唯一無二の音楽世界を築く、ブイカの魅力 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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唯一無二の音楽世界を築く、ブイカの魅力

唯一無二の音楽世界を築く、ブイカの魅力

圧倒的なパフォーマンスで
独自の世界を築くシンガー、ブイカ

デビュー・アルバム『Buika』(2005)に収録されている曲のタイトルを借りるなら、まさに"New Afro Spanish Generation"。ブイカことコンチャ・ブイカは、新世代ならではの現代的感覚と、国籍やジャンルを跨ぐ越境性が息づいている ミクスチャー音楽で独自のジャンルを切りひらいてきた歌手だ。しかもパット・メセニーからジェイソン・ムラーズに至るまで、共演歴も幅広い。こんな唯一無二の鮮烈な歌姫が、約9年ぶりに来日する。

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interview & text = Toru Watanabe

 喜怒哀楽は、心の襞を生み出す。心の襞が多い人ほど豊かな人生経験を味わっていると言えるだろう。ただし、嬉しいこと、楽しいこと、悲しいこと、辛いこと......これらは別々のことではなく、人は笑い泣きすることもあれば、辛いけれど楽しいという経験をすることもある。そもそも「幸」という漢字は、「辛」を隠し持っているのだから―ブイカの歌を聴くと、こんなことを思う。

 ブイカは、ギニア共和国出身の両親のもと、スペインのマジョルカ島で生まれた。したがって西アフリカとカタルーニャの文化は、彼女の重要なバックグラウンドだ。ただし、マジョルカ島には、昔から異なる文化を持つ色々な民族が住んでいるし、スペイン本土では触れることのできない民謡や舞踏も伝承されている。それだけにブイカの音楽は、アフリカ音楽、フラメンコ、ジャズ、ファンク、アラブ音楽、ヒップホップなどのミクスチャー。そして彼女のヴォーカルは、たくさんの心の襞そのものであり、豊かな人生経験が歌声に刻み込まれていると感じずにいられない。それほどブイカの歌は濃密で陰影を帯びていて、深い情趣を醸し出す。そして祈りのように霊妙でありながら、人間味にあふれている。

「私は子供の頃、母から"自分の文化を愛するようにあらゆる文化や音楽、そして伝統を愛しなさい"と教えられました。また、私は貧困な家庭に生まれ、人々に忘れ去られたような地域で育ちました。私は、そうした自分の過去を決して忘れません。母は、私の人生で何か大きなことが起こるたびに私が人間らしい生活をするための手段を整えてくれました。私は、そんな母、そして夢を達成するために努力しているすべての人々のために祈ります」

 ブイカは、ニーナ・シモンを引き合いに出されることが多い。また、ブイカは『La Noche Más Larga』(2013)では、ニーナも録音しているビリー・ホリデイの「ドント・エクスプレイン」と、アビー・リンカーンの「スルー・イット・アウェイ」を歌っている。これらのアフリカン・アメリカンのジャズ歌手には、どの程度影響を受けているのだろう。

ステージはフラメンコをベースにジャズ、アフロ、ソウルの要素を取り入れ、感情豊かに歌う姿と圧倒的な歌声でオーディエンスを魅了する。

「音楽というものは、人生で経験した数々の貴重な体験や瞬間などを経て、私の中で存在しています。彼女たちは、私の記憶の中における素晴らしい存在であり、時に私たちが何者かであるかということを思い出させてくれます。言い換えるなら、彼女たちの魅力的で魔法のような歌声は、私たちが誰に愛されているかということを思い出させてくれます」

 ブイカが日本でライヴを行なうのは、2007年以来のこと。だが、この間に映画の中で、彼女に出会ったという方々もいるだろう。劇中でカエターノ・ヴェローゾに歌わせるなど、音楽に並々ならぬこだわりを持つスペインの映画監督ペドロ・アルモドバル。彼の『私が、生きる肌』(2011)には、真っ赤なドレスに身を包んだブイカが結婚パーティで歌うシーンが収められている。

 

最新作では天才シンガー・ソングライターのジェイソン・ムラーズと共演(上)、また、アントニオ・バンデラス主演の映画『私が、生きる肌』では、作品中の要所で自らシンガーとして登場し存在感を示すなど多方面で活躍する。

『私が、生きる肌』ブルーレイ&DVD発売中(発売・販売元:松竹)
©El Deseo D.A., S.L.U. All Rights Reserved.



