<BEAUTIFUL SOULS, WARM HEARTS> 女性ヴォーカリストで華やぐ、秋のブルーノート東京 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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<BEAUTIFUL SOULS, WARM HEARTS> 女性ヴォーカリストで華やぐ、秋のブルーノート東京

<BEAUTIFUL SOULS, WARM HEARTS> 女性ヴォーカリストで華やぐ、秋のブルーノート東京

<BEAUTIFUL SOULS, WARM HEARTS> 女性ヴォーカリストで華やぐ、
秋のブルーノート東京

 秋も深まるこの季節、
心温まる歌声で魅了するふたりのヴォーカリストが登場する。
スピリチュアルで唯一無二の音楽世界を持つリズ・ライトと、キュートなルックスも魅力のステイシー・ケント。今回は共に新作を携えての来日とあって、それぞれのコメントも合わせて公演の見どころをご紹介します。

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 リズ・ライト

 リズ・ライトは、歌で魅せる。ただし、彼女の歌はきらびやかなシルクではなく、生成りのコットンのような手触りを持ち、聴き手を優しく包み込む。そして聴き手を赦(ゆる)し、悩みから解き放つ。なぜなら米南部で牧師の娘として生まれた彼女のバックグラウンドは、ゴスペルなのだから。『フリーダム&サレンダー』も、ゴスペル・ルーツに裏打ちされたリズの包容力あふれる歌が堪能できるアルバムだが、この最新作は初めてラリー・クラインをプロデューサーに迎えて制作された。

 「前作の時にもラリーから一緒にアルバムを作ろうかと打診されましたけど、残念ながら実現しませんでした。ラリーがこれまで制作に関わってきたアルバムはどれも優れたものばかりで、しかもたくさんのアーティストを手掛けてきたにもかかわらず、どれひとつとして同じようなものはない。私は自分の可能性をよりいっそう追求したかったので、喜んでラリーと一緒に曲を作ったり、サウンドを作り上げていきました」

 ラリー・クラインは、これまでにジョニ・ミッチェルやマデリン・ペルー、メロディ・ガルドーなど数多くの才媛のプロデュースを手掛け、彼女たちのキャリアにおける最高傑作や最重要作を生み出してきた。いわば女性アーティストの名伯楽である。『フリーダム&サレンダー』でも、ラリーはリズの隠れていた才能を引き出している。というのも、リズは、ニック・ドレイクやビージーズのカヴァーに取り組む一方で、ラリーやJ・Dサウザーなどの協力を得て、これまでになくオリジナル曲の作曲に力を注いでいるからだ。

 「魂、情熱、心の痛み。私は、自分の歌の能力のすべてを出し切り、これらの感情を表現しました。今回のショーでは、オーディエンスと、最新作の各曲に込めた感情を分かち合うことが出来るはずだと思ってます。日本の皆さんは、世界でもっとも真剣に音楽を聴いてくれるので、私自身も楽しみです」

Photo by Takuo Sato
2014 9.13 sat. - 9.14 sun. TERRI LYNE CARRINGTON featuring LIZZ WRIGHT
LIZZ WRIGHT(リズ・ライト) 11.14 sat. - 11.15 sun.
スピリチュアルな歌声でオリジナリティ溢れる世界を創り上げる。ジョー・サンプルのバンドメンバーとして初来日しブルーノート東京に。デビューアルバムは『ソルト』(2003)。9月、5年ぶりの新作『フリーダム&サレンダー』を発表。
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リズ・ライト
『フリーダム&サレンダー』(ユニバーサル ミュージック)

 ステイシー・ケント

 一方、ステイシー・ケントの最新作『テンダリー』は、いつものように彼女の夫でサックス奏者のジム・トムリンソンのプロデュース。ただし、この最新作は、ホベルト・メネスカルと初めて全面的に共演したアルバムだ。ステイシーが、このボサノヴァの生き証人であるギタリスト兼作曲家と出会ったきっかけは、2011年にリオデジャネイロで開催された音楽フェスティヴァル。ステイシーはこのフェスで、マルコス・ヴァーリと一緒のステージに立ったが、ライヴを終えた後、楽屋で初めてホベルトと面会したという。

