ディオンヌのスペシャル・ショウが決定!この夜だけのディナーとともに楽しみたい。
9.2 wed.‒ 9.3 thu.DIONNE WARWICKディオンヌのスペシャル・ショウが決定!
この夜だけのディナーとともに楽しみたい。
9月にゴージャスなショウが決まった。ディオンヌ・ワーウィックが2日間2公演、ブルーノート東京で歌う。
スペシャル・ディナー・コースも用意される。この夜のすべてをエンタテインメントとして味わい尽くそう。
2013年7月、ディオンヌ・ワーウィックの前回のブルーノート東京のショウは、歌や演出はもちろん、彼女がまとう空気まで楽しむことができた。
開演を知らせるアナウンスに導かれて、ディオンヌがステージへ向かう。輝くような笑顔だ。燃える炎を感じる鮮やかなオレンジのパンツ姿。上半身にはおった白いドレスのラメにピンスポットがあたり、きらきらと輝く。客席の誰もが食事の手をとめ、グラスをおき、彼女に熱い視線を送る。ディオンヌがすぐ横を通過したときのことだ。どこのブランドだろうか。かつて体験したことのないパフュームの甘い香りがただよい、気持ちが高ぶった。
日本の音楽ファンは世界のどの国よりも恵まれているのではないか――と思う。なにしろ、グラミー賞をベスト・ポップ賞を中心に5度も受賞した世界的大シンガーを目の前で、まるで自分のためだけに歌ってくれているような環境で観ることができるのだ。世界的歌姫は、毎公演、大ヒットナンバーを次々と歌い上げていく。「アルフィ」「ウォーク・オン・バイ」「小さな願い」「恋よ、さようなら」、そして「愛のハーモニー」......。ファンでなくても耳にしたことがあるエヴァーグリーンを惜しむことなく披露していく。どの曲もイントロが鳴るだけで客席が大いにわく。バート・バカラック=ハル・デイヴィッドという、ポップ史に輝く作家チームの手による珠玉の名作を中心にしたセットリストだ。バックミュージシャンたちもよく心得ていて、音数少なく、ディオンヌの魅力を引き出す大人の演奏に徹している。
ディオンヌのショウは、オリジナルアレンジに忠実な曲もあり、フェイクをきかせた曲もある。その声は色鮮やかで、1曲1曲ホールの空気の色が変わるようにすら感じる。キャリアを重ねるごとに中音域に磨きがかかり、客席全体を包み込むように響く。
ほんとうに質の高いショウは、席を予約した時からエンタテインメントが始まる。特別な夜、同じ時間と気持ちを共有するパートナーを誘い、心が高揚する服を選ぶ。できれば仕事を早めに切り上げ、余裕をもって会場を訪れたい。そして、いつもよりも少しだけ特別な自分になれるワインを選び、食事を楽しみ、わくわくしながら開演を待つ。今回のショウでは、スペシャルなディナーも用意されている(右コラムを参照)。このような自分への演出を積極的に施すことによって、ショウそのものを楽しむだけではなく、ショウを楽しむ自分自身まで楽しむことができる。
text = Kazunori Kodate
photography = Yuka Yamaji
- 神舘和典(こうだて・かずのり)
- 音楽ライター。『ジャズの鉄板50枚+α』(新潮新書)『25人の偉大なるジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)など著書多数。雑誌『ゲーテ』(幻冬舎)、『クロワッサン』(マガジンハウス)の音楽コラムも執筆している。