「世界的に有名で、しかももっとも名誉ある映画監督の一人であるアルモドバルの映画に自分が出演したことは、正直なところ、未だに信じられません。映画に関わることは自分の夢でしたが、それを差し引いても、私にとってあの映画への出演は、他の出来事とは比べものにならないほどの素晴らしい経験であり、挑戦でした。前回来日した際に日本で感じたことを言葉にするのはとても難しいのですが、あえて言うならば、日本に滞在していた間、私の心はとても穏やかで、幸せでした。そして、この地を去りたくないと感じました」

 今回ブイカは、ブルーノート東京での単独公演に加えて、すみだトリフォニーホールで新日本フィルハーモニー交響楽団と共演する。音楽のジャンルや肌の色も異なるが、レハール作曲のオペレッタ『ジュディエッタ』の主人公のイメージをブイカに重ねたくなる。なぜならジュディエッタは、北アフリカのナイト・クラブでエキゾチックなメロディーを情熱的に歌い上げるのだから。

「オーケストラとの共演は、ここ何年の間にトルコ、ブルガリア、ギリシャ、スペインなど世界各国で行なってきました。ただ、毎回初めてのことのように感じます。オーケストラの不思議なところは、どれも違っていて、しかもそれぞれ素晴らしいということ。『ジュディエッタ』のことは知りませんでしたが、とても興味が沸いたので、今度観てみますね」

 TAK MATSUMOTO_DISC

[PROFILE] BUIKA(ブイカ)
1972年、スペイン・マジョルカ島生まれ。フラメンコをベースにジャズ、アフロ、ソウルの要素を取り入れた独自のサウンドは世界中で高く評価され、『El Ultimo Trago』でラテン・グラミー賞を獲得、『La Noche Más Larga』ではグラミー賞にもノミネートされた。日本で単独公演を行うのは初めて。

『Vivir Sin Miedo』(Warner Music Spain)

渡辺 亨(わたなべ・とおる)
音楽評論家。紙媒体やWeb媒体などに寄稿。NHK-FM『世界の快適音楽セレクション』の選曲を担当、およびレギュラー出演。単著に『音楽の架け橋 快適音楽ディスクガイド』。プリファブ・スプラウトについての書き下ろし本を、3月にDU BOOKSから上梓。

Live Information
壮大なオーケストラとの共演が
ここ日本で実現するホール公演。
そして、至近距離でその世界観を
堪能できるクラブ公演。

【新日本フィルハーモニー交響楽団と共演、すみだトリフォニーホール】
BUIKA Symphonic Special Night
ブイカ "シンフォニック・スペシャル・ナイト"
2017 3.7 tue. すみだトリフォニーホール
Open6:30pm Start7:00pm
料金:S席¥6,000 A席¥5,000(税込、全席指定)

>>すみだトリフォニーホール公演詳細ページ

トリフォニーホールチケットセンター TEL:03-5608-1212
ブルーノート東京オンラインストア http://www.bluenote.co.jp/
※Jam Session会員は10%割引
新日本フィル・チケットボックス TEL:03-5610-3815

ぴあ、e+、ローソンチケット、東京文化会館チケットサービスにてチケット好評発売中!
新日本フィルハーモニー交響楽団

【ブイカの息遣い、本場のフラメンコの情景を、ブルーノート東京で】
2017 3.4 sat. ブルーノート東京 公演情報はこちら

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