全てが最新、ラウル・ミドンに期待が高まる!
新譜、最新ユニット...
ラウル・ミドンの今がここに!
スティーヴィー・ワンダー、ホセ・フェリシアーノをも彷彿とさせる現代の盲目のソウル・レジェンド...新作を引っさげ、しかも初めて自己のバンドを率いての待望の再来日...!!!いやがおうにも期待は高まります!
text = Masao Tsubaki
もう幾度かの来日を果たし、ブルーノート東京のファンの皆様にもすっかりお馴染みのラウル・ミドン。これまでの来日は他アーティストとのコラボ・客演を除き全てソロでの弾き語りによるもので、勿論、それはそれで現代のワン・マン・バンドよろしく、ボンゴやギターのボディー叩きながらのグルーヴィーな演奏で、毎回必ず聴衆をリズムの渦に巻き込むという大変素晴しいものであったのだが、今回はなんと初めてバンドを連れてくるという。
バンドといっても、ミドンを含め3ピース、ドラム・ベースが付いたトリオ編成の最小のものなのだが、それでもその意味はソロと大きく違う。ヴァーサタイルなミュージシャンであるミドンは、いつもリズムを自分で受け持ちながら、その上に唄やマウス・トランペットでの素晴しいソロを展開し、結果彼のライヴは語り継がれる程に毎回大きな一体感を生み出している。ただし、それはあくまで自分で伴奏を付けられる範囲でという制約が彼にはいつもついて廻ってのことだったのだ...。今回はドラム、ベースが加わることにより、その分自由に飛び廻るだろう彼の姿が見れるのだ...これは楽しみというしか他にない!2月上旬には、トリオでのリハーサルを開始した...というニュースも彼のFBページより伝えられている。
今回バンドでの来日になったのは、3月10日発売『バッド・アス・アンド・ブラインド』での新境地、ニュー・ソウル的ファンキーさを再現するという狙いがあってのことだろうと思う。
現代の音楽が失いつつあるものをオレはすべて持ってるぜ...と自信に満ちたステートメントになっている新作タイトル曲には、彼の幅広い音楽性を示すかのごときスパニッシュ調の変拍子のブリッジあり、さらにラッパーをディスるファンキーなラップもあってこれは是非バンドで再現していただきたいところである。
他にも新作から是非バンドで聴かせて貰いたいと思うのは、本作で目玉になっているスティーブ・ミラー・バンドの「フライ・ライク・ア・イーグル」のカバーである。スペイシーなファンキー・ロックの名作の原曲にある程度従いながら、テンポを落としグルーヴ感をより強調したミドン・ヴァーションのバンドでの演奏は、ステージでも目玉になること間違いないと思う。
そしてさらに楽しみなのは、なんと今回彼はエレキ・ギターを弾く様だ!作品を重ねるごとに少しずつ露出が大きくなり自分のものにしている感のある彼のエレキ、新作でも見事なソロを随所で聴かせているが、FBに上がったリハーサル動画でもグルーヴィーなロック・チューン「レッド・ブラック&イエロー」で見事なソロを聴かせている...間違いなく「新たなミドン伝説」を産むであろう本公演、是非お見逃しのないように!!!
『バッド・アス・アンド・ブラインド』
(キングインターナショナル)
※2017 3.10 発売予定
- 椿 正雄(つばき・まさお)
- 82年より下北沢で中古レコード店、フラッシュ・ディスク・ランチを営む傍ら、レコードコレクターズ誌で連載『ブラック・ミュージック裏街道』やソウル/ジャズ系来日アーテスとのインタビュー記事なども執筆。