ボブ・ジェームスインタビュー、カルテットの魅力に迫る | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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ボブ・ジェームスインタビュー、カルテットの魅力に迫る

ボブ・ジェームスインタビュー、カルテットの魅力に迫る

初心者からジャズを聞き尽くした玄人まで
話題となった前回公演。
ボブさん本人に聞く、バンドのコンセプトとは

 ジャズ・フュージョン界のレジェンド、ボブ・ジェームスがこの7月にやってくる。 1991年以来、名門グループ"フォープレイ"の中心人物としても活躍しているボブだが、今回は"ボブ・ジェームス・カルテット"による登場。重鎮揃いのフォープレイとは対照的に、より若い世代のミュージシャンとの共演となる。自身の名前を冠したユニット名が示す通り、よりパーソナルな、彼自身の個性をより強く反映した音作りが魅力だ。

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 フュージョン・ミュージックやスムース・ジャズという言葉が生まれる前から、ボブは都会的でポップな響きを追求してきた。学生の頃からジャズ、クラシック、現代音楽、ポップスなどに親しみ、1963年にクインシー・ジョーンズのプロデュースでアルバム・デビュー。つまり彼は今クインシーのプロデュースで注目を集めるニッキー、アルフレッド・ロドリゲス、ジャスティン・コフリンらの大先輩にあたるのだ。'60年代後半には伝説的ジャズ・シンガー、サラ・ヴォーンの伴奏ピアニストとしても活動。その後CTIレコードのプロデューサーであるクリード・テイラーに認められ、'74年にジャズ・フュージョン史上の名盤である『ボブ・ジェームス・ワン(はげ山の一夜)』をリリースした。ソロ・アーティストとしてのボブの実質的な栄光の歴史は、ここからスタートしたといえる。カルテットでの来日を控えるボブに、ステージの見どころや聴きどころを尋ねてみた。

★素晴らしいミュージシャンと共に、ベストのプレイを披露したい

ボブ・ジェームス・カルテットによる来日が決まりました。

「嬉しいね。何ヶ月もの長い間ツアーから離れていて、僕をいつもサポートしてくれる素晴らしいミュージシャン達と一緒に音楽を作る、あの大好きな時間に戻りたくて堪らなくなったんだ。僕の大好きな国、日本にまた戻って僕の音楽を披露することができて感謝しているよ」

 フォープレイとは異なる、このバンドならではの特色について教えてください。

「最初はトリオを組むことも考えていたんだけれど、ペリー・ヒューズのギターも加えることにしたんだ。楽器編成は偶然にもフォープレイと一緒になってしまったけどね。ペリーも僕も今は亡きエリック・ゲイルの大ファンなんだ。ペリーのプレイは'70~'80年代のエリックを思い起こさせる。もちろんフォープレイのチャック・ローブとはだいぶ違うスタイルだ。このような素晴らしいアーティスト達と一緒にパフォーマンスする機会を持てて、本当にラッキーだと思うよ。ベースのカルリートス・デル・プエルトとは、僕とデヴィッド・サンボーンが行なった"カルテット・ヒューマン"ツアーの数公演で演奏したのが初共演だ。強く推薦に値するアーティストで、それは彼自身の才能が証明している。素晴らしいミュージシャンシップと穏やかな性格を持った、音楽を作るのにかかせない人物だ。彼とは日本で二回目の演奏になるね。日本のファンからの声援が待ちきれないよ」

 1970-80年代のボブさんは数々のエレクトリック・キーボードを弾いていましたが、その後はアコースティック・ピアノを中心に演奏しています。あなたにとってアコースティック・ピアノの魅力とは?

「CTIレコードのレコーディングでよくフェンダー・ローズを使っていたから、エレクトリック・ピアノ奏者としてボブ・ジェームスが認識されたところもあるんだろうね。でも私は常にアコースティック・ピアノを好んでいる。今は主にエレクトリックとアコースティックどちらの世界にも適応できる、ヤマハのDisklavierを使っているよ。アコースティック・ピアノのタッチと響きを表現できると同時に、多彩なエレクトリック・サウンドもオーケストレーションに活用できるんだ」

 7月の公演は、どんな内容のステージになりますか?

