新鋭の女性シンガーふたりに公演直前インタビュー | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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新鋭の女性シンガーふたりに公演直前インタビュー

新鋭の女性シンガーふたりに公演直前インタビュー

<Here's to the new muses of music> 【公演直前インタビュー】9月は新鋭の女性シンガーが登場!

グラミーでのパフォーマンスや名プロデューサーが手がける楽曲等が話題。
今、世界中が注目する美貌と実力を兼ね備えたふたりのシンガーが登場します。
ハートウォーミングに、そして情熱的に歌い上げるその姿に心酔したい。

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KANDACE SPRINGS
with special guest JESSE HARRIS
キャンディス・スプリングス with special guest ジェシー・ハリス 2016 9.8thu. - 9.10sat.

温かな歌声で魅了するニュースター


 ノラ・ジョーンズの代表曲「ドント・ノー・ホワイ」の作者である
ジェシー・ハリスの出演も急遽決定。生前のプリンスにも絶賛された
シンガー&ピアニストがライヴへの意気込みを語る。

photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Junichi Uchimoto

 KANDACE SPRINGS

7月にキャンディス・スプリングスと会った際、僕はヴィンテージ・トラブルのTシャツを着ていた。ブルーノート・レコーズのこれからを担うバンドがヴィンテージ・トラブルであり、ソロアーティストがキャンディス・スプリングスであると、そのような思いが確かに僕にはあるのだ。ということを、まずは本人に伝えると......。

「サンキュー。それは嬉しい褒め言葉ね。彼らには何度かあったけど、本当にいい人たち。ついこの前ノース・シー・ジャズ・フェスティバルでライブも観たけど、最高だったわ」

ヴィンテージ・トラブルがソウルとロックをまたいで活動するバンドだとすれば、キャンディス・スプリングスはジャズとソウルをまたぐソロ歌手。そんな彼女は10代のときに父親(ナッシュビルのセッション・シンガー、スキャット・スプリングス)からプレゼントされたノラ・ジョーンズのデビュー盤『Come Away With Me』(2002年)を聴いて感動したことから、シンガー・ソングライターを志すようになった。

「ノラ・ジョーンズがその時々で音楽性を変化させているのはとても刺激的だし、私もそうやってキャリアを重ねていきたい。事実、私のデビューEPはヒップホップよりのサウンドの曲もあったけど、今回のアルバムはジャジー。またアルバムの中にもジャズで括れない曲がある。それは今のブルーノートの方向性にフィットするやり方だと思うわ」

L.A.やN.Y.に住んだこともあったが、やはり暮らしやすくて一番自分らしくいられる故郷ナッシュビルに戻り、そこを拠点に活動している27歳。7月にリリースした初アルバム『ソウル・アイズ』も、ナッシュビル出身というルーツに立ち返って、オーガニックな音楽性を追求した。

「そうしたのは、100年後にも聴いてもらえるものを作りたいと思ったから。私の好きなノラ・ジョーンズもニーナ・シモンもロバータ・フラックもエヴァ・キャシディもシャーデーも、そういう作品を残しているからね」

プロデュースを担当したのは名匠ラリー・クラインだ。

「オーガニックなサウンドと言えばラリーでしょ?(笑)。ナマの楽器を最大限に活かす方法を彼ほど理解している人はいないんじゃないかしら。その道の第一人者だと思うわ。シンプルだけど、オーガニックで心地いい音を作れる人なの。それも自然にね」

ジェシー・ハリスが詞曲を手掛けた日本でのリード曲「トーク・トゥ・ミー」で、そのアルバムは柔らかに始まる。まさしく"オーガニックで心地いい音"。ここから何かが始まるんだなという期待感がふわっと心に広がっていく、オープナーに相応しい1曲だ。

「ラリーと曲順を考えているときに、この曲が一番いいスタートになるねって話になったの。ノラの1stアルバムはプレイを押すと"ドント・ノー・ホワイ"のピアノの音が柔らかく聴こえてきて、"ああ、始まるんだな"って自然に思えるものだった。そう、これからを予感させる雰囲気というか。私のアルバムもその感じを始まりで出したかったのよ」

アルバムの約半数はカヴァー曲。そのうち2曲は2001年のグラミー賞で〈Best New Artist〉を受賞して以来、マイペースな活動を続けるカントリー系のシンガー・ソングライター、シェルビー・リンの曲だ(「ソート・イット・ウッド・ビー・イージアー」と「リーヴィン」。どちらも名盤『I Am Shelby Lynne』に収録されていた)。

「この2曲のカヴァーを薦めてくれたのもラリーなの。"キミの解釈で歌ってごらん"って言われてね。ラリーは決して"こう歌いなさい"なんて言い方はしない。いつも"好きなようにやってごらん"って言う人なのよ」

9月には初のブルーノート東京公演が決定している。若いベーシストとドラマーとのトリオ編成で行なわれるそうだが、そこにもうひとり、スペシャル・ゲストでジェシー・ハリスが参加することも発表された。今からとても楽しみだ。

 『ソウル・アイズ』

『ソウル・アイズ』

(ユニバーサル ミュージック)

KANDACE SPRINGS
with special guest JESSE HARRIS
2016 9.8 thu., 9.9 fri., 9.10 sat.
※詳細はウェブサイトまで

内本 順一(うちもと・じゅんいち)
音楽ライター。情報誌の編集を経たのち、フリーで書くようになって20数年。一般誌や音楽ウェブサイトでレビュー~インタビュー記事を担当し、シンガー・ソングライター系を中心にライナーノーツも多く手掛けている。

ANDRA DAYアンドラ・デイ 2016 9.19mon. - 9.20tue.

