ハイエイタス・カイヨーテ、ネイ・パームにインタビュー
HIATUS KAIYOTE2016 5.25wed., 5.26thu.
新世代のユニークなサウンドが
生まれる源泉を探る
R&B、ロック、ジャズ、ビート・ミュージック等のあらゆる要素を取り入れた
個性的なファッションと特徴のある歌声でオーディエンスを魅了する
ネイ・パームに親交のあるDJ沖野修也さんがインタビュー。
音楽的影響を尋ね、その創造の源泉を探った。
あのエリカ・バドゥが絶賛。ア・トライブ・コールド・クエストのQ-TIPが参加したことで脚光を浴び、遂にはグラミー賞にもノミネートされ瞬く間に多くの人に知られる存在となったハイエイタス・カイヨーテ。紅一点でバンドの顔でもあるネイ・パームに再来日を前にメール・インタビューを申し込んだ。昨年の初来日のこと、そして、受けた影響や日本への想いについても語ってもらう為に。
まずは、ブルーノート東京での公演について。着席タイプのジャズ・クラブへの出演は非常に興味深い経験だったようだ。
「私は常に一回のライブに全力を注ぐから、1日に二回公演をするのは面白い体験だったわ。なかなかシュールだったわね。でも全指定席だったにも関わらず観客からはとても良いエナジーを貰えたし、盛り上がっていたわ!」
実は、筆者は3年前、キーボード奏者のマーク・ド・クライヴ・ロウの結婚式の2次会で彼女の弾き語りを観て大ファンになった。彼女はいつから歌い始めたのか、そして、それは何がきっかけだったのだろうか?
「とてもクリエイティブな家庭に育ったから、私の母のレコードコレクションをかけながらいつも一緒に歌っていたの。いろんな人から影響は受けたけど、ミュージシャンになるとは思いもしなかったわ。自分自身を耳から感じて、それが私の癒しとなり、私の生きる意味となったの」
まさかミュージシャンになると思いもしなかったという返答が戻って来るとは思いもしなかった(笑)。そして、彼女の音楽的な影響について更に切り込んでみた。
「まず、間違いなくスティーヴィー・ワンダーね。彼の心から音楽を楽しむ気持ちと表現、複雑さ、でもアレンジを大切にしている所が好き。それとビョーク。彼女の息遣い、歌詞で描かれる彼女自身を表すかのような美しい風景表現が気に入っているわ。あとはオウモウ・サンガルの声。
リズミックなフレーズと驚くほど温かく強い、かつ軽やかなポリリズム。たくましく知性的で、彼女が放つ優雅さの全てが素晴らしい。ドビュッシーはハーモニーの動静と感動的な話術は神がかっているし、忘れられないような美しい記憶を呼び覚ますわ。アレンジに関しては彼の曲から習ったの。そして、J・ディラ。彼は私の人生を変えたわ。彼は製作の魔法使いなの。音楽的な時間を直線で見ないで、曲を刻んでまた新たな不滅なものに変えるところ」
ハイエイタス・カイヨーテは新時代のジャズと比較されることがある。彼等とジャズの関係についてかねてから訊きたいと思っていた。そして同世代のジャズ・ミュージシャンにシンパシーを感じるかということについても。
「バンド・メンバーの何人かはジャズの奥地から何か見つけて来ているわね。サイモンとベンダーはジャズの世界で鍛え抜かれて来た。私はビリー・ホリデイへの尊敬を込めて、クチナシの花のタトゥーを左の頭の横に入れているのよ。彼女はよくクチナシの花を頭に飾っていたからね。ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントンの様な才能のある仲間とこの瞬間を分かち合えているのは本当に光栄だわ」
そして、去年ステージで彼女は日本のカルチャーに影響されていると言っていたことを記憶していた筆者は、具体的にどのようなものであるのかを尋ねてみた。
「あぁ、どこから始めればいいかしら...。日本はとても感慨深く歴史的に洗練された国。例えば「チューズ・ユア・ウェポン」は宮崎駿のために捧げた曲。「ラピュタ」もね。彼の映画は不思議なファンタジーへの世界と環境への意識を教えてくれたわ」
まさかネイ・パームが宮崎駿のファンだったとは!今回の来日では、自然の美しい所や京都にも訪れてみたいそうだ。文化的衝突を探求することが好きだと公言する彼女がハイエイタス・カイヨーテのメンバーと共に多くの刺激を吸収するに違いない。「メンバーとスタジオに入って、新たな「魔法」を作り出すのが本当に楽しみ」と語る彼女を日本が触発することを切に願っている。
- HIATUS KAIYOTE(ハイエイタス・カイヨーテ)
5.25wed., 5.26thu.
[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:20pm Start9:00pm - ※詳しくは公演詳細ページまで
DISCOGRAPHY
『チューズ・ユア・ウェポン』
(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)
2016 58th GRAMMY NOMINEES!
「ブリージング・アンダーウォーター」
『トーク・トマホーク +3』
(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)
『リキャリブレーションズ vol.1 』
(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)
text = interview & text = Shuya Okino
PR coordinator / Artist = Kei Kato
- 沖野修也(おきの・しゅうや)
- DJ、音楽プロデューサー、執筆家。これまで世界35ヶ国140以上の都市に招聘された国際派。現在、InterFM897で番組"JAZZ ain't Jazz"を担当。Tokyo Crossover/Jazz Festivalの発起人でもある。