来日間近! "アシッド・ジャズ"の黎明期を支えたジェームス・テイラー・カルテット | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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来日間近! "アシッド・ジャズ"の黎明期を支えたジェームス・テイラー・カルテット

来日間近! "アシッド・ジャズ"の黎明期を支えたジェームス・テイラー・カルテット

80年代後半から90年代を席巻した"アシッド・ジャズ"
モッズカルチャーを背景に、
異彩を放ったジェームス・テイラー・カルテットの魅力

 アシッド・ジャズ~UKジャズ・ファンクの雄として30余年にわたり第一線で活動を続けてきたジェームス・テイラー・カルテット(以下JTQ)が、最新スタジオ・アルバム『The Rochester Mass』と、4月に発売されたばかりのライヴ・アルバム『Bumpin' on Frith Street』を引っ提げて、20年ぶりの来日を果たす。

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★"アシッド・ジャズ"の共通項はジャズ、ソウル、ラテン、そしてモッズ

 熱くグルーヴィーにうねり吠えるハモンド・オルガンでお馴染みのジェームスは、メイキン・タイムやジェンツと並んで80'sモッド・リバイバルの中心的バンドとして知られるザ・プリズナーズのキーボーディストだった人物。そして、彼らをスティッフ・レコーズ傘下のレーベル、カウントダウンから売り出したのが、後にジャイルス・ピーターソンとともにアシッド・ジャズ・レコーズを立ち上げることとなるエディ・ピラーだった。

 両親がオリジナル・モッズだったエディはDJとしても活躍したが、シーンが分裂した86年あたりからジャイルスやクリス・バングスらによるジャズやソウル、ラテンなどをかけるパーティーにモッズとの共通点を見出し接近。同じ頃、ジェームスはバンドの解散に伴い、ブッカー・T&ザ・MG'Sなどからの影響にジャジーな要素を加えた新バンド、JTQを結成、1st『The Money Spyder』をエディが立ち上げたリ・エレクト・ザ・プレジデントから発表した。彼らもまた、ロンドンの新しいジャズ・ファンク=アシッド・ジャズのムーヴメントに可能性を見出したのだ。

★"アシッド・ジャズ・レコーズ"の功績

 少し時代は遡るが、もともと80年代初頭にロンドンのクラブでジャズをかけ始めたのはDJのポール・マーフィーだった。彼は当時の若者に"保守的な中年がイージーリスニングとして聴く音楽"と認識されていたジャズに光を当てた先駆者。それに続いたのが前出のジャイルスやクリスだった。さらにはワーキング・ウィークがジャズやラテンの影響下にあるサウンドで人気を博したり、ジャズ・ディフェクターズやIDJなどのジャズで踊るダンス・ユニットが活躍するなど、80年代半頃までにはジャズの新しい楽しみ方は広がりを見せるように。そんななかで生まれたのが、ジャイルスとエディによるアシッド・ジャズ・レコーズだ。ここからは、ガリアーノやブランニュー・ヘヴィーズ、スノーボーイ、コーデュロイ、そしてもちろんJTQなどが次々とシングルを発表。88年頃には日曜の午後にカムデン・マーケットのディングウォールズでジャイルスやパトリック・フォージが開いていたパーティーが話題となり、アシッド・ジャズのクラブ・キッズに加えて進化系モッズの心も掴むようになっていった。

 

 勢いに乗るジャイルスは90年にアシッド・ジャズに続くレーベル、トーキン・ラウドを設立。この頃にはムーヴメントは日本を含む海外にも飛び火している。91年には既に10年選手だったインコグニートがここから『Inside Life』を発表、ここから「Always There」が大ヒット。ヤング・ディサイプルズやガリアーノ、オマーなども続けざまにヒットを放っていく。93年には日本のユナイテッド・フューチャー・オーガニゼイションが同レーベルと契約して話題となった。そんなアシッド・ジャズ・シーンで最大のスターとなったのは92年にアシッド・ジャズから「When You Gonna Learn」でデビューしたジェイ・ケイ率いるジャミロクワイ。彼らはその後ソニーとアルバム8枚という破格の契約を結び、世界的ブレイクを果たした。

★インコグニートやブランニュー・ヘヴィーズらとともに、輝きを放ち続けるJTQ

 90年代半ばになるとブームは収束、立役者ジャイルスはラジオDJとして、またプロデューサーとしてさらに活動の幅を広げていく。一方でメジャー・レーベルで成功を収めたJTQは95年、『In the Hand of the Inevitable』を古巣アシッド・ジャズからリリースしレーベル史上最大のヒットを記録した(前述「"アシッド・ジャズ・レコーズ"の功績」にて映像掲載)。彼らはその後もインコグニートやブランニュー・ヘヴィーズらとともに、アシッド・ジャズ~UKジャズ・ファンクの王道で輝きを放ち続けている。昨年発表した『The Rochester Mass』では40名もの聖歌隊との初共演も果たすなど新たな境地に挑んで絶賛されたJTQ、今回の来日では5月14日(土)に開催されるモッズ系イヴェント「MODS MAYDAY JAPAN '16」にも出演予定。

今なお彼らの中で燃え続けるモッズ魂を見せつけてくれそうだ。

山下紫陽(やました・しよう)
ライター・編集者。「クロスビート」の編集を経てフリーに。現在はアートやデザインから音楽まで、カルチャー全般にまつわる記事を手掛ける。お酒が好きで特にビールは大好物。音楽とビールのマッチングを考えるのが趣味。

同時代を盛り上げたアーティストや、
DJから期待溢れるコメントが届きました!

(以下、五十音順)


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沖野修也(Kyoto Jazz Massive)
http://www.kyotojazzmassive.com

90年代、僕達はその時20年以上前のに夢中になった。そして、今、20年振りに来日するJTQに遭遇する。レア・グルーヴとは"価値観の逆転"であると同時に、時代をサバイヴする音楽の事を指すのかもしれない。

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ブルーイ (インコグニート、シトラス・サン)
http://www.incognito.london

僕の友達、最高のオルガン・プレイヤーのジェームス・テイラーをぜひチェックしてみて欲しい。ソウル、ジャズ、ファンクの最高峰さ。5月16日(月)にブルーノート東京で行われるライブ、グルーヴを感じにぜひ足を運んでみることをお薦めします!

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松浦俊夫
http://www.toshiomatsuura.com

ジェームス・テイラー・カルテットの久しぶりの来日公演、楽しみにしています。実は80年代終わりの初来日公演にスタッフとして参加していました。また、90年代にはU.F.O.として一緒に東京と大阪でツアーも行いました。エネルギッシュなライヴとやんちゃなオフステージは今も忘れられません。あれから20数年、時を経て円熟を増しているプレイ、期待に胸高まります。

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