スティーヴィーに見出された
圧巻のパフォーマンス


 今年のグラミーでのパフォーマンスでその大型新人ぶりが世界中に知れ渡る。
スティーヴィー・ワンダーに気に入られた彼女の"懐かしいのに現代風"な
音世界・歌世界を、クラブの親密な空気感の中で堪能したい。

photography = Myriam Santos
interview & text = Tsuyoshi Hayashi
PR coordinator/Artist = Kei Kato

 ANDRA DAY

アンドラ・デイは米カリフォルニア州サンディエゴ出身のR&Bシンガー。地元の芸術学校(SDSCPA=Sandiego School of Creative and Performing Arts)でジャズやクラシック、ダンスを学び、お店のオープン・イヴェントで歌っていたところスティーヴィー・ワンダーと暮らす女性の目に留まり、スティーヴィーの仲介でワーナー・ブラザーズからデビューしたという、まさにシンデレラ・ストーリーを地で行く女性だ。昨年冬には、CMでスティーヴィーの名曲「想い出のクリスマス」を本人と共演。スティーヴィーについては「貪欲なハングリー精神を持った子供のようにも見えるわ。それは彼が音楽を作ることに喜びを感じているということね」と話すが、アンドラも以前からジェシー・Jの「ママ・ノウズ・ベスト」やエミネムの「ルーズ・ユアセルフ」などの曲をカヴァーした動画をYouTubeで披露するなど、音楽をやることに対しては人一倍貪欲だ。

「ロック、ソウル、レゲエ...良い音楽は時代に関係なく何でも聴くけど、自分の人生に一番影響を与えたのはヒップホップ。2パックとナズが大好きなの」と話す一方で「チェス・レコーズの音楽、それにフラミンゴスやプラターズのようなグループも好き」と言うように60年代以前の古い音楽にも愛着を示す。制作陣にヴェテランのエイドリアン・ガーヴィッツやR&Bの名匠ラファエル・サディークらを迎え、「家族を作り上げていくような感覚で一緒に曲を作った」という2015年のデビュー・アルバム『チアーズ・トゥ・ザ・フォール』もリード・シングルの「フォーエヴァー・マイン」からフラミンゴスのドゥー・ワップ名曲を引用した古き良き時代の雰囲気。それはビリー・ホリデイやニーナ・シモン、エタ・ジェイムスを思わせると話題になった。

「(地元の)南カルフォルニアには、とても大きいロカビリーのカルチャーがあって、よく父や学校の仲間とクラシック・カーのショーを見に行ってたんだけど、そこにビリー・ホリデイやレナ・ホーンみたいなピンナップ・スタイルの女性がいて、ここから40~50年代、60年代初期あたりのスタイルを取り入れるようになったの」

「フォーエヴァー・マイン」はスパイク・リーが手掛けたミュージック・ヴィデオもそうした雰囲気で、現代で言うなら故エイミー・ワインハウスやアデルを思わせる。そして、アルバムにはビター・スウィートなラヴ・ソングが多い。

「私の経験、感情、そして精神的な成長が込められているわ。昔付き合っていた彼がいて、私は彼に対して誠実ではなかった。その時は彼がどれだけ悲しかったか気づくことが出来なかったんだけど、神様の助けもあって成長して、新たな自分と向き合えるようになった。この経験をもとに、今悩んでいる人の助けになればと思って曲を書いたわ」

第58回グラミー賞では2部門にノミネート。先日は米大統領選に向けた民主党全国大会で「ライズ・アップ」を歌い、彼女いわく「圧倒的な体験をした」と振り返る。

「何より感銘を受けたのは、私のパフォーマンスが〈Mother's Of The Movement〉(※Black Lives Matterの活動に身を置く、被害を受けた黒人の子供を持つ母親たちのグループ)のスピーチでフォローされたことね。実際に彼女たちに会うことも出来た。そして私は彼女たちに今の不正義に対して立ち向かう姿勢への感謝と、実際に起こった悲劇への追悼の言葉を述べたわ。ヒラリー・クリントンと〈Mother's Of The Movement〉のメンバーたちは私が出会った中でも一番強い女性たちと言える。こうした経験が、さらに私の気持ちを深めたの」

最近では映画『ベン・ハー』(リメイク版)のサウンドトラックにも楽曲を提供するなど絶好調のアンドラ。とにかく「すべてを受け止めてサポートしてくれている人たちへの感謝しかない」と彼女は言う。そして今回の初来日公演では、同サントラ提供曲を一緒に書いたデイヴ・ウッド(ギター)を含む4人のバンド・メンバーを従えてステージに立つ。

「ブルーノート東京の公演では情緒的でありながら楽しいステージになると思う。常に新しい経験と音楽創作をして何ものにも縛られないリアルな私たちを見てほしいわ」

 『チアーズ・トゥ・ザ・フォール』

『チアーズ・トゥ・ザ・フォール』

(ワーナーミュージック・ジャパン)

ANDRA DAY
2016 9.19 mon., 9.20 tue.
※詳細はウェブサイトまで

林 剛(はやし・つよし)
1970年生まれ。R&B/ソウルをメインとする音楽ジャーナリスト。各所で執筆。昨年〜今年出したディスクガイド(ディアンジェロを軸にした『新R&B入門』、マイケル・ジャクソンを軸にした『新R&B教室』)も好評発売中。

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