工藤BigH晴康さんが語る、ザ・ウェイラーズの魅力 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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工藤BigH晴康さんが語る、ザ・ウェイラーズの魅力

工藤BigH晴康さんが語る、ザ・ウェイラーズの魅力

ボブ・マーリーの音楽とメッセージを真に受け継ぐ
ザ・ウェイラーズが待望の再来日。

 ボブ・マーリーの生誕70周年を記念して、今年の2月6日は本国ジャマイカはもちろんのこと、世界各地で様々な行事が例年にも増して盛大に開催された。また、新たに発掘された音源、映像関係のリリースや写真集の出版など、"レゲエの神様"に関連する動きは、他界後34年を経た今も尚盛り上がりを見せている。

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 ザ・ウェイラーズとは、もともと、ボブ・マーリー、ピーター・トッシュ、バニー・ウェイラーの3人を中心とした、コーラス・グループの名前だった。彼らを一躍トップッスターの座に押し上げたのは、ジャマイカ独立直後の'63年、スカ全盛の只中に録音された「シマー・ダウン」の大ヒットである。以後、約10年弱の間に、この国の音楽はテンポを徐々に落として、ロックステディからレゲエへと変貌を遂げるのだが、転機はもちろん彼らにも訪れることになる。

 現在も精力的に活動を続けているアーティスト/プロデューサーであるリー・ペリーとの出会い、そしてレコーディングが、その後の彼らを決定付けたのだ。具体的には、ペリーのスタジオ・ミュージシャンであったドラムのカールトン・バレット、そしてベースのアストン"ファミリーマン"バレット、この兄弟がメンバーとしてグループに加わり、ザ・ウェイラーズはレゲエ・バンドとして新たなスタートを切る。

 73年、英アイランド・レーベルを契約し、アルバム『キャッチ・ア・ファイア』で世界デビュー。アフター・ビートが極端に強調されたリズムと、ゲットーの底辺からのストレートなメッセージは、他のジャンルに比較するものがないほど強烈だった。同年に発表された『バーニン』収録の「アイ・ショット・ザ・シェリフ」がエリック・クラプトンにカヴァーされて全米チャートのトップとなり、彼らというより、レゲエという音楽がロック・ファンの間に知れ渡るきっかけちなったのは、周知の通りである。

 待遇の問題や意見の対立から、ピーター・トッシュ、バニー・ウェイラーが相次いでバンドを離れた後、74年にリリースされた『ナッティ・ドレッド』には、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズとクレジットがされていた。これ以降、ザ・ウェイラーズはバック・バンドとして認識されるようになる。しかし、曲作りやレコーディングの現場では、バレット兄弟によるドラムとベース、つまりボブのメッセージを支えるためのしっかりとしたリズム・トラックこそが、何より重要な役割を担っていたことを忘れてはならないだろう。

 その後の彼らは世界中をツアーし、その合間を縫うようにしてレコーディングに明け暮れる。79年4月には来日し、そのステージは伝説として今も熱く語られるほど強烈な印象を日本のファンに残した。そして、81年5月11日、ボブ・マーリー他界。残されたメンバーたちによる活動も、カールトン・バレットが殺害されるというアクシデントで休止。




2013 11.1 fri. - 11.4 mon. photography=Tsuneo Koga


 約1年半ぶりに再来日するザ・ウェイラーズは、"ファミリーマン"が新たに結成した、ボブ・マーリーの意思を真に受け継ぎ、それを後世に伝えるためのバンドである。前回のライヴを見た友人が「最高に贅沢なカラオケでした」と言ったが、これはある意味正しい。ボブは、確かに"ファミリーマン"の弾くベースの音に乗って歌っていたのだから。好きな歌を一緒に歌うことも、ザ・ウェイラーズのステージは不可欠だろう。

 レゲエの基本を知り、レゲエを世界に広めた張本人によるパフォーマンスは、また新たな伝説を生むことになるはずだ。

工藤さんがお薦めする、代表的作品3選

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『TALKIN' BLUES』

生誕70周年とのことで、関連作品をいろいろ聴き直していた中でも、この演奏は危なさという点で他を圧倒している。73年サンフランシスコでのスタジオ・ライヴだが、殺気が漂うかのような緊張感に、レゲエがゲットーで生まれた音楽であることを思い知らされる。

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『RASTAMAN VIBRATION』

ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズとなってからの2枚目に当たるアルバム。収録曲のほとんどが後のライヴの重要なレパートリーとなるが、特に人気の高い「フー・ザ・キャップ・フィット」は"ファミリーマン"の曲。ミキシング担当としても、彼の名前がある。

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「EASTERN MENPHIS」(from ALBUM『COBRA』)

ボブ・マーリーとの活動の傍ら、"ファミリーマン"は自らのレコード・レーベルも運営していた。これはその"コブラ"から73年頃に出されたシングルで、ザ・ウェイラーズ名義のホーン・セクションをメインにした、ヘヴィーなインスト。最近、めでたく再発された。



工藤BigH晴康(くどう・BigH・はるやす)
新宿の老舗レゲエ・クラブ=OPENの"校長"として知られる。日本レゲエ界の草分け的存在のひとり。DJのキャリアはすでに40年以上。バンドやソロによる演奏活動も精力的に続けている。最近12絃ギターにハマり中。今回の公演でもDJとして登場する。

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