来たるチックとの共演を語る〜スティーヴ・ガッド、インタビュー | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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来たるチックとの共演を語る〜スティーヴ・ガッド、インタビュー

来たるチックとの共演を語る〜スティーヴ・ガッド、インタビュー

チック・コリアとの公演を控えたスティーヴ・ガッド
来たるコリア・ガッド・バンド公演に向けて
期待高まる答えを聞くことができた

 1970年代以降のジャズ/フュージョン界を牽引してきたチック・コリアとスティーヴ・ガッドが、スリー・カルテッツ以来久しぶりに手を組んでアルバムを制作。8月にはブルーノート東京で公演を行う。今回は、ジョン・トロペイ・バンドや桑原あいとの共演で来日中のスティーヴに話を聞いた。

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photography = Hiroyuki Matsukage, interview & text = Akira Sakamoto

 スティーヴはマンハッタン音楽院の学生だった1964、5年頃、ルームメイトの紹介でチックと出会う。それから1、2年後、チックがチャック・マンジョーネと共にアート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズを離れ、ロチェスターで週6日のギグにスティーヴを誘ったのが、ふたりの本格的な共演の始まりだった。その後チックはマイルス・デイヴィスのバンドでの活動を経てリターン・トゥ・フォーエヴァーを結成。スティーヴは初期のメンバーでもあった。スティーヴは諸事情によりバンド活動を続けられなかったが、『The Leprechaun』や『The Mad Hatter』、『Friends』、『Three Quartets』といった、1970年代半ばから80年代初頭にかけてのチックのソロ・プロジェクトに参加した。

 「僕らはとにかく一緒に音楽をやる機会があればいつでも大歓迎という気持ちは持ち続けていたんだ。でも、チックも僕もそれぞれにいろんなプロジェクトを抱えていて、じっくりと一緒に何かをやる機会がなかなか持てなかった。それで、ようやく2、3年前に具体的な話になって、僕がフロリダへ飛んで、チックとふたりで試しに2、3曲レコーディングしてみたんだ。そのレコーディングがとても楽しくて、プロジェクトとして一緒にやろうという話になったわけ。カリートス・デル・プエルトやルイシート・キンテーロは、僕が以前に一緒にやったことがあったからすぐに決まった。チックと僕と彼らが組めば、自分たちの好きな方向に行くだろうと思ったしね。

リオーネル・ルエケを入れるのはチックのアイディアで、僕は彼のことを知らなかったけれど、ハービー(・ハンコック)に推薦してもらったのかもしれない。チックとハービーは仲良しだからね。スティーヴ・ウィルソンは、チックがオリジンで長年一緒にやっていたし、僕もチックがニューヨークのブルーノートで過去のいろいろなプロジェクトを振り返る2か月間の特別公演をやった時、『Leprechaun』などの曲を一緒に演奏して、『コイツはできる!』と思っていた。だから、このメンバーでやるのが楽しみなんだ」

 スティーヴは幅広いスタイルの音楽に対応できるセッション・ドラマーというだけではなく、曲の本質を素早く把握する能力にも長けている。これについては、彼と長年にわたってリズム隊を組んできたアンソニー・ジャクソンも絶賛しているほどである。上に挙げた過去のプロジェクトでは、スティーヴは"チックの音楽"に貢献するドラマーとして機能しているが、今回のコリア・ガッド・バンドの面白さは、スティーヴ自身の音楽性が以前よりも強くチックの音楽に影響している点にある。

6月、ジョン・トロペイ・バンドで来日したスティーヴ・ガッド。人気公演の最中、快く取材に応じてくれた。

 「何年か前に始めたスティーヴ・ガッド・バンドは、他の人たちのサポートとして仕事をするだけじゃなく、そろそろまた自分のやりたい音楽をやろうと思って始めたプロジェクトだった。もっと創造的なことをやるためにね。チックとのバンドもその延長なんだ。僕はグルーヴをとても大事にしていて、音楽はテンポが遅くてもグルーヴすると思っている。だからチックにも、ゆっくりと演奏するような影響を与えたいんだ。彼がいちばん最初から今までにレコーディングしてきた音楽は全て、もっとリラックスした演奏にすればこれまでとは全く違う側面が見えてきて、美しい音楽になると思っているからね」

 本稿執筆時点で、コリア・ガッド・バンドの動向が垣間見れるのは、YouTubeに投稿されたふたりのコメントを含む短いプロモーション動画だけである。しかし、そこで流れている曲の断片は、"速めのテンポで緊張感が心地良い"という、これまでのチックのものとは違った雰囲気を帯びている。スティーヴの言葉通り、チックのバンドの音楽としてはテンポが遅めで、その美しい内容をじっくりと味わえるものになっているのである。

 半世紀近くにわたって自身のプロジェクトを追求してきたチック・コリアと、ジョー・サンプルやジェイムズ・テイラー、エリック・クラプトンなど、チックとは全く違う世界の音楽においても長年にわたって重要な役割を担ってきたスティーヴが、それぞれの豊富な経験を分かち合うプロジェクトとなるコリア・ガッド・バンドへの期待は、高まるばかりである。

★James Taylor - North Sea Jazz 2009 - Country Road & Whiskey Before Breakfast
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坂本 信(さかもと・あきら)
札幌市出身。レコード会社や音楽出版社、楽器メーカーのための翻訳、数百人のアーティストのインタヴュー、通訳を務める。ベーシストとしても活動し、高崎晃やマイク・オーランド、伊藤たけし、仙波清彦などと共演。

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