「親愛なる日本のファンにベストのプレイを捧げることだろう。音楽家としての私の究極の目標はオーディエンスと親密なリレーションを築くことなんだ。音楽を通じて、私の心や魂を感じ取ってほしいな。いつも温かい声援と支持をありがとう。僕が道に迷った時に励ましてくれてありがとう。2011年3月の震災から立ち直る、強い勇気と意思を見せてくれてありがとう。私と私の音楽を心から愛してくれてありがとう!」

〜前回公演の模様〜
BOB JAMES QUARTET featuring CARLITOS DEL PUERTO, PERRY HUGHES & CLARENCE PENN "CELEBRATING BOB JAMES 75TH BIRTHDAY"
@COTTON CLUB 2015 3.1 sun.
※今回のショウのドラムスはジミー・ブランリーです。

★ファンキーで親密感にあふれた、2015年の来日公演

ボブ・ジェームス・カルテットによる前回の来日は2015年の2月から3月にかけて。その前年の12月に75歳を迎えたボブのアニバーサリー公演ともなった。フォープレイでの隅々まで構築されたスタイリッシュな音作りとはまた違う、よりファンキーでリラックスしたステージ。各メンバーのアドリブ・プレイ、モダン・ジャズやラテンへの愛着もたっぷり味わうことができた。
ボブ自身の自作だけではなく、あっと驚くようなカヴァー曲が演奏されるのも、このカルテットの面白さだ。駆け出しの頃に大きな影響を受けたという名ピアニスト、ホレス・シルヴァーの「The Jody Glind」が軽やかに演奏され、'70年代前半のCTIレコード専属時代にボブとよく共演した伝説的サックス奏者、スタンリー・タレンティンが得意とした「La Place Street」では、全員がブルース・フィーリングに浸りながら快演。こんなにレイド・バックしたボブは、決してフォープレイではうかがえないはずだ。

 そしてもちろん「Night Crawler」、「Angela」、「Westchester Lady」など、フュージョン黄金時代に作曲したナンバーも惜しげもなく披露。キューバ出身のカルリートス・デル・プエルトがクリエイティヴなベース・ラインを打ち出し、ペリー・ヒューズのギターはメロディアスに歌う。マリア・シュナイダー・オーケストラ等に所属するドラムスのクラレンス・ペン(かつてフォープレイでハーヴィー・メイソンの代役を務めたこともある)は力強いプレイでソリストを鼓舞し、ドラム・ソロで華やかさをまきちらす。今回のドラマーはクラレンスではなく、カルリートスと同郷のジミー・ブランリーだが、これまた実に興味深い人選だ。子供のころ、ディープ・パープルのレコードでイアン・ペイスのプレイを聴いて感激してドラマーを志し、やがてチック・コリアやエルヴィン・ジョーンズの演奏でジャズに開眼。15歳の時に、ピアニストのエルナン・ロペス=ヌッサのバンドでプロ・デビューしたという早熟児だ。その後はNG(エネヘ)・ラ・バンダ、ゴンサロ・ルバルカバのバンドでも演奏し、'98年以降はアメリカの音楽シーンで活動している。個人的には今回のライヴの鍵を握るのは、彼のドラムではないかという気もしている。とにかく必見のリズム・メイカーなのだ。

 ローリング・ストーンズと別行動をしているときのキース・リチャーズが一味違うプレイを聴かせるように、フォープレイを離れたときのボブ・ジェームスも趣の異なる魅力を放つ。ボブ・ジェームス・カルテットの公演に、ぜひ足を運びたい。

Bob James

Carlitos Del Puerto

Perry Hughes
※ここまで3カットは前回公演<BOB JAMES QUARTET>2015 3.5 thu. - 3.7 sat. @Blue Note Tokyo

Jimmy Branly
KEIKO MATSUI GROUP 2015 6.12 fri. - 6.13 sat. @Blue Note Tokyo

interview & text = Kazunori Harada
photography = Yuka Yamaji
PR coordinator / Artist = Kei Kato

原田和典(はらだ・かずのり)
音楽ライター、ラジオ番組ディレクター。タワー・オブ・パワーは1974年の初来日以来、ほぼ総ての東京公演を制覇。結成30周年、及び40周年の記念ライヴ@聖地フィルモアも踏破した、唯一の日本人。

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