ミンガス・ビッグ・バンドが5年ぶりに登場 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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ミンガス・ビッグ・バンドが5年ぶりに登場

ミンガス・ビッグ・バンドが5年ぶりに登場

チャールズ・ミンガスの精神を受け継ぐ
精鋭ビッグバンドが5年ぶりに登場

チャーリー・パーカーとの共演でも知られるモダンジャズの開祖の一人、狂気と官能、聖と俗、そして深いブルースを漂わせるベースの巨人、チャールズ・ミンガス。その精神を受け継ぎ、ベテランから注目の若手まで強力なソリスト達によって作られる、粗削りなアンサンブルの魅力のビッグバンドの魅力に迫る。

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text = Toshio Miki, Kazunori Harada[disk]



 ビッグバンドといえばジャズの中でも最も手垢のついた古臭いスタイル、という認識だったものが最近は随分見直されているようだ。それもカウント・ベイシーのようなトラディショナルなものからマリア・シュナイダーに代表されるコンテンポラリーなものまで実に多種多様。

 ジャズは個人技からアンサンブルの魅力へと再びその注目がシフトしているようにも思える。 中でもそのどちらにも属する、あるいは属さない独特の様式を持っているのがミンガス・ビッグバンド。

 ミンガスといえば、猟銃をぶっ放したりメンバーを殴って訴えられたりと、ちょっと「ヤバイ人」のイメージがあり音楽にもそういった狂気を少なからずはらんでいる。しかし同時に夢のような美しさ、そしてメランコリックなブルースを深く漂わせているのが彼の魅力。

 その精神を受け継ぐミンガス・ビッグ・バンドの特徴としては緻密な音作りをあえてしないラフで粗削りなサウンドだ。

 かなり前にリーダーを務めていたアルトサックスのスティーブ・スレイグルがこのバンドの譜面を持って来て東京のミュージシャンでビッグバンドを組織したことがあった。僕はリハーサル無しの初見演奏がとても不安だったのだが、彼は「俺たちはリハーサルなんかしないよ。ミンガスの音楽は何度もリハーサルして構築する、というものじゃないんだ」と言っていた。

 しかし週一度という頻度でもう何十年と活動しており、いつ観に行ってもクラブは満席。またバンドメンバーも流動的でニューヨーク・ジャズシーンの登竜門的な存在でもある。

 旧ソビエト崩壊直後にニューヨークにやって来たベースのボリス・コズロフとトランペットのアレックス・シピアギンが最初にチャンスを掴んだのもこのミンガス・ビッグ・バンドだ。そして今やその二人がこのバンドの中心的存在となっている。

 アレックスは最初はソロ中心のパートを任されていたが、ある晩リードトランペッターが欠席し、彼が吹くことになった。唇の疲労も頂点に達したステージ最後の曲でダブルハイG#をヒットした時、周りのメンバーが深くうなづいたのが忘れられないと語っていた。

 今回は特にサックスセクションが大幅に刷新され注目の若手が起用されており、2013年のセロニアス・モンク・コンペティション、セミファイナリストのサム・ディランの参加など興味は尽きない。ミンガスの狂気と官能とブルースの詰まったこのビッグバンド・サウンドを身体いっぱいに浴びたい。

 

ミンガスの真骨頂を味わう2枚

1956年録音の『直立猿人』はミンガスの代表作のひとつ。ドラマティックな曲展開、アンサンブルのド真ん中で鳴り響くミンガスの強靭なベースに注目。『ライヴ・イン・トーキョー・アット・ザ・ブルーノート東京』は2005年、当店初出演時に記録された一枚。不滅のミンガス・ナンバーの数々が、当時の若手気鋭によってタイトに蘇る。

三木 俊雄(みき・としお)
サックス奏者、作編曲家。20年以上にわたって率いる「フロントページ・オーケストラ」の"Stop & Go"は2013年度ジャズライフ誌アルバム・オブ・ザ・イヤーに選出。小曽根真No Name Horsesのメンバーとしても活動中。

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