新作を携えて来日するジョイスに、直前インタビュー | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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新作を携えて来日するジョイスに、直前インタビュー

新作を携えて来日するジョイスに、直前インタビュー

ジョイスにとってのジャズは
「音楽のやり取り」

 今年も"ブラジリアン・ミュージックの女王"がリオの涼風を運んでくる。ジョイスがニュー・アルバム『COOL』を携えて登場するのだ。今回は渋谷の<bar bossa>のオーナーであり、ブラジル関連の執筆に多く携わる林伸次さんによるインタビュー。ニュー・アルバムついて、また今回のショウについて等、ジョイスの魅力をお届けします。

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 2015年の夏、ジョイスから『COOL』という名のアルバムが届いた。ジョイス。60年代からソロ・アルバムを発表し、90年代にはアメリカのヴァーヴ・フォアキャストからアルバムを発表。その後、ヨーロッパのクラブシーンから注目を浴び、常に世界の最先端の音楽シーンで活躍しながら、「ジャズ」とはちょうど良い距離を保って音楽活動を続けてきたジョイスが、初の「ジャズ・スタンダードをカヴァーしたアルバム」を発表した。

『COOL』、ジャズ・スタンダードがならぶのだが、やはり演奏はジョイスのもの。そしてこのアルバムを引っ提げて、ジョイスがブルーノート東京公演をみせてくれる。ジョイスに「ジャズ」についていくつか質問してみた。

 「私の家族は音楽が大好きで、ジャズを愛していました。母親はトミー・ドーシーのオーケストラ、ベニー・グッドマン、フランク・シナトラ、ビング・クロスビーが大好きでした。私が生まれた頃に10代だった兄は、デイヴ・ブルーベック、エラ・フィッツジェラルド、ジューン・クリスティ、スタン・ケントン、バーンー・ケッセル、ジョー・パスを聴いていました。一時期我が家に同居していた従姉妹が国際線のフライトアテンダントで、ヨーロッパに行くと必ずセロニアス・モンク、アート・ブレーキー、チェット・ベイカー等々、ジャズのアルバムを買って来てくれたんです。とても音楽的な家庭でした。もちろん、ブラジル音楽もよく聴いていましたよ。だから私は、大人になってから自分自身が一番好きなものを、しっかりとした基礎を踏まえて選ぶことができたんです」

 ジョイスはやはり、世界同時進行的にジャズを体験していたみたいだ。そして「初めての'ジャズ'の曲」も聞いてみたのだが、

 「ジャンルに関係無く単純に音楽としてみなしていたので、、初めての'ジャズ'の曲が何だったか正確には思い出せません。わかるのは、それが素晴らしい音楽で、同じく家でよく聴いていた優れたブラジルのスタンダード曲を聴いていたのと同じ喜びと関心を持って聴いていた、ということだけです」

 とのこと。ジョイスらしい答えだ。おそらくこのジャズとブラジル音楽を並行して聞いたバランス感覚がジョイスのその後の音楽の方向性を決めたのだろう。

 ちょっとここで「今はいないジャズ・ミュージシャンとアルバムが作れるとしたら誰と演奏したい?」という変わった質問をしてみた。

 「ビル・エヴァンスは絶対ですね、私が一番好きなピアニストですから。彼と是非、音楽のやり取りをしてみたい。彼のライヴセッションの録音を聴くと、彼は毎回、同じ曲を違うように再現しています。それに、彼は真のジャズの詩人です」

 なるほど。ジョイスにとっては「音楽はやり取り」というわけだ。今回の東京公演もジョイスの旧知のメンバーでありながら、また新たな「音楽のやり取り」を見せてくれて、そして私たちオーディエンスとも新しい「音楽のやり取り」をしたいのかもしれない。

 ジョイスは最後にこうしめている。

 「とにかく、この音楽を世界で私が一番好きなジャズスポットで演じるのを楽しみにしています、とお伝えください。もうすぐ会えますね!」

 このジョイスの公演にあわせて、「ジョイス特製レシピのムケッカ・セット」も用意しているらしい。ジョイスの娘のアナ・マルチンスやクララ・モレーノも幼い頃こんなジョイスの手料理を食べたのかも知れないと想像しながらジョイスと「音楽のやり取り」を楽しんでみてはいかがだろうか。


【TOUR INFORMATION】
★ブルーノート東京
8.3 mon. - 8.4 tue.
https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/joyce/
★コットンクラブ
7.30 thu. - 8.1 sat.
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/joyce/


林 伸次(はやし・しんじ)
1969年徳島県生まれ。中古レコード店、ブラジルレストラン、バー勤務を経て、1997 年渋谷にbar bossaを開店。CD ライナー執筆多数。著書『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?』(DU BOOKS)


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