 「私はずっと前からホベルトのファンだったので、とても感激しました。ところが、彼も私の歌を気に入ってくれているとのことだったので、その場でeメールのアドレスを交換し、以来、私たちは共演に向けてのプランを練り上げてきました。そしてまず私のアルバム『チャンジング・ライツ』(2013年)で一緒に2曲録音しました」

 その2曲とは、ホベルトとロナルド・ボスコリの共作によるボサノヴァの名曲「小舟」と、マルコス・ヴァーリの「ザ・フェイス・アイ・ラヴ」。ところが、『テンダリー』は、ホベルト作の「アガハジーニョス」を除き、すべて英語によるジャズ・スタンダードで構成されている。

 「ホベルトと二人で話し合って、ジュリー・ロンドンがバーニー・ケッセルらと一緒に録音したスタンダード主体のアルバム(おそらく55年録音の『Julie Is Her Name』)のようなものを作ろうということになりました。選曲も二人で相談しながら決めましたが、〈ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・アナザー・ユー〉は、ホベルトが背中を押してくれたおかげで録音することができた曲。〈イフ・アイム・ラッキー〉は、私がいつか録音したいと思っていた曲のうちの一曲で、今回のような特別プロジェクトのためにとっておいた曲です。〈アガハジーニョス〉については、まず歌詞が素敵だと思う。そしてこの曲はポルトガル語だけど、立派なジャズ・ソングというか、たとえスロー・テンポで歌っても、ごく自然にスウィングする。その意味では、稀有な一曲だと思います」

 『テンダリー』は、ステイシーとホベルトのほぼ2人だけで録音されており、曲によってウッドベース、サックスまたはフルートが加わるのみ。このような必要最小限の編成で録音されている。それだけに、ステイシーたちが目の前で、まるであなたのためにだけ歌い、演奏してくれているような錯覚を覚えるだろう。がともかく、このミニマルな編成と親密な雰囲気が最大のポイントだ。 「ヴォーカルとギターの関係性にもっとも重点を置いていて、ミニマリズムに基づいているという意味では、ボサノヴァ的なアプローチによるジャズ・スタンダード集と言っていいと思います。これまでピアノ・トリオを軸としたアルバムを作ってきた私にとってこの最新作は、一種の冒険でした」

 今回のショーにホベルトは同行しないが、気心の知れたカルテットと一緒にジャズとボサノヴァの名曲を披露してくれる。

 「前回はマルコスと一緒だったから、日本でまだお披露目していない『チェンジング・ライツ』の曲も歌います。オーディエンスの皆さんのリクエストも聞いてみたい。私のFacebookを通じてメッセージをお待ちしてます!」

Photo by Takuo Sato
2014 4.18 fri. - 4.22 tue. (4.20 sun. OFF)
MARCOS VALLE & STACEY KENT featuring JIM TOMLINSON
STACEY KENT(ステイシー・ケント) 11.24 tue. - 11.26 thu.
ロンドンを拠点にヨーロッパを中心に活動を続け、スタンダード・ソングを可憐に歌うチャーミングな歌手として日本でも高い人気を誇る。ホベルト・メネスカルとのコラボレーション・アルバム『テンダリー』を11月にリリース予定。
★JAM SESSION会員限定、ミュージック・チャージ半額キャンペーン
※詳しくは公演詳細ページまで
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ステイシー・ケント
『テンダリー』(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)
※2015 11.18 発売

text = Toru Watanabe

渡辺亨(わたなべ・とおる)
音楽評論家。DJ。著書『音楽の架け橋 快適音楽ディスク・ガイド』。NHK-FM『世界の快適音楽セレクション』の選曲担当および出演。選曲を手掛けたグレッチェン・パーラトの『シュプリーム・コレクション』が、11月18日に発売。

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