、キーボード)を中心とするスナーキー・パピーは、ジャズを軸にロック、ファンク、ソウル、ブルース、フォーク、カントリー&ウェスタン、アフロ、ラテン、ブラジリアンなど幅広い音楽をミックスした演奏を行うフュージョン・バンド。ツアーやセッションによってメンバーが入れ替わるという総勢25名以上に及ぶ音楽集団で、現在はニューヨークのブルックリンを拠点とする。
2004年の結成から10年を迎えてアルバムも多数発表しており、2013年発表の『Family Dinner Vol. 1』ではレイラ・ハサウェイをフィーチャーした「Something」が第56回グラミー賞のベストR&Bパフォーマンスを受賞するなど、その評価を揺るぎないものとした。レイラ・ハサウェイのほかにエンダンビも参加した『Family Dinner Vol. 1』は、ヴァージニア州のジェファーソン・センター・ミュージック・ラボでの実況録音だが、他のアルバムにもライヴ盤が多く、コンサートやツアーも精力的に行う。ステージ・パフォーマンスに自信があり、ライヴ向きの音楽をやっているわけだが、今年リリースされた最新アルバム『We Like It Here』もライヴ録音だ。
彼らは北米だけでなくヨーロッパ・ツアーも頻繁に行っており、『We Like It Here』にはオランダでの公開録音の模様が収められている。『Family Dinner Vol. 1』はゲストたちのカラーもあってか、ネオソウルやR&Bの要素が強く、また「Amour T'es Lá?」のような洒落たブラジリアン・ジャズもあったのだが、『We Like It Here』の特徴をひとことで言うなれば骨太なジャズ・ロックとなるだろう。ギターのボブ・ランゼッティが前面に出て、ビル・ローレンスとショーン・マーティンを中心としたキーボード群も破壊力抜群だ。ラーネル・ルイスのパワフルでダイナミックなドラミングも印象に残る。中にはプログレのようなナンバーもあり、ジャズとロックが密接に結びついていた1970年代前半のリターン・トゥ・フォーエヴァー、マハヴィシュヌ・オーケストラ、トニー・ウィリアムス・ライフタイム、ジョージ・デュークらが見せていたサウンドに近い迫力を感じさせる。
これまでのアルバムの中でも一際高い演奏力を見せつけるものであり、今回はゲスト・シンガーがいないこともあってか、スナーキー・パピーのインストゥルメンタル・バンドとしての技術を存分に楽しめる。「Jambone」「Tio Macao」のようなアフロをモチーフとしたナンバーも織り交ぜ、彼らのステージがいかに熱いものか伝わってくるのではないだろうか。今回の公演でも、きっとこうしたエネルギッシュな演奏を披露してくれるに違いない。
- 小川充(おがわ・みつる)
- レコード・ショップ勤務を経て、ジャズとクラブ・ミュージックを中心とした音楽評論家・ライター・DJとして、雑誌のコラムやCDのライナー執筆、USENの選曲やコンピレーションの監修を手掛ける。主著『JAZZ NEXT STANDARD』。