山中千尋さんが語る、ゴンサロ・ルバルカバの魅力
ゴンサロ・ルバルカバ2015の公演によせて
センセーショナルなデビューから30年ちかくものあいだ、常にトップランナーの一人であるピアニストのゴンサロが成し遂げた音楽的な成熟は、いつでもジャズ界の話題の中心に存在する。ハープの新鋭、カスタネーダとのコラボレーションによる日本公演も、わたしたちの記憶に新しい。
今回、ゴンサロ・ルバルカバはニューヨークを代表する若い名手たちとともに、チャーリー・ヘイデンのトリビュート・バンドを結成し来日する。チャーリー・へイデンは、言うまでもなく、ゴンサロ・ルバルカバにとってのアメリカでの音楽的な出発となったきっかけをもたらした人物であり、もっとも大きな音楽的影響を与えたはずである。
早熟の天才、ゴンサロ・ルバルカバのファーストアルバムがリリースされたのが1987年。驚異的なテクニックを持つピアニストのゴンサロ・ルバルカバは、そのピアニズムに磨きをかけるとともに、時に彼自身のクリエイティブな楽想のためには、誰をも魅了するような、まばゆいばかりのテクニックを封印することにも全くためらいを持たない。音楽に対して常にストイックな姿勢は、聴衆におもねる態度をとるようなことが一切なく、かえってつれない恋人のように聴衆の心をかきたてていく。時に驚くほどに寡黙になったかと思えば、強靭な指から繰り出される百花繚乱のピアノの饒舌さ、その情熱的な調べのギャップに誰もがとりこになってしまうだろう。
そんなゴンサロ・ルバルカバの音楽的魅力は、チャーリー・ヘイデンによって、見いだされたのではないだろうか。チャーリー・ヘイデンとの出会いが、ゴンサロ・ルバルカバのその後の音楽的な歩みが決定づけられたといっても過言ではない。ゴンサロ・ルバルカバはその後、自己のレーベルを立ち上げ、音楽プロデューサーとしても、素晴らしい音楽をこの世に生み出している。
今回ゴンサロ・ルバルカバのバンドにフィーチャーされるのは、ドラムのマーカス・ギルモア(ドラム)、マット・ブリューワー(ベース)、ウィル・ヴィンソン(サックス)。マーカス・ギルモアは、まさに現代ジャズドラムを代表するプレーヤー。天才ベーシスト、マット・ブリューワーの変幻自在でありながら強靭なベースラインとのコラボレーションによって、官能的なグルーブを生み出すであろう。ウィル・ヴィンソンの美しいメロディーラインも必聴である。
心をつかんでやまないゴンサロ・ルバルカバの音楽にはいつも、チャーリー・ヘイデンの魂が宿っている。そのインティメートな夜を、素晴らしい音でぜひ楽しんで頂きたいと思う。
- 山中千尋(やまなか・ちひろ)
- 2011年に名門Deccaレーベルから初の日本人ジャズピアニストとして全米でアルバムリリース。世界中で精力的に演奏活動を続ける。著書に『ジャズのある風景』(晶文社刊)。この5月には新ユニット"SPHERES"としてブルーノート東京に登場する。
【ブルーノート東京】
GONZALO RUBALCABA QUARTET
-Tribute to Charlie Haden-
2015 4.5 sun. - 4.7 tue.
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★コットンクラブにはソロで登場!
【コットンクラブ】
GONZALO RUBALCABA - piano solo -
2015 4.8 wed.
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※チャーリー・ヘイデンのトリビュート公演ではありません。
★山中千尋、女性ミュージシャン3人によるユニット"スフィアズ"、
ブルーノート東京日本プレミア公演
SPHÈRES
featuring CHIHIRO YAMANAKA, KAREN TEPERBERG & DANA ROTH
2015 5.31 sun. - 6.1 mon.
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