ニューアルバムを携えて来日、ベベウ・ジルベルト | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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ニューアルバムを携えて来日、ベベウ・ジルベルト

ニューアルバムを携えて来日、ベベウ・ジルベルト

ボサノヴァのDNAとコスモポリタンな感性。
ゆらゆらと音の波に身をゆだねて気持ちよく...

 ボサノヴァを生んだ伝説のジョアン・ジルベルトを父に持ち、「父のギターで目覚め、眠りにつく」という環境で育った。母も人気シンガーのミウシャで、10代から父や母のステージで歌ってきた。音楽の道に進むのはまさに運命だったけれど、両親に直接ギターやソングライティングを習うような英才教育を受けることなく、自然に育まれた音楽性で自分の道を切り拓いてきた。

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 ブラジルには14歳で帰国するが、それまではNYで育ち、90年から再びNYを活動拠点にしている。当然バイリンガルで、「感情表現したり、歌を書いたりするのはポルトガル語だけれど、ビジネス関連のことを考える時は絶対に英語」と笑う。NYでミュージシャンらとの新しい出会いを重ねたのち、2000年にアルバム『タント・テンポ』で本格的に音楽活動を始めると、すぐにその歌が評判を呼ぶ。ボサノヴァなどルーツのブラジリアン・ミュージックをベースにしつつ、エレクトロニックサウンドを大胆に取り入れ、オリジナル楽曲とカヴァーの境界線もない、ピュアで、ナチュラルな気持ちいい音楽がベベウ・ジルベルトの世界になった。


BEBEL GILBERTO

 今年8月に発表された4thアルバム『トゥード』は、オリジナル作品としては5年ぶりの新作になるが、この間に離婚という悲しい経験をした。前作『オール・イン・ワン』発表時のインタビューで、当時婚約者だったブラジル人サウンド・エンジニアの年下彼との関係をとても幸せそうに、「24時間、週7日一緒に過ごし、愛がこれほど人生に音楽にエネルギーを与えてくれるとは知らなかった」と語っていただけにちょっと驚く。でも、その辛い経験が48歳の彼女に多くの歌を書かせた。アルバム『トゥード』には『サムホエア・エルス』や『ナーダ・ナォン(何もない)』、『ロンリー・イン・マイ・ハート』など、同世代の女性が共感できる曲がいっぱいあり、それをオーガニックなアコースティック・サウンドにのせて歌う。エモーショナルだけれど、重たすぎず、人生の悲嘆が静かに漂ってくる。そこに見え隠れする孤独感と自立した大人の女性の強さにまた深く惹かれる。涙は心で流して、体は音楽に合わせて軽やかに揺れる、そんな素敵な時間を過ごせるだろう。

 もちろんアルバムにはニール・ヤングの名曲『ハーヴェスト・ムーン』などのカヴァー曲もあるし、新作以外からもサンバやボサノヴァなど幅広いレパートリーから披露してくれるだろう。どんなスペシャル・カクテルが用意されるか、それも楽しみだ。


服部のり子(はっとり・のりこ)
音楽ライター。レコード会社勤務を経て、音楽ライターになる。現在毎日新聞やマリソルなどに執筆し、JAL機内放送『ソフト&スムース』などの選曲している。

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